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不惑は過去とバイバイすること


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記事:武田智幸(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
もうすぐ39歳の誕生日がくる。
あと1年で40歳。いわゆる”不惑”と言われる年齢である。
そんな境地に自分が到達できるのかは分からないが、いよいよ自分が中年になっていることを意識せずにはいられない年齢ではある。
 
2020年末、大掃除をしながら、私はあらゆるモノを廃棄することにした。
本、雑誌、書類、服、スニーカー、時計、サーフボード、ゴルフクラブ……。
とにかくまずモノを引っ張り出したのだが、なかなかゴミ袋へ入れられずにいた。
 
「いったいいつになったら片付くの? いい加減にして!」
 
2日目の夜、一向に進まない作業状況を見て、妻が私に向かってこう言った。そして、その晩から、業を煮やした妻が掃除に参加した。
 
「何これ。こんな古いモノいらないでしょ!!」
「いや、残しておきたい」
 
「なんでこんなモノ取っておくの?」
「それはさ、学生の頃の……」
 
そんな風に迷いながら作業している私の意見を聞きながら、妻はあらゆるモノを躊躇なくゴミ袋に入れていった。私にとっては大切と思えるモノは、妻から見れば全く必要のないモノなのである。
 
しかし、なぜこんなにもモノを捨てられないのだろうか。
捨てられない共通点として、そのモノに対する自分の思い入れや、モノを取り巻く思い出があることに気がついた。
 
「これは20代の頃に友人が作ってくれたミックスCDで、当時は仲間でワイワイやってたな」といったことから、「国内で100個限定で配布された限定アイテムなんだよな」といった具合である。モノそのものの価値ではなく、そのモノを通して経験した思い出やエピソードによって、とたんに捨てるという行為ができなくなってしまう。あの時の自分を捨てたくないという感情が前に出てしまうのだ。
 
今の自分が「廃棄しよう」と始めた掃除で、そのモノを使っていないにも関わらず、いざ対峙すると「思い出を残しておきたい」という意識が芽生えてくる。
これは過去の経験・体験が「今」の自分の意思決定行動を邪魔する状態であり、ある種の思考停止状態とも言える。
 
「そうか、過去の思い出に結構縛られているんだな」そんなことに気がついた。
 
さて、不惑=惑わないという捉え方をしている方がほとんどだと思うが、インターネットで”不惑”を検索すると、これは実際には訳語らしく、”惑”という文字は元々は”城壁”という意味のことと書かれていた。つまり、40歳になったら自分の城壁をなくすこと、さらに意訳すれば、自分の中にある固定概念を捨てるという新説が出ているようだった。
 
不惑、40歳。自分の固定概念を捨てよ。
 
これにピンと来た。
 
私は結局、自分の過去の経験と自分の記憶に刻まれた思い出にひどく縛られている。過去にしてきたこんなこと、あんなこと。それを大事に取っておきたい余りに、自分は決断を全て先送りしていた。おそらく仕事や対人関係においても、無意識にこうした感覚が自分に蓄積されているのだと思う。
これって、「俺が若い頃はな…」と、居酒屋で若者に過去の栄光をぼやいている中年イメージそのものではないか。
 
誰にとっても当たり前だが、大切なことは、今、そして未来である。
いつだって今を真剣に取り組み、より良い未来を掴みたい。
しかし、今の自分は過去に過剰に囚われていた。
 
そんなの嫌だ。それから廃棄作業は一気に進んだ。
「これから使うor使わないの二択だけを意識し、どうしても迷うモノだけはスマフォで写真を撮った後にゴム袋へ捨てる」
今回で得た捨てる公式である。この公式を手に入れた翌日には、大きなゴミ8袋を捨てることができた。
 
断捨離という言葉が一般化し、本やネットでも片付けに関するテクニックやTipsはたくさん出ているが、考え方にまで抽象化されている情報は多くないかもしれない。片付けの姿勢として大切なことは「迷って捨てられない状態は、過去の栄光をぼやいているような状態。今すぐやめてしまおう」ということ。もし迷ったら写真を撮っておけばいい。写真を見返せば、いつでもモノに関するエピソードはすぐに蘇る。今となっては過去の思い出はそのくらいで十分かなと思う。これはモノをなかなか捨てられない人へ、本当におすすめしたい思考術だ。過去よりも、今・未来こそ大事にしたいものである。
 
「今日も頑張ろう」
すっきり片付いた部屋で、毎朝こう思うことが増えた。
モノがない状態の部屋はとっても快適で、新しいことを始めたい気持ちが生まれる。難しい仕事も清々しい空間であれば前のめりに取り組む気持ちになってくる。
きっと今後もいろんなモノが増えていくとは思うが、固定概念に囚われず、前向きに今を楽しむ40歳を過ごしていきたいものである。
 
最後に論語で言われる年齢の表現を記しておく。
30歳は而立、40歳は不惑、50歳は知命、60歳は耳順、70歳は従心。
(文中に出てくる不惑の捉え方はあくまで私の解釈です)
 
 
 
 
***
 
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2021-03-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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