メディアグランプリ

私の失敗なんて、誰も覚えてないし、失敗を恐れずやるしかないと誓った日


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山本 愛子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「愛子さー、やる気あんの?」
社長は、仕事が進んでいない私に怒っていた。
「愛子は、どうしたのよ。ずっと止まっていても仕方ないでしょ。自分から営業しないと!」
イライラしながら、言葉が発せられる。
「私は、もう何がわからないのかも、わからないです」と言った。だって、それが本音だから。
 
私は、事務職から24歳の時に、営業職をスタートさせた。事務職から営業職の転換は、社長からの提案だった。私は、営業職に就けたことがうれしかった。自分と同じ年齢の友達を見れば、みんなスーツを着て仕事をがんばっていた。私はスーツ姿に憧れていた。
 
私の業界は、人材業界。当時は、24歳から35歳のメンバーで、社員数は、社長を入れて、8人。事務職1名、あとの7人は全員が営業職として仕事をしていた。社長は前任者から、事業を引き継ぎ、会社を大きく成長させたいと思っていたところだった。
 
大学で部活をやっている体育会学生に、就職支援をしていた。今は、人材業界にいないのでわからないのだが、当時の体育会学生は、学生時代最後の大会と就職活動のタイミングが被ってしまい、一般の選考スケジュールでは面接を受けられない体育会学生がいた。私たちの会社は、一般の学生とは違う、体育会学生と企業の双方が出会う場を、就職セミナー、就職雑誌、ウェブサイトで提供していた。
 
学校も企業も全国にある。
営業の内容は、大学の就職課を通して、すべての競技を取りまとめる「体育会」という場所に行き、競技別の大会のスケジュールを確認する。希望があれば就職活動に関する説明会なども行った。
新卒採用をしている企業には、セミナーやウェブサイトへの案内を行っていた。
 
私は、営業職が未経験だったので、最初は、上司に仕事のやり方を教わっていた。
名刺の渡し方、資料の印刷の仕方、ホッチキスの止める場所、就職課への挨拶の仕方。お客様それぞれに話す内容の違いなどを教えてもらった。
 
会社のみんなは、いい大学を出て仕事ができた。私と年齢が同じで1年先に入社した同僚は、東京大学でボート部の出身。その他のメンバーも、小さい頃からスポーツをして偏差値の高い大学で部活を経験していた。日本代表に選ばれた社員もいた。私は、短大卒でスポーツをやってこなかった。
 
ある時、久しぶりに京都の友達数名が東京に遊びに来ていた。代々木の居酒屋で飲んでるからと誘われた。久しぶりに会った友達に今の近況を話した。そうすると、ある友達から「仕事ができるエリートに囲まれて、恥ずかしくならへんの?」と言われた。その友達は、服飾専門学校を卒業して地元で働いていた。私は、自分を否定された気がして、それをうまく返答できなかった。その場を笑ったまま去るのが精一杯だった。代々木からの帰り道は、泣きながら歩いた。
恥ずかしい思いをするのは自分だけだ。すごいメンバーと働けて、私もレベルアップできると思っていた。人から見て恥ずかしいと思われてもそこに食らいつきたかった。人からどう思われようと、気にしない。私の失敗なんて、誰も覚えているはずがない、失敗を恐れずやるしかないと誓った。
 
毎晩12時まで仕事をしても終わらず、土日も出勤する。
当時の彼氏から、女の子が夜の12時まで仕事をしているのはおかしいと、本気で会社に対して怒っていた。自分を心配してくれるのはありがたいが、当時の私は、仕事ができるようになりたかった。自分の心に余裕がなさすぎて、その人とは、別れてしまった。
 
社長から「愛子が利益を出さないと会社が持たないよ」と笑いながら言われた。8人しかいない会社。全国にたくさんの企業と大学があって待ったなしだった。一人一人が戦力にならないと厳しい状況。私に早く一人前のなってほしいと思っているのは、痛いほどわかっていた。私だって、少しでも早く率先力になりたいのに、できてない。
 
ある土曜日、ふらっと会社に来た社長が、私をファミレスに誘ってくれた。社長とハンバーグランチを食べながら、私が接している業界を紙に書いてわかるまで説明してくれた。企業のこと、体育学生が置かれている現状、自分の会社がやるべきこと。それぞれに役割があって、つながりを教えてくれた。点だった情報が線で繋がって、心がスッと晴れたのがわかった。なんでもっと早く聞かなかったんだろう。忙しそうにする上司や同僚に申し訳なくて声をかけられなかった。頼ることも大切だった。
 
そこからだ! とりあえず立ち止まらずに、とにかく上司や同僚に聞いて教えてもらうようにした。全部がうまくいくわけではないけど、少しできるようになってきた。
 
北海道・仙台・関西エリアの企業と大学を担当。
私、一人で現地の協力会社と一緒に就職セミナーを開催。
マネージャーとして部下を持って、担当のエリア以外でも同僚の仕事が手伝えるようになった。
 
数年後、「仕事ができるエリートに囲まれて、恥ずかしくならへんの?」と言った友達と会った。「あの時はごめんな。愛子が周りを気にせず、やってんのがうらやましかったんよね。自分は変なプライドがあって仕事ではうまくいかんくて。あれは必要のないプライドやったなー」友達も仕事で悩んでいたんだと知った。
友達も私も心に余裕がなくて、相手が言いたいことを受け取る余裕がなかっただけだった。
 
私の失敗なんて、誰も覚えてないし、失敗を恐れずやるしかないと誓った日。
これからも、焦る気持ちは少し心の余裕を持って、周りに頼りながら、失敗しても進んでいく。
 
 
 
 
***
 
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2021-03-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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