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メディアグランプリ

銭湯で恋に落ちる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:廣川陽子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
はぁ、今日も最高だった。
幸せなため息が漏れる。夢見心地の私は「女」と書かれた赤い暖簾をくぐって、外に出た。
春の夜の空気を吸い込み、見上げるとぼんやりと優しい朧月が浮かんでいる。綺麗だなぁ。
 
私は、ズバリ銭湯が好きだ。スーパー銭湯ももちろん好きなのだが、大人ひとり450円で入れるような昔ながらの銭湯が特に好きだ。
私だけではない、私の家族はみんな銭湯が好きなのだ。それぞれ一人で行ったり、友達と行ったりしているようだ。父は仕事で近畿各地を車で移動することがあるのだが、仕事帰りに色々な場所の銭湯を楽しんでいるらしい。母は、友達と銭湯で延々と井戸端会議をしている。もちろん私と二人で行くこともあり、そこでももちろんおしゃべりは止まらない。3つ年下の弟は、中学生の頃から同級生たちと近所にある幾つかの銭湯を順繰りに巡ってはホクホクした顔で帰宅してきた。各銭湯のスタンプカードを一番多く持っているのも弟だ。
とにかく家族みんな銭湯が好きなので、銭湯の情報交換をすることもしばしばある。
「あそこの銭湯は、お湯が熱いよ」
「あそこは古いけど、広くて伸び伸びしているよ」
といった風に。
 
さて今日は、その銭湯の魅力について語りたい。うちの家族は、きっと一人一人が銭湯に魅力について書くことができると思うのだが、今日は私の思う銭湯の魅力についてお話することにする。
 
銭湯は、私にとってはテーマパークだ。スーパー銭湯に比べると、お湯の種類は少ないが、それでもジャグジーがあったり、電気風呂があったり、露天風呂があることだってある。テーマパークでアトラクションを順番に一つずつ乗るように、それぞれのお湯に入って湯加減を楽しむのだ。
水を沸かしたものではなく、近くで沸いている「温泉」に入れる銭湯もある。温泉地ならばそういった銭湯も当たり前にあるだろうが、私の住んでいるような普通の住宅街ではそんなに多くはない。温泉旅行をしなくても、たったの450円で温泉に浸かれるのは得をした気分になれる。
 
また、銭湯は道場でもある。毎日のようにそこに通ってきている常連さんは、一目でわかる。黒帯をしている人を見ればその人の実力が大体分かるように、銭湯でもパッと見るだけでその人が強いかどうか、つまり常連かどうかがわかるのだ。私自身は、多くても月に4回ほどしか行かないので、まだまだ白帯の初心者だ。黒帯と白帯との見分け方は、まず持ち物が違うということ。白帯の私が、旅行などに持って行く小さな手のひらサイズのシャンプーやコンディショナーを持っているのに対し、黒帯の人たちはドドンっと大きなボトルを持っている。他にも、ペットボトルに入った飲料水を洗い場に持ち込んでいたり、マッサージをするためのカラフルな道具を持っていたりする。
弱いものが強いものへ憧れを抱くことはよくあるが、私も例外ではない。白帯の私は黒帯の人たちを尊敬し、いつかあんな風になりたいと思っている。黒帯の人たちは決まって皆バシャバシャと手桶でかけ水をして、ザバザバと水風呂に入っていく。肩まで浸かっても平気な顔をしているのを目の当たりにすると、憧れずにはいられない。
「す、すごい。さすがだ」
一方私はというと、膝のあたりまでをやっとの思いで水に浸けて、目をギュッとつぶりながら入っている。進級するには、まだまだ鍛錬が必要だ。
 
お風呂から出た後は顔や身体のケアをするのが理想だが、私は究極の面倒くさがり屋だ。やった方がいいのは重々わかっているのだが「面倒臭い」が勝ってしまい、そういったケアはついおろそかになってしまう。最低限だけを投げやりに行っておしまい、ということばかりだ。それが、銭湯に行った日は人が違ったように丁寧に丁寧にケアをする。まるで恋に落ちた日のようだ。じっくりとフェイスパックをして保湿に手をかけたり、ボディークリームを塗りながらマッサージをする。ともすれば「きれいにな〜れ、細くな〜れ」などと心の中でブツブツ呟いている。普段の私とはまるで別人である。恋をすると自分の知らない自分を発見するというが、銭湯に行くと私もいつもとは違う自分に出会うことになる。
 
家族や友達との時間をのんびり味わえるのもいいところだ。最近のスマホは防水仕様になっているので、自宅のお風呂にスマホを持って入るという人も少なくないだろう。私も湯船に浸かりながらスマホで動画を見たり、SNSを覗いたりしながら過ごすことがある。しかし、銭湯だとこれができない。スマホは、お風呂の中はもちろん脱衣所でも出すことを禁じられている。(盗撮の疑いをかけられるため)ということは、銭湯の入口にある券売機で買ったチケットを買ってから、幸せなため息をつきながら暖簾をくぐって外に出てくるその時までスマホは触れないのである。私の場合、時間にすると2〜3時間である。認めたくはないが、私は知らず知らずのうちにスマホに依存してしまっていると思う。気付けばスマホを手にしているし、スマホの画面を眺めながら人差し指でスクロールをしていることがかなり多い。それが銭湯に行くと、銭湯の中がまるで海外旅行中のように「圏外」状態となり、スマホと離れて過ごすことができるのだ。そうすると、一緒に行った母や友達とじっくり向き合って話ができるのだ。
 
私の大好きな銭湯が、近年減ってきている。
どうか、私が黒帯になれるまで頑張ってほしい。
私がおばあちゃんになっても、私のテーマパークであり続けてほしい。
海外旅行気分も味わいたいし、恋だってしたい。
 
 
 
 
***
 
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2021-04-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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