書くことをはじめてから変わった日常
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
清田智代(ライティング・ゼミ日曜コース)
寒さが1年で最も厳しくなる2月に、その桜は満開を迎える。桜の花びらは大きく、とても鮮やかな桃色をしている。そして3月に入った今、花びらは既に散りはじめ、葉桜となりかけている。
池袋駅の西口から伸びる大通りをひと駅隣の要町駅方面へ向かって歩いていくと、祥雲寺というお寺に出合う。
この大通りは、飲食店や美容院、マンション、雑居ビルが所狭しと並んでいる。どこにでもある風景かもしれないが、このお寺だけは少し違う。お寺の門の前には1本の木が生えているのだ。
少し前の話になるが、2月、朝の時間帯はまだ息が白くなるほど寒いのに、その桜だけは季節をだいぶ先取りしている。咲き誇る鮮やかなピンクの花は、いつも多くの通行人を惹きつけている。彼らも私と同じように、頭の中ではてなマークを抱えていることだろう。桜はこんなに早く咲くだろうかと。ある人は歩きながら首だけ回し、またある人は足を止め、桜をカメラに収めている。
さて、日常生活がどんなに単純であっても、各自毎日過ごしていく中で、いろんなことを経験するだろう。その出会いは偶然かもしれないし、もしかしたら誰かが事前に仕込んだものかもしれない。いずれにせよ、毎日は同じように感じても、微妙に違う。それに気づくかどうかは私たち次第だ。
少なくとも1年前も祥雲寺の前で満開の桜を見かけては、随分早咲きだなぁとは思っていた。しかし、私はそれ以上大して気にも留めず、足早に目的へ向かった。そして今と同じぐらいの3月、葉桜を見かけては、おかしいなぁと思いつつも、次の瞬間には、桜のイメージなんて忘却の彼方へと葬られるのであった。
しかしどうだろう。今年は意識の向け方がより注意深くなっているようだ。だって、この桜について、自分で手を動かして調べているのだから。どうやらその桜の木は「河津桜」という桜の一種で、静岡県の河津町で発見された早咲きタイプの桜らしい。一般的なソメイヨシノとは異なり、花の色は大きく、鮮やかな桃色が特徴的だそうな。
そう、桜といっても、実はいろんな種類があるのだ。日本のあちこちで見かけるのはソメイヨシノだろう。しかし、世の中には河津桜のような早咲きタイプの桜はいくつもあることを知った。正確にいえば、そんな話は昔もどこかで聞いたことがあるが、完全に忘れていた。
このような意識の変化の理由は、週に1度2,000字を書くという課題ができたことが一番大きい。作文したことがある方ならお分かりいただけると思うが、持ちネタというものは結構簡単に尽きてしまうもので、記憶の中から書こうとするのは案外辛い作業だ。
それに気づいてからは、日常の暮らしの中からそのネタを探すようになった。
単なる「情報提供」ではなく、「読んでもらえるもの」を書くことに意識が向くようになった。目の前の現象や気付きをどうシェアすれば読んでもらえるかを考えるようになった。
つまりアウトプットが日常になったから、インプットの精度が上がってきているのだと思う。
長文を書くためにはある程度、テクニックが必要かもしれない。しかし書き手に伝えたいことがないと、よい文章、つまり読み手にとって読む価値のある文章は生まれない。
では、読まれる文章はどんな文章かというと、おそらく、新聞などのメディアや広告のように読み手にとって有意義な情報がふくまれていること、購買のように読み手の行動を変える力があるものもあれば、エッセイやコラムのように、読み手に何らかの影響をあたえることができるような文章を指すのではないだろうか。
文章書きはじめた頃は、過去のユニークな体験をいかに面白く書くかばかり考えていた。
しかし、比較的単調な日常を送る私には、それには限界がある。おそらく私の体験を呼んでも、他人が変わることはない。せいぜい、「ふーん」といってもらう程度だ。
そのことに気付いてからは、いかに日常をうまく切り取るかを考えるようになった。
しかしそれを繰り返していくうちに、実は日常というのは変化に富んでいることが分かった。
それは夜空に浮かぶ月の満ち欠けとか、スーパーの品ぞろえの変化とか。そして、今回の桜の例。このお寺の中は、実は抹茶を出してくれるカフェへもあったんだ。
講座のはじめから、講師が「ライティングゼミで人生が変わる」と仰っていて、その言葉については正直半信半疑だった。実際、今でも書くのに時間がかかるし、学んだことを生かしきれず、課題の提出も十分にできていない。
しかし書くことを意識しながら日常を送る中で、ものの見方や他人への配慮など、きっと生きていくうえで重要なことを間接的に学ばせてもらっている。
よい文章が書けるようになるにはもう少し時間がかかりそうだ。しかし、大人になってからはなかなか経験できない、貴重な学びの機会に今日も感謝したい。
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