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「何がわからないかわからない」をわかるにする方法


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:すずりす(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
職場の同じチームに中途採用で新しく入社してきた人がいる。
 
コロナ禍において、在宅ワークを推奨している会社の方針から、私の所属するチームは原則全員在宅ワークで業務を行っている。そのためこの新入社員も在宅ワークを余儀なくされ、入社1日目から会社に出社することなくパソコン画面を通して「入社」した。
 
パソコン画面を通しての入社はなかなか大変だ。
メールや電話を中心とする文字と声に頼るコミュニケーションが主になる。一緒に仕事をする人たちとの物理的な顔合わせもできないままに、仕事をしなくてはいけない。会社に出社して、同じ場所を共有しながら同僚らと仕事をしていれば何気なく見聞きするような情報は、在宅ワークではなかなかキャッチしにくい。
 
この新入社員(Aさんとしよう)は、同業他社で経験を積んだ後転職した方だったので、業界の雰囲気をわかっていることはアドバンテージだ。ところが、今後携わることになる業務は、これまでの会社でも経験したことがない分野であり、業務は未経験だ。在宅ワークに加えて未経験の業務、かなり大変だろうなと思う。
 
かく言う私も実は一年ほど前に在宅でパソコン画面を通して「入社」した。
入社以来、会社に物理的に出社はしていないので、Aさんの立場に共感をしてしまう。幸いにも私は同業他社で同種の業務に関わったことがあったため、業務が未経験という部分のチャレンジングな部分がAさんよりは一つ少なかった。それでも、もともと社員は会社に出社して仕事をするというスタイルが日々の常識だった会社なだけに、入社当時は在宅ワークが見切り発車的に行われていた最中で、様々なことが整っておらず苦労も多かった。
 
Aさんは一日でも早く追いつけるように、会社のことや業務のことを絶賛勉強中だ。そのために同僚らからの情報共有を兼ねた研修を日々こなしていて、その研修の調整を私は手伝っている。自分自身が在宅入社で苦労したことを、他の方に少しでも役立ててもらいたいと思い、何かできるなら手伝いたいという気持ちがあった。研修は、チーム内の各担当者が内容を決めて、Aさんに対して業務への理解を深めてもらうことを目的に、いろんな情報共有がなされる。内容の濃いものばかりだ。
 
Aさんと個別に雑談をしていたとき、Aさんはポロっとこんなことを言っていた。
「この業務は未経験だから、右も左もわからなくて正直どうしていいか困ってるんですよね。昨日も夜遅くまでいろいろと読んでました」
 
午後2時。
近所で工事をやっているらしく、最近仕事中に窓を閉めていても結構大きな機械音が聞こえる。なんとなくその音が気になって集中できないので、BGMに集中できそうなクラシックでも流してみるか。
仕事に集中できるように、聴き込んでしまわないピアノのクラシックを流す。
 
ギターを普段弾くけれど、ピアノに触れたことがない人がいるとしよう。この人に対して、ピアノの経験のある人が、その人目線でカンタンだと思う曲を選び、その曲の楽譜をもってきて、「この曲簡単だから、楽譜見ながらピアノを弾いてみて」と言ったとしよう。
果たして弾けるだろうか?
ギターを弾く人ならば、音楽に精通している人だろうし、楽譜も読めると考えられそうだ。だけど、ピアノを全く触ったことがない人が、ドの音はどこの鍵盤なのかとか、指をどこに置いたらいいのかと言ったことを知らなければ、いくらカンタンな曲だとしても弾けないのではないか?
 
つまりそれはこうとも言える。たとえ同業他社から転職してきた人で、業界の雰囲気を理解していたとしても、今までに携わったことのない業務を行うことになる人には、「業務のいろは」から説明をする機会を設けないといけないのではないか。
 
この一連のAさんへの研修と重なるところがあると感じた。
 
Aさんに対して研修を通じて共有される情報は内容が濃く、どれも役立つし実践的だなと一緒に研修の内容を聞いていて私は思った。ある程度この業務の経験を積んでいる私が聞いたら「なるほど」と納得するような内容は、前提となる「業務のいろは」を理解しているからこそ納得できるのだろう。だが、残念ながらこの一連の研修では、その前提の情報を提供している人が誰もいないのではないかと気づいた。
差し出がましいかもしれないとは思ったものの、私はAさんに、その前提となる情報を日々のやり取りの中で提供するようにし始めた。するとAさんからは今のところ、今までの話の中で見えてこなかったことが見えるようになった、などとフィードバックをいただいているので、しばらく続けてみようと思う。
 
ピアノを触ったことのない人には、まずピアノの弾き方から教えないと始まらない。
それと同じように、右も左もわからないような状況に陥っている場合、「何がわからないのかがわからない」のだ。本人が「何がわからないのかがわからない」時には、もう少し状況を理解している人が、その「わかっていないもの」が何なのかを教えてあげるということが、理解度のスピードを上げることにつながるのだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-03-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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