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けんかなんて、怖くない


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:空飛ぶぺんぎん(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
小さいとき、家族と出かけたデパートで姉と迷子になったことがあった。
姉は、泣きじゃくるわたしの手をぎゅっと握りしめ、自分たちが迷子だと気づいた場所で母親をじっと待ち続けた。
姉は、母親から迷子になったら動かないように言われていたらしい。
 
迷子になったら、絶対動いちゃダメ。
 
そんなシンプルな約束事だけれど、小さなわたしたちは(正確には姉だけど)、「ここに居たら、絶対に母親が迎えに来てくれる」と信じて待ち続けることができた。
 
困ったときの対応方法を、あらかじめ決めておく。
些細なことではあるが、いざというときの小さな約束ごとは、荒波の中の灯台のごとく、わたしたちに勇気を与えてくれる。
 
いざという時の小さな約束事は、仕事や家庭など、わたしたちの人間関係において、意見が対立したときやけんかをしてしまったときにも有効だ。
 
わたしは、仕事仲間とは「意見が割れたら、双方の意見のメリット・デメリットを洗い出して検討する」、パートナーとは「けんかしても1日で仲直りする」という約束事をつくっている。
 
誰かと意見が対立したとき、わたしたちは、自分の意見だけが正しいと思ってしまう。
意見が対立すれば対立するほど、折り合いポイントが見つけられなくなるし、親しい人とのけんかに至っては、けんかのきっかけになったことじゃない日頃の不満も出てきて、もう一生許してやるもんか、みたいな気持ちにもなる。
 
ジョン・M・ゴッドマン博士が「結婚生活を成功させる七つの原則」で言っている。
幸福な夫婦は、「リペアアテンプト(修復努力)」の達人であると。
「リペアアテンプト(修復努力)」とは、「憎悪感情が追えなくなるほど高揚するのを防ぐもの」として使われる。
幸福な夫婦は、お互いをののしり合っていたとしても、仲直りするためのちょっとした工夫を持っているのだ。
 
「対立をさける」方法を考えるのではなく、「対立しても、仲直りする」方法を決めておく。
これこそが、わたしたちの人間関係を円満に、そして豊かにしてくれる秘訣だ。
 
わたしの仕事仲間との例をご紹介しよう。
わたしたち3人は、それぞれの知恵や経験を持ち寄って、新しい研修プログラムをつくろう!と張り切っていた。
しかし、打合せを進めていくなかで、仲間の一人が過去に行ったプログラムをベースにした研修が出来上がっていった。
 
3人で知恵を持ち寄ろうと言っていたのに、なぜ誰かの過去の研修をベースにするのだろう?と違和感を感じつつも、「3人でつくる」からには、自分の意見を言うべきだと思っていたわたしは、こんな内容を付け足したらどうだろう?このスライドはこの位置でよいのか?などとアイデアや意見を出していた。
 
しかし、全く採用されない。2対1の多数決で否決されていく。
そして、意見を言うと、研修のベースをつくってくれた人に嫌そうな顔をされる。
 
流されるたびに、私の不満はたまっていった。
3人で新しい研修プログラムをつくろうと言っていたのではないのか。
誰かが過去につくった研修プログラムをベースにしてブラッシュアップするのを「3人でつくった」と言えるのか?
 
そして、意見に対して嫌そうな顔をされるたびに、自分がつくった研修に意見をされるのって嫌だよね。わたしだったら嫌だもん……と、どんどん意見も言いにくくなった。
 
そんな不満や葛藤が積もり積もって、わたしは耐えられなくなった。
もう、このままでは、彼らと一緒に仕事などできない。
 
「プログラムの作り方について話がしたい。わたしは、いまのやり方では続けられない」
 
わたしは他の2人に申し入れた。
 
わたしは、自分の意見を採用してもらえないと感じていること、誰かが過去にやった研修をベースにすると意見を言いにくいし、言われた方も嫌だろうから、もう3人で研修プログラムをつくることを辞めないかと伝えた。
 
それを聞いた一人のメンバーが言った。
「わたしが言った意見も、二人に流されてたよ」
 
―え、そんなことあった?
 
もう一人のメンバーが言った。
「自分がつくった内容に意見を言われるのを嫌だと思ったことはないよ。意見をもらったことについて、真剣に考えていたよ」
 
―あれ、嫌だと思った顔じゃなくて真剣に考えてくれていた顔だったの?
 
わたしは、自分の意見が採用されなかったときしか覚えていなかったし、自分が嫌だと思うことは、そりゃ人も嫌だろう、と思いこんでいた。
 
このように、わたしたちは自分の立場から物事を見てしまいがちだ。
感情的になればなるほど、その傾向は強くなる。
 
そして、思い通りにならないことが続けば続くほど、意見が折り合わなければ折り合わないほど、自分だけがなぜこんな嫌な目にあるのだろう?と被害者のように感じてしまい、余計に頑なになっていく。
 
まるで、母親とはぐれた迷子のように、自分を見失ってしまうのだ。
 
だからこそ、あらかじめ「仲直りする方法」を決めておく。
仲直りする方法さえ決めておけば、たとえ迷ったとしても、元の場所に戻ってくることができる。
 
そして、この「仲直りする方法」を話し合う過程こそが、豊かな時間になる。
わたしたちも、仲間と、また対立が起きたとき、自分たちは何を大切にするのかを話し合った。その時間は、わたしたちがこれからも仕事をともにしたいとお互いに感じていることを確認した時間でもあった。
 
けんかや対立を恐れるあなたにこそ、大切な人と対立したときの約束事をつくることをおすすめしたい。
けんかなんて、怖くなくなるはずだ。
 
 
 
 
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2021-03-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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