メディアグランプリ

感情はほのかに香る香水のように


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:空飛ぶぺんぎん(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
自分だけが楽しめるように胸元に香水をつける。
それは儀式のようなもので、自分の気持ちをほんの少しあげてくれる魔法の儀式だ。
そうやって、ちょっとだけつけた香水は、すれ違ったときやパーソナルスペースに入ったときだけ、ふんわり香ってくれる。
同じ香水であっても、人によってほんのりと香りは変わり、その人固有の花を持ち歩いているかのように、ふんわりと香ってくる。
そんな風にふんわりと漂ってくる香水は、まるで感情のようだ。
 
わたしは、コーチとして人の話を聞かせていただくことが多い。
聴かせていただく内容は、キャリアや家族、人間関係など様々ではあるが、コーチという仕事をしていると「感情」を捉えることはコミュニケーション核であるように感じている。
 
以前、セッション中になぜか悲しい気持ちになったことがあった。
「あれ、わたし、悲しくなってきたんだけど」とぽつんと言葉にしてみたら、相手がぽろぽろと泣きだした、ということがあった。
その人は、わたしの言葉をきっかけに「悲しい」という感情に気づいたのだ、と後に語ってくれた。
 
わたしたちは、周りの人と、言葉や感情、思考などを、言葉、身振りや手振り、表情などの手段を用いて、互いに伝え合い、コミュニケーションを取っている。
言葉だけでなく、感情など言葉にはなっていないものも含めてお互いに伝えあっている。
 
ピーター・ドラッカーも「コミュニケーションで最も大切なことは、語られていないことを聞くことである」と言っているように、コミュニケーションは、こういった言葉にされていないものをどうやって捉えるかが大切だ。
 
コミュニケーションの核は「きく」ことである
 
例えば、友人の悩みごとを聞くとき、あなたは何をきいているだろう?
友人の話を聞きながら、
「わたしだったらどうするかな?」
「この話、前も聞いたな」
 
なんてことを考えている。そんなことは、ないだろうか。
 
わたしたちの「耳」は、とても優秀で自然と音を拾ってくれる。
聞こえてくる音を聞いておけば「きく」ことができていると思っている人も多いが、この「きき方」では相手の感情を捉えることは難しい。
 
感情を捉えるためには、いつもの聞き方から、ほんの少し意識を変える必要がある。
 
それは、自分の考えや浮かんできたアドバイスをほんの少し脇においてみることだ。
 
「わたしだったらどうするかな?」
「その話、前も聞いたな」
 
と思っているときは、相手ではなく自分に意識が向けられていて、相手の話に集中している状態ではない。
感情を捉えるには、自分に向きがちな意識を相手に意識を向ける。
たったそれだけのことだが、相手への意識がぐっと高まる。
 
そして、それを支えてくれる2つの要素がある。
 
一つ目は、相手の内面に対する「好奇心」である。
 
何かが起きたとき、わたしたちは、つい、誰がいつ何をしたのかといったことに興味を持つ。
噂話などは最たるものだ。私たちの好奇心は何が起きたのかという「事柄」に向きがちである。
しかし、相手の感情を聴き取るには、相手を主語にして、
 
・この人は何を感じているのだろう?
・この人は何を考えているのだろう?
・この人は何を望んでいるのだろう?
相手の内面に好奇心を向けてみるのだ。
 
2つ目は、「承認の気持ち」だ。
「承認の気持ち」は、相手のありのままを受け入れる気持ちである。
 
わたしたちは、人と接するとき、この人は小さなことでも腹をたてる人だから、とか、いつも泣いてばかりいるダメな人……などと先入観を持ってしまう。
親しい人や苦手な人であればあるほど、そんな先入観を持って接してしまいがちである。
相手の感情に触れたいときは、自分の先入観をちょっと脇に置いて、その人に対してまっすぐに向き合ってみる。
 
そんな態度でその人に臨むから、相手も心を開いてくれるのだ。
 
感情は、目に見えない香りのようなものだ。
その人のパーソナルスペースにそっと入り込まないと、言葉にならない香りを捉えることはできない。
そして、パーソナルスペースに入るために必要なものが、「相手への好奇心」と「承認の気持ち」である。
 
あなたが、相手にそんな気持ちで向きあえたとき、相手の感情がふんわりと漂ってくるはず
だ。
 
目には見えない感情についても、ぜひ思いをはせてみてほしい。
ほのかに香るものを捉えられたとき、きっとあなたは豊かなコミュニケーションをその人とすることができるだろう。
 
 
 
 
***
 
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2021-04-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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