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少女~老婦人 all女子は「みっともない」が嫌い? 心揺れる温泉と告別式


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:月之 まゆみ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「旅行で温泉に行っても温泉には入らないよ。美味しい料理を食べて雰囲気を楽しむだけ」
 
どこにでもある職場の昼食時の女子の会話のことだ。それは長引く外出自粛があけた後、どこに行きたいかという話題で盛り上がったときのことだった。 20代~60代の女子たちがそろうなかで驚きの告白をしたのは40代女子。
 
「わかるわぁ。 脱衣所で若い子の裸と並ぶだけで一気に劣等感の奈落にまっ逆さま」
50代女子が追い打ちをかける。
「えっ! でも温泉に行って大浴場に入らなかったら損した気分にならない?」
「もちろん後悔が残るけどさぁ、線が崩れた自分の身体を直視する以上に、若い子が私を見た時に将来、あんなカラダになったら嫌だと思われたくないだけ」
「そういえば私も小さい時、家族旅行で行った温泉の脱衣所で、お祖母ちゃんのお尻を見た時、四角かったのでびっくりして怖くなっちゃったな。なんでお年寄りのお尻って皆、四角くなるんだろうね」30代女子が話を広げる。
 
いったい何歳から老女の領域にはいるのかあいまいだが、確かに老女のお尻は四角い。
メディアや雑誌の露出が多いのは若い女性か、せいぜい艶っぽい熟女まで。
老女が世間に裸体をさらす機会はめったにない。 温泉ぐらいではないだろうか。
長年の正座に慣れた生活習慣に加え、肉が落ちたお尻は、色が白いだけに切り餅のように見えないこともない。
そんな細かなことまで意識したことはなかったが、温泉で年の若い女性と並ぶ恐怖は自分だけではなかったと知って安堵する。
 
本当に温泉旅行を楽しみたい年代に入ってから、楽しみとは裏腹に大浴場をためらい脱衣所に誰かが入ってくるたびに落ち着かない自分がいた。
 
その怯える感情が自分たちの若い時に見た年上の女性の身体の変化へ対する違和感だったと初めて気づいた。皆、同じ感情を抱いていたのだと思った。
 
10代~20代の頃はプールや海水浴場、温泉、どこでも抵抗なく行けた。
いやしかし多分その時はその時で、自分を他人と比較しては一喜一憂していたのではないかと思う……。
それにしても外見の美醜にこれ程、平均値を求める日本人女子は実に繊細だ。
 
リオ・デ・ジャネイロで見たブラジル女性は老いも若きも日に焼けた健康体を誇示するがのごとく、人生の謳歌しながらどこでもいつでもすぐ裸になっていた。
 
女性優位のイタリアは美しい女性にとっては何かと特典の多いお国柄だが、物心つく2歳児から老婆まで私の出会った女性は死ぬまで女性であることを貫いていた。
海岸では老婦人も若い女性と同じくデザイン性と露出の高いビキニを堂々と着こなしていた。そして若い女性では到底、太刀打ちできない圧巻の余裕で若い男性を意のままにあやつっていた。
 
一方、ノルウェー・フィンランドなど北欧の人たちも自然を享受しながら、夏は海岸で冬はサウナや温泉でおおらかにヌードになったが、個体の裸体がさばさばと乾いた感じで集まり、比較や劣等感など皆無だったような印象だ。
 
 
自分の過去を振り返ったとき、20代の若さは、それだけで輝く何かがあったハズなのに
なぜ自分を愛せなかったのだろうか。無意味な劣等感に費やした時間は堆積しながら、振り返るとあっという間に月日は流れていた。
 
そんなことを思い出し、会話への参入を控えていた20代の女子にもの申す。
「身体のライン、きっと綺麗なんだろうな。 あっという間に時は過ぎるからね。
人と違うところを愛してあげようね」
 
 
別の日にこんなことがあった。痴呆症を患い長く施設で介護を受けていた近所の方の告別式のことだ。斎場の棺の前には一番元気で充実していた在りし日の爽やかな笑顔の故人の遺影が飾られていた。弔いに来た人たちはその写真を見て、懐かしい記憶をたぐりよせ厳かながら晴れやかな気分になっていた。
 
最後は長くつらい時期が続いたけれど、本当に良い人生だったね。頑張ったね。ありがとう。そんな穏やかな雰囲気が告別式全体を包んでいた。
さて焼香を済ませて帰ろうとする老婦人のグループへ斎場の若い係員が声をかける。
最後に是非、故人の顔を見て見送って欲しいというのだ。
係員は身内もほとんど残っていない残された遺族を気遣ってそう薦めたのだろう。
 
しかしそう声をかけられ後ずさる老婦人たち。中の一人が小さな声で嫌だと断った。
 
なぜなら故人は10年近くも入院しており、彼女たちの知る故人を見るのをためらったのだ。別人となってしまった故人の姿を拝む必要はあるのか。
自分たちも近い将来、遅かれ早かれその後に続くはずだ。であればそんな現実を見たくないし、自分も見られたくない。
良元気だった頃の良い思い出だけを胸に友人と別れたい。老婦人たちはそう考えたのだろう
係員がもう一度、だれか代表として一人でもよいから、お別れを告げてやって欲しいと促す。そこで一人の婦人が棺を覗きこんで手を合わせた。
そしてしんみりと会場を後にしたが、案の定、帰り道、大変、腹立たしい様子だった。
 
誰しもが老いたる自分の未来の姿を見るのにためらいがある、
 
特に日本国の女子たちは総じて「みっともない」を密かに恐れている。
 
「みっともない」の意味を調べると、「見た目の悪い」「体裁が悪い」「見苦しい」が出てきた。
「見苦しい」が他人の行為について用いられるのに対し、「みっともない」はより主観的な判断が入りようだ。
 
さてあなたのなかの「みっともない」のバロメーターはどのくらいだろうか。
その針は低いだろうか。または常に揺れ動いているのか。もしくは振り切ったままになっているのだろうか。
 
「みっともない」のバロメーターに左右されない人は、朱に交わらない強さがるように
思う。自分の今の現実を受け入れて人生を自分のために充足させようとする人たちだ。
 
一人あたりの化粧品の購買額が世界的にもトップ水準の日本は、アンチエイジングへの意識の高さを現わしている。そんな日夜、繊細な心で努力を重ね続ける女子たちよ。
 
さぁ、ナイトブラを脱ぎ捨てて、温泉に出向こうではないか!
 
 
 
 
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2021-04-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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