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メディアグランプリ

呪いから解放されて知った闇の深淵


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
 
記事:濱田 英樹(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「レジ袋をお付けしますか?」
私は、いつも出社前に事務所近くのコンビニに立ち寄ります。ペットボトルの水と小腹の足しになりそうなグミやドライフルーツを1袋買うのがお決まりのパターンです。
レジでお会計をすると、決まって店員さんがこうに聞いてきます。
キャンディーの小袋は上着のポケットに入れ、ペットボトルは手に持ちます。レジ袋は不要ですし、なによりもったいないです。
ですが1年程前は、私が店員さんより先にこう言っていました。
「レジ袋は要りません」
 
日本政府がレジ袋有料化を2020年7月に義務化してから、小売店の対応が一斉に変わりました。それまでは、たった2つの商品を買うだけでも、有無を言わさず袋がついてきました。その為、袋に入れられる前に、袋が不要だと伝えなければなりません。
レジに並び、自分の会計の番がくると、店員さんは手早く私が差し出した商品をスキャンし商品を袋に詰めます。
その間、ほんの数秒。このタイミングで、「袋要りませんコール」 をします。しかし、時々このタイミングを誤るのです。今日これからの仕事の事を考えていたり、隣のレジに並ぶ人が持っている見慣れない新商品に気を取られたりして、目の前のレジへの注意を怠ってしまう時です。
 
店員さんが商品を袋に入れかけてしまった時に、袋入りませんコールをすると、
店員さんは往々にして、ちょっと嫌な顔をするように見えます。
「もっと早く言ってよ」
と、まるで心の声が聞こえるようです。
商品を入れかけた袋を戻すよりも、そのまま袋に入れて持って帰ってもらった方が作業的にはスムーズです。
入れかけの少しくしゃくしゃになった袋は、綺麗に畳まれたレジ袋入れには戻りません。
きちんと整理された無駄のないレイアウトにおいていったん出したレジ袋はもとには戻れない不可逆性を有し、円滑なオペレーションを阻むのです。
それを次のお客さんに回すのもためらわれます。
くしゃくしゃになったレジ袋は、店員さんにとって、後ろに並ぶお客様に対して提供すべき品質としてみなされないのです。後できちんと畳まれて使われたとしても、店員さんには余計な仕事とストレスを与えてしまう事になります。
最悪なのは、袋に品物が完全に入ってしまっていた場合。
もう、後戻りはできません。コンビニの外に出た私は、
「ごめんなさい」
心の中でそうつぶやいた後、その袋をコンビニの前に置いてあるゴミ箱へ捨てるのです……。
私の中に残る罪悪感。それはある種の呪いと言ってもいいかもしれません。
 
ところが、レジ袋が有料化となった今、状況は変わりました。
もう、袋要らないコールを逃しません。
「レジ袋をお付けしますか?」
店員さんがちゃんと聞いてくれるのです。
 
私はレジ袋が有料化になったおかげで、レジに並ぶ妙な緊張感や後悔から解放されたのです。それは野球でいえば、攻守が入れ替わったような立場の逆転です。
私は、計らずしてレジ袋の呪いから解放されたのですが、素朴な疑問が沸き上がりました。
そもそも、なぜレジ袋が有料化となったのでしょうか。
調べてみれば、それはレジ袋がもったいないと思っていた私の悩みよりも、ずっと深刻なものでした。
 
日本政府は、脱石油・プラスチックの観点から小売業を営む全ての事業者にレジ袋の有料化を義務付けました。それまで使われていたレジ袋の数は、およそ年間300億枚でしたがこの取り組みにより、すでに7割ほどの削減がされたそうです。しかし、実は日本の環境に関わる環境負荷にとって、これはほんの小さな一部分でしかないのです。。
 
環境負荷で最も深刻なのは、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素排出量です。
2018年度の環境省の資料によれば、年間で日本が排出する二酸化炭素量は、およそ11億3800万トン。それに対して林野庁の資料を調べてみれば、日本の森林が吸収・蓄積できる二酸化炭素の量は、8300万トン…… 全く、吊り合いません。
そして、私たち人間が呼吸で排出する二酸化炭素量は、なんと1日で約1㎏もあるのです!
 
さらに驚くべきなのは、同じ年の10月、政府が発表した目標です。
「2050年までに、実質二酸化炭素量の排出をゼロにする」
 
先の数字を見比べれば、それがいかに非現実的でとんでもない目標であるか明らかです。
これは、日本の政治家が描いた絵空事でも妄想でもありません。このとんでもない目標は、既に世界中の120を超える国や地域が掲げているのです。
世界が本気でこの問題に取り組まなければ2050年、地球は私たちがまともに住むことができない程に劣悪な環境になってしまう、危機的状況に陥るのです。
むしろとんでもないのは、2050年の目標ではなく、今の状況だと言えます。
 
レジ袋の有料化は、私に意識を変えるきっかけをくれました。すぐに変わらなくてはいけないと。日々の生活や仕事の中で、環境の為にできる事は何か、環境により良い選択は何か、積極的に考えずにはいられません。
少なくとも、自分の吐き出した二酸化炭素くらい、自分で回収したい。
それが、私が生きる上での最低限の始末。
今は、そう思うのです。
 
 
 
 
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2021-04-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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