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お酒の売上が右肩下がりの本当の理由

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記事:清田智代(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
少し前からワインにはまっている。それまではワインはもちろん、お酒自体に興味がなかった。
しかし数年前、フランスのボルドー地方のマラソン大会に参加することになった。そこでは給水地点でご当地赤ワインがグラスで提供されるのだが、ワインを飲みながら42.195キロを走るというそのイベントは、予想外に楽しかった。いつもはフルマラソンを走り切るだけでも辛いのに、ワインを飲みながら、そしてワインの原料となるぶどう畑の中を走ったからか、なぜか心は軽かった。おまけに走っている間、みんな陽気に話しかけてくるのだ。給水地点では、ワインを片手にKANPAI(なぜか日本語)!
ワインには不思議な力がある、そんな思いが強くなった。
 
私がワイン好きになったきっかけは少し独特かもしれない。しかし切り口はどうあれ、日本には多くのワイン愛好家がいる。また、日本酒愛好家も少なからずいる。だが昭和の終わりから今にかけてのこの40年来、ワインや日本酒だけでなく、酒全般の売上が右肩下がりで、お酒が売れなくなったらしい。特に若者のお酒離れが顕著とのことだ。一部ではお酒の業界が衰退産業と揶揄されることもあるようだ。
 
お酒という飲み物は、単に飲む人を良い気分にさせてくれるだけでなく、様々な魅力を秘めている。そのひとつが、お酒は人と人を結ぶということだ。それは自分の身近にいる人同士でもいえることだが、国を超えたグローバルな関係においても同じことがいえるのではないだろうか。少なくともこの1年はコロナ禍であらゆる制限があるものの、国を越えた人の移動が増えるにつれて、お酒を飲む機会もグローバル化している。
そしてこのグローバル化の波は、飲む人だけでなく、良くも悪くも作り手たちや売り手にも押し寄せているという。
 
ワインでいえば、フランスのブルゴーニュ地方のワイナリーが、数年前から函館でワイン作りを始めた。フランスの老舗が日本でワイン作りだなんて、これまでにない話だ。どうやら函館という土地は、天候や地質、土壌という点でワイン作りに適しているという。というのは、ブルゴーニュ地方が地球温暖化の影響を受けつつあり、これまでと同質のワインが作れなくなることが懸念されているようだ。少々後ろ向きな理由ではあるけれど、ワイン界の大御所が日本でワインを作るなんて、画期的で明るい話ではないだろうか。このワインが市場に出るのは2025年としばらく時間はかかりそうではあるが、今後の行方が気になるところだ。
 
この一方で、日本の酒蔵も様々な取り組みを行っている。たとえば栃木県の千禽という蔵元では、世代交代のタイミングで若い杜氏が画期的な取り組みを始めた。これまで「オヤジが飲む安い酒」というイメージを覆すべく、酒の質自体を上げる努力とともに、日本酒を詰める瓶のラベルをスタイリッシュにアレンジするなど、ターゲット層を若い女子に定めた取り組みが功を奏した。
また最近では、日本の社氏がフランスのパリで日本酒の醸造をはじめたという。その名もWAKAZEというブランドで、日本酒を作るのに必要な米も水も、フランス産にこだわっているという。しかし日本酒の海外進出のいきさつにも、少々後ろ向きな背景がある。というのは、日本の需要には限度があり、ニーズを外に求めざるを、いや、自ら創らざるを得ないという。
 
このように、これまで固定されていた酒のイメージが、新たなプレイヤーたちの手で覆されようとしている。コロナ禍という逆境や、変わらざるを得ない状況もある中で、斜陽産業とよばれることもある酒業界による新たな「仕込み」ともいえる取り組み様は、現在進行形のストーリーを追っているような気分になる。
 
この成熟社会の中で、「ストーリー」というのは、人がモノを買うためのカギとなるだろう。だが、買い手が関心を持たない限り、ストーリーが響くことはない。
この現代に酒の需要が減っているのは、どうも酒自体に魅力がないのではなく、「飲むこと」に限らず「食べること」そのものへの関心が低くなっていることが原因ではないかと思う。今は昔とは違い、何でも安く簡単に手に入れることができる。また、孤食という言葉が生まれたように、1人で食べることも多い時代だからこそ、食べることの意義や価値が相対的に下がっているのではないだろうか。この状況では、食に時間をかけようと思うのも難しいし、おまけにお酒も一緒に飲もうとも思わないだろう。
 
私はワインが好きだし、ワインにまつわるストーリーそしるのも大好きだ。だからと言って他の人たちに対し「お酒を飲もう」なんて言える立場でもないし、私が訴えたところで動く人はいないだろう。
でも、せめて食べるものや、食べる時間をもっと大切にしてみてほしい。
東京でも緊急事態宣言が解除されたが、予断が許されない状況はこれからも続くだろう。だから大きな声では言えないけれど、自由に飲食ができる時が来て、誰かと一緒に食事をするとき、好きなメニューにはどんなお酒があうのかも、考えてみてほしい。そう、世の中にはペアリングという、「おいしい食事とワインの組み合わせ」なるものが存在するのだ。
そこまでこだわらなくとも、そのお酒がどんな風に作られているのか、また作り手がどんな人たちかを知った時、目の前のグラスがよりいとおしくなるに違いない。
 
 
 
 
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2021-03-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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