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巨大な数で遊ぶイカれた数学者たち


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:村人F(リーディング倶楽部)
 
 
皆さんは、「大きな数を言って」と聞かれたらどう答えるだろうか。
1億、100億、10兆、無量大数。
そんな感じの数字を思い浮かべると思う。
 
しかし、それを数学者たちがやったらどうなるか。
こんなのが出来上がる。
・100↑↑100
・100→100→100
・グラハム数
・ふぃっしゅ数
 
もう書いている僕にもよくわからない文字列がバンバン出てくる。
こういうバカでかい数はそのまんま「巨大数」と言われている。
 
そんな巨大数を漫画にしたのが、今回紹介する「寿司 虚空編」だ。
本書は巨大数について寿司屋がひたすら語りまくる物語である。
大将と弟子と幽霊による、巨大数がウンたらチェーンはどうたらアッカーマン関数ヤベぇみたいな、意味わからない会話がひたすら続くわけだ。
 
内容はもちろん数式だらけだ。
f(n)なんて高校時代に死ぬほど見た奴はもちろん、Ack(n, m)など知らん式も出てくる。
それどころか豆粒以下の文字で書かれた数式だけのページが見開き10ページも続いたりする。
そんなクラクラする文字列がひたすら出まくる漫画なのだ。
 
この漫画の魅力をズバリ言うとイカれていることである。
イカれすぎてどこをピックアップすればいいのかわからないほどだ。
 
寿司屋の大将や弟子などは辛うじて人間の姿をしているが、それ以外は魚とエイリアンを混ぜたようなよくわかんない奴らしか出てこない。
握るネタも魚ではない何かだ。
 
発言も論理的にぶっ飛んでいるし、世の中の常識外にある考えがバンバン出てくる。
とにかく読まなきゃわからないイカれた世界が1冊に詰まっているのである。
 
このイカれた部分はそのまんま巨大数のイカれ具合を表す。
まず巨大な数について考えるという発想がイカれている。
なぜなら無駄だから。
 
この世で1番大きい数字は存在しないなんて証明は小学生でも出来るわけだ。
無限大という「∞」で書ける概念もあるし、どんな巨大な数を言ったとしても1を足せばそれよりデカい数をすぐに作れる。
しかも彼らが言う巨大数はもう天文学的とかいうレベルを通り越しているから使い道が全くない。本当にない。
世の中の全く役に立たない数学議論がひたすら行われているのがこの世界なのである。
 
しかし、こういうイカれた分野だからこそ数学者が本気で遊べるのかもしれない。
 
数学者たちが普段頭を悩ませている質問といえばこれだ。
「数学ってなんの役に立つんですか?」
 
学校から大人になってまで、この質問を受けずに生きてきた数学者はいないだろう。
僕は工学系の知識があるから、「プログラミングは吐くほど数学出てくるよ」とか、「現代暗号は100%数学で出来ているんだよ」みたいなことは言える。
だが、ガチで数学をやってきた人にとってはかなりの難問となっている。
 
なぜならそういう人たちは、そもそも何かの役に立たせるために数学をしていないからだ。
大抵の人は目の前に山があるから登るように、目の前に問題があるから取り組んでいるのだ。
だから役に立つかと聞かれても困るのである。
 
なのに実際の数学界では、大学の研究費を勝ち取るためには無理やり「この問題を解く社会的意義は……」とか「世の中の何に役に立つから研究します」みたいなことを捻り出さなければいけない。
そのため本当にやりたいことを研究するためには、こういう本筋とは関係ないことについて色々考えなければいけないストレスだらけの状況になっているわけだ。
 
しかし巨大数に相対するときは違う。
そもそもこの分野自体に意味のないことがわかりきっているからだ。
だから研究費なんて出ないから、役に立つ理由を考える必要がない。
完全なる趣味として全力を出せる世界なのである。
 
たぶん、この無意味ゆえに趣味として取り組めるところが巨大数の持つ魅力だと思うのである。
大人の世界は数学界も僕たちも社会の中で役に立つことを求められる。
何事も金になるかどうかが最重要になっている。
 
そんな役に立て症候群にすっかり侵された僕たちにとって巨大数はとても美しく見える。
全く世の中の役に立たないのに、数学者が全力で遊びまくったせいで地獄のように難しい数式がアホほど出てくる。
しかもそれらは論理的に組み立てられている。
さらに無限大があるおかげで、永遠に終わることがない遊び場なのである。
そういう意味で巨大数はとても魅力的だ。
 
こうして考えてみると、数学だけじゃなく勉強はそもそも遊びなのかもしれない。
学校教育のせいで勉強はいい大学やら会社に入るためにする仕事みたいな扱いになっているけれど、そもそも新しいことを知るというのは楽しいのだ。
だから数学だけじゃなく、社会や理科、英語でも、ひたすら勉強しまくる人がいるのである。
この漫画が示した巨大数の世界は、そういうことも思い出させてくれた。
 
「寿司 虚空編」は巨大数に魅入られたイカれた数学者たちの遊びをわかりやすく記した漫画である。
「数学が何に役に立つの?」と疑問をお持ちの方は是非読んで欲しい。
役に立つかどうか関係ない。ただただクラッとして面白い世界を本書は見せてくれるはずである。
 
 
 
 
***

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2021-03-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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