高級トースターに負けない感動のトーストを簡単に焼く方法
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか？賞を取れるのか？プロも通うのか？〜
記事：垣尾成利（ライティング・ゼミ日曜コース）
「普通のパンが感動レベルの焼き上がりになる」
水分を加えながら焼いたり、高温で一気に焼き上げるグリルを備えていたり、各社から様々な工夫をこらしたトースターがたくさん出回っている。
その始まりは2015年。バルミューダ社が発売したトースターがブームの火付け役となった。このトースターが世に出た時の衝撃は大きく、その後も高級トースターと言われる商品が多種市場に出回るきっかけとなった。
ネットでレビューを検索すると、高評価の書き込みが多数見つかる。
これまでのトースターと全然違う！
今まで食べていたトーストが同じものかと思うくらい美味しく焼けるようになった！
といった感想に、毎朝トーストを食べている人は興味津々だったのではないだろうか。
私もそのひとりだった。
「毎日食べるのだから美味しいトーストが簡単に焼けるなら早速買い換えよう！」と、興味津々、買う気満々で家電量販店に足を運んだ。
そこには派手さもなく静かに鎮座したトースターがあった。
そのシンプルな外見はこれまでのトースターとは一線を画し、他にないお洒落さを感じ、購買欲を大いに煽るものだった。
他のトースターもどれも高機能でこれまでのトースターとは全然違っていた。
それぞれ独特の技術を駆使して、いかに美味しいトーストを焼くかを競い合っていて、その仕組みを見比べるのはとても楽しく、ワクワクするものだった。
一番興味を持ったのが、その先駆けのスチームを加えながら焼くことで、外はカリっと、中はふんわりと焼く技術だった。
しかし、ぐるりと一通りの商品を見回って、出した結論は「買わない」だった。
実力はどれも本当に凄いのだろう。
間違いなく美味しくなるのだろう。
トースターに二万円を超える出費も一時的なもので、あとは毎日ハッピーなのだから無駄な買い物にはならないだろう。
家族みんなもきっと喜ぶだろう。
このトースターが来たら、きっとひとクラス上の生活が始まるのかもしれない。
思いつく限りの購入に繋がる言い訳を考え、幾度も家電量販店に足を運んでみたが、結局「買う」決断には至らなかった。
その理由は一番興味を持ったトースターの仕組みだった。
水分を多く含んで焼き上げることで外はカリッと、中はふんわりな焼き上がりを実現させるというものだが、これはフライパンで同じことができるのではないだろうか？ と思ったのだ。
勢いで買う前に試してみようと、帰宅していつものトーストをフライパンで焼いてみた。
フライパンに水で濡らしたガラスのフタをして焼いてみたのだ。
すると、いつもと同じトーストが、トースターで焼いたものとは比べ物にならないくらいカリッ！ ふんわり♪ な焼き上がりになったのだ。
「うわ！ 美味い！！ なんやこれ全然違うやん！！」
弱火で数分、濡らしたフタの水分のおかげで水蒸気に包まれた状態で焼きあがっていくことでいつものトーストは劇的な変化を遂げた。
片面を焼いて、裏返しにする時にもう一度フタを濡らす。
表面の焼き色を見ながら最後に少しだけ火を強める。
フタを開ける度にフワッ！ と蒸気とともにトーストが焼ける香りが広がる。
最後にフライパンにバターを落として、ジュワーッと溶けたバターを染み込ませながら焼いたら完成だ。
フライパンと濡らしたフタがあれば、いつものトーストが感動レベルの焼き上がりになる。
最新の高級トースターに負けないくらい美味しく焼けるのだ。
トースターはスイッチを入れたら5分かからずに簡単に焼けるけれど、フライパンで焼くパンは放置していると焦げるので付きっきりで焼け具合を見る必要がある。ひと手間がかかる点では自動制御の高級トースターには劣るのだが、それもわずか数分のこと、それほど負担にはならない上に、このひと手間があるから余計に美味しく感じられるのだ。
このひと手間を惜しまず楽しむだけで、いつものトーストが激変するのだ。
土曜の朝、忙しかった一週間に労いの気持ちを持ってフライパンでトーストを焼く。
ガラスのフタが蒸気で曇り始める時、裏返しのためにフタを取って蒸気と香りが広がる時、バターを落とした瞬間のジュワーッ！ と音がする時、ふと時間を忘れてその様子に見入る瞬間、駆け抜けるように過ぎていた時間が止まる。
あぁ、今週もよく頑張ったなぁ。
満足は、お金を払えば簡単に手に入るのかもしれない。
でも、お金以上に知恵と発想でそれ以上の満足を得られることもたくさんある。
高いお金を払ってトースターを買わなくても、ひと手間かけてこれだけ満たされれば充分だ。
フライパンで焼いたトーストは、充実した一週間を締め括る、ゆったりとした幸せな時間を約束してくれる。
ぜひ一度、いつものトーストをフライパンで焼いてみてほしい。
その違いに、きっと感動するはずだ。
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