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銀行ATMから出てきた使えないお金

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:三浦康志(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「このお金使えないって言われた!」
 
買い物に行った息子が部屋に戻ってきて、開口一番こう言いました。
 
「高額紙幣だから取りたくなかったんじゃない。」
 
私はそう応えて、ビールを我慢して寝ました。2010年、メキシコシティにおいての出来事です。
 
その前日、現地の日本人に教えてもらったことが頭をよぎりました。
 
「古い紙幣が使えない場合があるのでお釣りをもらうときは注意した方がいいですよ。」
 
発展途上国に行くとそういうことがあるとは聞いたことがありますが、メキシコでもそんなことが起こるのかと思いました。メキシコは発展途上国とはいえませんが、過去にデフォルト(債務不履行)を何度か起こしています。それに伴う激しいインフレもあったはずです。古い紙幣が使えないというのもそのことと起因しているのかもしれないと思いました。
 
息子が使おうとした紙幣は、商店でお釣りとしてもらった紙幣ではありません。銀行ATMから出てきた紙幣です。ATM設置場所は、国立人類学博物館の建物内にあるATMです。銀行のロゴマークが入ったATMです。
 
外国に行くと街中の商店に汚いATMが置かれていることがあります。そのような怪しいATMではないのです。
 
ただ、その現金引き出しの際にとても不思議なことが起こりました。人生で一度しか経験のないことです。空前絶後です。ほとんどの人が経験したことのないことだと思います。
 
ATMから余分に現金が出てきた、のです。
 
驚きました。
 
これはATMであって、スロットルマシーンではないのです。私は入力し間違えたのかもしれないと思い、レシートで確認してみました。すると、やはり、間違って余分に出て来たことが判明しました。
 
少なく出てきたのなら、徹底して抗議するのですが、余分に出てきたのですから、ラッキーと捉えて、余分のお金も財布に収めました。
 
紙幣受け取り拒否事件に息子が遭遇したのは、その日の夜でした。
 
次の日、様々な商店でこの高額紙幣を使ってみました。
 
・コンビニのお姉さんに受け取り拒否されました
 
・土産物屋のおばちゃんに、このお金は使えない、といわれました
 
・タクシーの運転手のおじさんは、この紙幣は古いから使えない、と受け取り拒否しました
 
どこも、誰も受け取ってくれないのです。数日前に現地の日本人が教えてくれたことが現実のものとなりました。
 
場末の汚く暗い飲み屋で受け取ったよれよれの紙幣ではありません。国立施設にある銀行ATMから引き出したほぼピン札です。それが、本当に使えないのなら、私はその銀行の詐欺にあったことになります。多く出てきたのも、使えないことの罪悪感からだったのかもしれません。
 
ホテルに帰って恐る恐るフロントマンに聞いてみました。銀行ATMから出てきた紙幣を全部並べて、これらのお金は使えるのか、と。
 
フロントマンは10枚弱の紙幣を二つのグループに分類しました。
 
「こちらは使えて、あちらは使えない。見分け方はこの印だ。」
 
愕然としました。本当に使えない紙幣が市中に出回っていること以上に、使えないと分類されたグループに高額紙幣が集中していることに。
 
ATMから余分に多く紙幣が出てきて、その中に使えない紙幣が混ざっていたという二重のビックリ現象に遭遇してしまったのです。使えるお金の総額を合計したら、私が指定した金額より1万円ほど少ないことになります。
 
紙幣が多く出てきて喜んでいた私は、実際には損していたことに気づき、失望しました。
 
レシートを残しているので、その銀行に行って抗議しようと思いましたが、閉店時間を過ぎていました。翌日は、飛行機でロサンゼルスに向かわなければなりません。でも、空港に行けば、その銀行の支店があるかもしれない、思い直して翌日は空港に早めに出発しました。
 
残念ながら空港には銀行の支店はありませんでした。でも国際便なので、外貨両替所があります。外貨両替所であわよくば交換してくれるかもしれません。チェックインを早めに済ませて、外貨両替所に向かいました。
 
・店舗で受け取り拒否された高額紙幣3枚を出して、ドルに交換と申し出ると、NOと断られました
 
・二軒目の両替所では、使える紙幣に受け取り拒否された紙幣を混ぜるというテクニックを使ってみました。ホテルと同じように手際よく二分類して使える紙幣のグループだけ、ドルに両替してくれました
 
・三軒目の店に行くと、この紙幣両替不可、と私が出そうとしている紙幣が張り出されていました。出鼻をくじかれました。
 
空港でも使うことができませんでした。
 
メキシコシティからロサンゼルスに移動した際に、ロサンゼルス在住の友人に、この夢のような体験を話しました。彼は全く驚きもせず、メキシコなら十分あり得る、と総括しました。ダメもとでいいので、メキシコに行った際に交換して欲しい、とこの紙幣は友人に預けました。十年以上たちますが、音沙汰がありません。
 
私は、1万円の授業料を払って貴重な勉強をしたことになります。紙幣は紙くずになることがある、という勉強です。戦争や動乱を伴わずに勉強できたことはとてもラッキーなことです。
 
 
 
 
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2021-03-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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