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手前味噌のススメ


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記事:いがらしりえ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
手前味噌というと「自分のことを褒める」という意味に使われることが多いですが、元々は「自分で作った味噌」を表す言葉でした。
 
味噌は、約1300年前から日本人の食生活を支えてきた伝統食であり、日本を代表する発酵食品です。海外でも“Miso”で通じるほどの有名な調味料になりました。
 
日本では米麹を使った米味噌が多いですが、東海地方の豆味噌や、九州地方の麦味噌など地域ごとに特性を持った味噌が作られています。
 
味噌は、味噌汁だけではなく、さまざまな料理の味付けに使われてきました。
 
私が生まれ育った北海道の郷土料理を少し紹介させていただくと、石狩鍋(鮭を使った鍋で、特徴は長ねぎではなく玉ねぎを使う。じゃがいもを入れたり、イクラを散らしたりする場合もある)、ちゃんちゃん焼き(鮭とキャベツや玉ねぎなどの野菜をバターで焼き、味噌だれで味付けしたもの)、味噌ラーメンにも使われています。
 
基本的には、煮た大豆・麹・塩を混ぜ合わせ熟成させるだけで出来上がる味噌は、かつて各家庭で作るのが当たり前で、買うものではありませんでした。
 
私が味噌作りを始めたのは、今から9年前、娘が生まれた年に、食べ物の安全について気にするようになった時「この子が初めて口にする味噌は、自分で作った味噌にしよう」と思った事がきっかけでした。また市販されている味噌が、本来発酵食品であるはずなのに加熱やアルコールで発酵が止められてから出荷されているものが多いということを知ったのも理由でした。
 
発酵が止められていない味噌は麹菌が生きています。生きた味噌は、整腸作用や美肌効果などたくさんの体に嬉しい働きをしてくれます。
 
私のお気に入りは、毎日ポリフェノールが摂取できる“黒豆味噌”です。
 
余談ですが、おまけ的なメリットとして「味噌作りをやっている」と人に話すと、それだけで「料理好きな人」「料理上手な人」というイメージを勝手に持たれることがあります。実は料理が好きでも上手でもないのですが、そのままにしておいています。
 
一度作り始めると楽しくて楽しくて、秋から冬の終わりまで毎週末作っていたら、一時期80kg近い味噌が家にありました。もちろん我が家だけでは食べきれないので、友達や親族に配ること羽目になったけれども、また翌年大量に作る。
 
もう、食べるために作っているというよりは、仕込む過程が趣味になっています。
 
白米味噌、玄米味噌、麦味噌、豆味噌、黒豆味噌など色々材料を変えてたくさんの種類を作り、無農薬、自然栽培など材料の品質にもこだわり、次はどうしようと考えている時間もまた楽しい。「これは美味しかった」と翌年同じレシピで作っても同じ味には仕上がらないところが不思議です。
 
同じ味にならないのは、使う材料が農作物なので、その年ごとに違うこと。そして、熟成保管させる場所の気温や湿度などが毎年違うことが関係しているようです。
 
たとえば、何人か人が集まり、同じ場所、同じ材料で味噌作る。しかし、その後各家庭に持ち帰って保管すると、その家によって気温や湿度、風通しが違うので、生き物である麹菌の働き方が変わる。
 
そしてもう一つ、人の肌にある常在菌。菌と聞くと悪いもの、汚いものというイメージがあるかもしれませんが、常在菌は肌を健康に保つための善玉菌です。
 
これは人によって持っている種類や数が違うので、味噌を仕込む時に手で触れた際、その人の常在菌も一緒に入ります。常在菌と麹菌のコラボによって、半年から一年経つと違った味の味噌になるといいます。
 
そこの家でしか作れない味、その人にしか作れない味、それが「手前味噌」なのです。
 
近年では、味噌作りのワークショップや講習会が開かれているのを見かけるようになりました。また、材料や初心者向けのキットも検索すればたくさん販売されています。一年に一度の手間で、自分だけの我が家だけの味が出来上がり、そして麹菌が生きているので体に良くて安全な味噌が食べられます。
 
仕込んだばかりの時は、肌色のような、カスタードクリームのような色。それが日に日に色が濃くなっていく様子が嬉しくて、どんどん美味しそうな香りがしてくるのを嗅ぐたびに、どんな料理を作ろうかと(料理が好きではない私でも)ワクワクします。
 
流通が発達した現代では、お金さえ払えば、どんなに遠くにある物でも、ほとんどの物が手に入るようになりました。
 
しかし、買った方が早い物、買った方が安い物をあえて作るのも楽しいものです。
 
皆さんが、思い出す故郷のお味噌はどんな味でしょうか?
 
始めてみたらやめられない味噌作り、一度挑戦してみてはいかがでしょうか。
 
きっと自分で作った味噌が一番美味しいですよ。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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