「もうだめかも……」と思った自分の人生に勇気をくれる本
＊この記事は、「リーディング・ライティング講座」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事：佐藤謙介（リーディング・ライティング講座）
もし神様が現れて
「ベッドがない個室で、少量の食事、真冬でも薄い服だけで365日、単純労働を続けたら、将来は歴史に名を刻む偉人にしてあげます」
と言われたら、あなたはどれくらい堪えることができるだろうか？
1年？ 3年？ それとも5年間は堪えられるだろうか？
いやもしかしたら実際には1週間も我慢できないかもしれない。
しかし、そんな過酷な状況を27年間も続けた人物がいた。
「ネルソン・マンデラ」
あなたもきっとこの名前を聞いたことがあるだろう。
アパルトヘイト（人種隔離政策）が残る南アフリカで黒人として初めて大統領になった人だ。
彼は、学生の時に留学先のヨハネスブルクで、黒人が奴隷として過酷な状況に置かれている姿を見て、反アバルトヘイト運動に身を投じていった。しかしマンデラは反政府軍組織の首謀者として46歳の時に終身刑を言い渡され投獄されてしまった。
それから27年間もの間、刑務所で過酷な環境で強制労働を強いられていたのだ。
もし本当に神様がいて「この状況を27年間続けたら釈放され、黒人初の大統領、そしてアパルトヘイトを廃止させることができる」と言われていたのであれば、もしかしたら命を懸けてこの苦境に立ち向かうことができたかもしれない。
しかし、当然マンデラにはそんな確約はなく、死ぬまで監獄から出ることができないかもしれないという絶望感を味わっていたはずだ。
それでも決して諦めることなくこの過酷な状況を耐え抜いたのである。
どういう精神力を持っていたらそんなことを成し遂げられるのだろう？
しかも、マンデラは自分をこの過酷な状況に追い込んだ白人に報復するのではなく、むしろともに暮らしていける民主的で自由な社会を作ることに命を懸けた。
その証拠に彼は監獄の中でも白人のことを知るために、彼らが話す言語や歴史、そしてスポーツまで学んでいた。その姿は同じ監獄の囚人だけでなく、白人の看守たちからも尊敬を集めるようになっていた。
そしてこのスポーツというのがラグビーである。
「インビクタス」という映画にもなったので知っている人も多いと思う。それまで南アフリカにおいてラグビーは白人だけが行うことができるスポーツだった。そこに黒人選手も交えてチームを作り、自国開催のワールドカップに挑む実話をもとにしたストーリーだ。
南アフリカは決勝まで勝ち進み、世界最強と言われるニュージーランドの「オールブラックス」に戦いを挑んだ。
決勝戦ではスタジアムに国民が集まり、黒人も白人もなくともに母国を応援する姿があった。そして激闘のすえ南アフリカは優勝を手にしたのである。まさにマンデラの夢がかなった瞬間であり、感動的な場面として描かれていた。
いまこうして思い出すだけでも目頭が熱くなるシーンだ。
マンデラの人生を語るだけでも、その生きざまから勇気をもらうことができるが、実は今回紹介する「人生！ 逆転図鑑」には、逆境を跳ねのけて偉大な功績を遺した32人の逆転人生が紹介されている。
この本には普通だったら諦めてしまう過酷な状況を乗り越え、その後時代を変えるような成果を残した偉人たちのエピソードが紹介されている。
日露戦争の時に渡英し、戦費を獲得し、日本の勝利に大きく貢献した「高橋是清」は内閣総理大臣、大蔵大臣を歴任し、日本経済に多大な貢献をした人物である。
この経歴だけ見れば、若かりし頃からさぞや将来を嘱望された人物だったのだろうと思うかもしれないが、実は是清には「奴隷」としての過去があった。
英語を学ぶためにアメリカに留学した際に、ホームステイ先で騙され「奴隷」として売られてしまい、過酷な労働と粗末どころか家畜並みの食事しか与えられない状況に置かれてしまった。しかし、その奴隷労働に耐えながら必死で覚えた英語で交渉し、何とか日本に帰国することができたのだ。その時の交渉力がのちに日本を何度も救うことになるのだが、当時の是清がそんなことを知るはずがない。
思い出していただきたい。
マンデラにしても、高橋是清にしても、この過酷な状況に耐えれば、将来歴史に名を刻む偉大な政治家になれるなんてことは、微塵も確約されていない中で、これだけの逆境をはねのけているのだ。
他にもウォルトディズニーは2度も会社を倒産させ、さらにようやく軌道に乗り始めたアニメ制作会社からアニメーターを全員引き抜かれたにも関わらず、そこから「ミッキーマウス」を作り出し、世界中の子供たちに夢を与えるエンターテイメント産業を作り出した。
そしてカーネルサンダースは、40以上の仕事を転々とし、2度の会社倒産を経験した後に、65歳からケンタッキーフライドチキンのライセンス販売を始め、世界中に一大フランチャイズを築き上げた。
この「人生！ 逆転図鑑」の副題には「山あり谷ありの32人に学ぶ成功の法則」と書いてある。
私たちは歴史上の偉人を見るときに、成し遂げた成果にばかりフォースしがちだ。例え彼らが不遇な時代があったとしても、その年月はあっという間に過ぎたかのような錯覚に陥ってしまう。
しかし実際に想像してほしいのだが、自分の人生の数十年が不遇な状態であるときに、どんな精神状態であれば、その状況に光明を見出せるのだろうか？
この本には32人の逆転人生が紹介されている。
ぜひ彼らの人生に触れ、あなたも自分の将来に対して、生きるエネルギーを感じていただきたい。
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