メディアグランプリ

地方移住することは、自分の人生を整えるということ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:中谷翔(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「おにぎり、キレイな三角形にできるんやね、すごいね」
 
僕は今でもはっきりと覚えている。おにぎりを握るという誰にでもできるようなことをお世辞ではなく褒めてくれた福井のおばあちゃんの笑顔を。
 
京都に生まれ育ち、大学を卒業するまでは親元から離れたことがないとある僕が、社会人の一歩目を踏み出したのは大都会東京のど真ん中。大企業に勤め、家を出るのは朝7時、帰ってくるのは日付が変わってからという毎日を過ごしていた。当時、通勤で通っていた道のりでは1日何千人という人とすれ違っていたが、誰一人として挨拶を交わさない。会社に入ると、そこからは上司や先輩の怒鳴り声が聞こえる。電話を取ればお客様からのクレームを受ける。都会だから人はたくさんいるが「人間味のある人」に出会うことはほとんどなかった。
 
社会人2年目となり、仕事には慣れ、職場で怒られることも少なくなった。だから、このまま仕事を続けることもできる。その頃になると、同僚とのランチ会話では「この人間味のない大都会で、惰性で暮らしていっていいのだろうか」と言うことが多くなった。
 
このように考えているとき、多くの人は「変わらない生き方」をするのであろう。これは変化したくない人間の奉納としては当然の選択である。しかし、僕が選んだのは、自分の人生を見つめ直し、次の場所に進むという挑戦だった。
 
次の場所に進むと決めたとき、最初に考えたのは「どんな暮らしを送りたいか」ということ。それまでは自分がどんな暮らしをおくりたいかなんて考えたこともなかったから、最初はなにも決まらなかった。しかし、自分の人生を振り返ってみると、自然の中で過ごしているときが一番心地よかったのを思い出した。
 
「そうだ、地方移住をしよう」
 
唐突だけども、僕の中では一番しっくりする答えが出たのだ。
 
それからの行動は早く数カ月後には福井のとある地方に移住していた。
 
移住した頃は、自分に自信がなかった。それまでの会社では上司や先輩に怒られることはあっても、褒められることはない。だから、「自分はできないやつだ」と何度も感じさせられ、自信をなくしていたのである。
 
そんな僕にとって、最初の衝撃だったのが、冒頭のシーンである。近所のおばあちゃんの家に遊びに行ったときに、なぜか一緒にご飯を作ることになり、おにぎりを握った。誰にでもできるような整っていない不格好な三角形。それでも褒めてくれたのが地方のおばあちゃんである。
 
そんな日々を過ごす中で、僕は自信を持てるようになってきた。僕にとっては当たり前にできることをしていても、周りの人たちは褒めてくれる。スマホのメール、写真の撮り方、それを教えただけでも感謝される。逆におばあちゃんには山菜の食べ方を教えてもらう。ここでは、お互いにできることを交換して助け合う暮らしを送ることができた。
 
よく「地方の暮らしは不便だ」と言われるけども、僕はそうは思わない。なぜなら、地方の暮らしでは、生きるのに必要なものだけがしっかりと残っている。確かに都会には、どんなものでもある。だからこそ、それが本当に必要かどうかを考えることが少なかった。上司や同僚との愚痴しか出てこない飲み会や生きるためにはそんなに必要としないブランド品の誘惑。今、思えば生きていくのに全く必要ないのだが、都会で生きる僕には必要だったのだ。そう思うと、地方移住したことで、生きていくのに必要じゃなかったモノや人間関係が削ぎ落とされ、本当に必要なモノや離れていても会いたくなるような人間関係だけが残り、人生が整えられたような気持ちになった。
 
そして、なによりも大きかったのは、自分自身の理想とする暮らしに必要なものはなにかと考えられたことが大きい。現代社会は、情報がすぐに共有され、誰でも手に入れることが容易い。そうなった結果、自分と他人を比べてしまい、どれほど頑張っても自分が満足する暮らしを達成することができない。なぜなら、上には上がいて、いつまで経っても追いつくことができないからだ。そんな現代を生きる僕たちが幸せに暮らすために必要なのは、自分にとっての暮らしのゴールを考えることだと思う。そして、そのゴールに向かって自らの足で進んでいく力である。
 
だからこそ、惰性で生きるのではなく地方移住という道を選ぶということは、自らのほしい暮らしを考えていくことであり、自分に必要なものだけを残す、整えるということなのである。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2021-03-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事