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透明人間も楽じゃないよ

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記事:田中真美子(リーディング倶楽部)
 
あなたは透明人間になりたいって思ったことはありますか?
 
透明になるということは自分の存在が相手に気づかれないということだ。
それを活かして普段は入ることができないところに忍び込む、なんてことを妄想したことがあるだろうか。
 
昔、「Oh!透明人間」という中西やすひろ氏のちょっとHな少年向け漫画があった。
主人公の男子高校生、荒方透留がイクラを食べると透明人間になる体質で、それを利用してのぞきをしたりイタズラをしたりする……、そんな漫画だったと記憶している。
 
といったわけで透明人間には男子のロマン的なものを感じるが、自撮りをしてSNSに載せるのが日常化している、承認欲求高めの女子は透明人間になりたいなんて思わないんだろうなぁ。
 
だいたい、どこまでが透明化するんだ。
衣服は透明にならないのがよくある設定なので、完全に相手から見えなくなるには服を脱がなければならない。
その状態で外を歩くとなると、足をケガするかもしれない。
かといって乗り物を運転するのも周りには無人の乗り物が動いているように見えてしまうのだ、これまた難しいだろう。
 
食べ物はどうだろう。服が透明にならないんだから同じ理屈で行くと食べ物も透明にならないはずだ。
となると、食事をしたら咀嚼された食べ物だけが見えるんだろうか。
疑問は尽きない。
 
そう考えると現実的には透明人間になるってもの大変なんだろうなぁ、なんて思ってしまう。
 
阿津川辰海氏の「透明人間は密室に潜む」はそんな透明人間に関するモヤモヤをうまくストーリーやトリックに活かした短編を含む、素晴らしい本格ミステリ短編集だ。
「2021本格ミステリ・ベスト10」で1位、「このミステリーがすごい! 2021年版」で2位に選ばれた本作、面白さは折り紙つきである。
 
表題作の「透明人間は密室に潜む」は、透明人間が存在する世界を舞台にした倒叙もの(刑事コロンボシリーズや古畑任三郎シリーズのように、犯人視点で物語が描写されるミステリ)で、透明人間である主人公が完全犯罪を起こす過程とそれが探偵に暴かれるまでが描かれる。
 
相手に姿が見えないんだから犯罪を起こすのも簡単だろう、と思いきや、そううまくは行かない。
先に触れたような衣服の問題や移動、食事の問題を創意工夫を持ってクリアしていく主人公。
奇抜な設定ではあるが、乗り越える過程が妙にリアルで面白い。
まるで作者は透明人間になった経験があるかのようだ。
かつて、これほど透明人間が苦労する作品があっただろうか。
「Oh!透明人間」の透留君は、途中で透明から元に戻ってみんなにバレたりして、トラブルを巻き起こしていたけど十分美味しい思いをしているもんなぁ。
 
最終的には倒叙もののお約束で探偵の推理によって犯行が暴かれてしまうのだが、暴かれる過程もロジカルで非常に良くできているし、さらにラストでは驚きの事実が明かされる。
短編だが非常に読み応えのある作品だ。
 
残りの3作品も、どれも舞台設定に凝った実験的な短編でとても面白い。
 
「六人の熱狂する日本人」は裁判員裁判を舞台とし、アイドルオタクが殺害された事件の謎を解き明かすユーモア・ミステリ。
 
「盗聴された殺人」は聴力がずば抜けているという能力を持った探偵が、音を頼りに殺人事件の真相を解き明かしていく。
 
「第13号船室からの脱出」は船内で行われるリアル脱出ゲームと同時進行で進む誘拐事件の話。
作中のリアル脱出ゲームの問題が実際のリアル脱出ゲームも顔負けの出来で、本当に開催できるんじゃないかと思うくらいのレベル。
そこに事件の謎の解明が加わり、読み終わる頃には最高のカタルシスが得られる。
 
単に設定が凝っているだけでなく、物語は最初に謎の提示がされ、次に推理の過程が示され、最後に謎が改名する、という本格ミステリのフォーマットにしっかり則っていて、安心してミステリ好きにおすすめできる。
ミステリを普段あまり読まない方にも、どの作品もとても読みやすく、扱うテーマもアイドルやリアル脱出ゲームなどオタク嗜好をくすぐるものもあり、おすすめできるのではないかと思う。
 
全ての短編において、ラストでたたみかけるように謎が解き明かされて衝撃を受けるのだが、一番最後にさらに驚きの事実を知ることができる。
作品のネタバレにはならないので明かすと、なんと作者の阿津川辰海氏は2017年にデビューしたばかり、まだ20代の方なのだ。
 
まだまだお若いので、これからも氏の素晴らしい作品は世にどんどん産み出されるであろう。
そう思うと楽しみで仕方ない。
 
 
 
 
 
***
 
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2021-04-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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