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海外留学は親子のメントレ


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記事:安藤知晴(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
数年前のことだ。
 
息子「母さん、来週から行くパリの学校の校長先生から電話」
 
私「え? なに? 直接、私に?」
 
私「はい、変わりました。安藤です。」
 
校長「あのですね。心配して電話を差し上げました。あと1週間で息子さん、こちらに来
 
られるんですよね? なのに、住む場所が決まっていないって、大丈夫ですか?
 
何やってるんですか!」
 
私は、一瞬、耳を疑った。
 
え? だって、東京のエージェントとやり取りして、話、進んでいるって聞いてるのに。
 
なんで? ドキドキしながら、なんとか自分を取り戻し、電話を切った。
 
すかさず、エージェントに確認する。
 
と、どうやらフランスのアパルトマンとの話が、行き違っていたようで契約できていない
 
とのことだった。
 
読者の皆さんなら、こんな時どうするだろうか?
 
私「でも、あと1週間で息子はパリに留学に立つんですよ。と、とにかく少々高くても良
 
いので、学校から通える安全な場所に部屋を確保してください!」
 
当時19歳の息子は、デザインを学ぶため、年明けからパリの学校への留学を決め、半年前から私も仕事の合間をぬって一緒に準備してきた。海外留学でも特にフランスは、ビザを取るのも難しく、留学準備を手伝ってくれるエージェントの数も英語圏よりは格段に少ないのが実情だ。そして、何よりビザの入国日は絶対だ。費用を少しでも抑えるため、飛行機便も半年前から予約し、変更の効かないものになっていた。
 
なんで、今更? どうしてこうなるの?
 
一瞬、泣きたい気持ちになったが、とにかく何がなんでも何とかするしかない。じゃなきゃ、
 
数百万近い授業料までパアになる可能性もある。借金までして払った授業料だった。
 
と、2日後、エージェントから連絡がきた。パリの郊外に良い部屋が見つかったという。写真を見ると、なかなか良い感じだ。家賃は少々お高いが、そんなことは言っていられない。
 
「そこでお願いします」息子とも相談し、エージェントにそう返事をした。
 
SNSが発達している時代の留学でよかったと、胸を撫で下ろした。全てが紙の時代なら、絶対に間に合うことはなかっただろう。契約書は、もちろん全てフランス語だ。その数、およそ数十ページ。まるで分厚い本のようだった。日本とは全く違う。息子も1年前から勉強しているが、流石に契約書を全て翻訳できる力はない。エージェントに見本をお願いした。
 
が、ここでまた問題が発覚。契約書に記入して、フランスへ郵送していると、本人が先に着いてしまい、間に合わなくなる可能性があるというのだ。そのため、記入した原本を本人が持っていき、あちらに着いたらすぐにパリの郵便局で出す方が良いということだ。
 
また、ハードル高そう……。
 
と一瞬思ったが、そこは息子の問題だ、と腹をくくりそうすることにした。
 
到着した当日と翌日だけは、念の為、ホテルを予約。後は、なんとかするんだよと伝え
 
見送った。1年以上の長期留学になる。大丈夫! あなたなら必ず出来る! と信じて。
 
日本の教育には、1ミリも合わなかった息子だった。だから、高校からカナダへ留学したり、世界に触れる機会があれば、どんどん送り出した。なので、英語は困ることなくできた。
 
後から聞いた話だが、郊外は別としてパリの中は英語が通じるらしい。空港はもちろん、ホテルでも。
 
けれど契約したアパルトマンの担当者は、フランス語のみで英語は全くできなかったという。
 
私「え? で、どうやって話しできたの?」
 
息子「それがさ、そのアパルトマンに住んでるスペイン人の子がね、通訳してくれた。その子と結構仲良くなってさ、色々教えてもらったよ。で、ホテルもね、結局、アパルトマンに入れるまで3日かかったから、1日だけ別のホテルで予約して泊まったから。カードで落ちるからよろしくお願いします。僕、英語が話せて命拾いしたよ。英語できんかったら、マジやばかったわ。母さん、色々ありがとう」
 
初めての一人暮らしがパリという、なんとも超ユニークな息子らしいが、敢えて自分でそのチャレンジを決めたことが誇らしかった。
 
日本から海外へ留学する子の中には、折れて帰ってくる子も多いという。文化の違い、言葉の壁、システムの違い、など要因はたくさんある。
 
サポートする親にとっても、まるでそれはジェットコースターに乗っているかのような感覚だった。本人は、言葉もままならないうちから、生活必需品を買い物するところからのスタート。生きるために、全ての知恵を総動員していた。
 
そんな甲斐もあってか、難しいと言われるフランス語を4ケ月でマスター。デザインの本科に入学し、日本に戻った現在はファッションデザイナーとして独立する、というこれまた
 
ハードルの高いチャレンジを始めたばかりだ。
 
海外留学は親子のメントレ。私も少しは逞しくなったかな。
 
無理難題こそ、成長のチャンス! 冒険は、人を何倍も、いえ何十倍も逞しくさせる。
 
 
 
 
***
 
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2021-03-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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