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本音の在処


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大村沙織(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
自分の本音の在処―あなたはすぐに答えられるだろうか?
 
そんなことを考えてしまったのは、一冊の本がきっかけだった。今とてもお世話になっている本屋「天狼院書店」の店員さんのSNSの投稿で紹介されていた塩谷舞さんの「ここじゃない世界に行きたかった」という本。「バズライター」の名を恣(ほしいまま)にした著者の初のエッセイだった。その本を買おうと思ったのは、その店員さんの投稿にあった感想が純粋に気になったからだった。
 
「『美しい』という以外の表現が見当たらない文章でした」
「『逆立ちしても書けない文章だ』と素直に思ったのですが、それは嫉妬などではなくて、気持ちの良い『諦め』の感情でした」
 
普段ライティング・ゼミで受講生のフィードバックを担当しており、これまで数えきれないくらいの文章に目を通しているその店員さん。その彼に、そんなことを言わせてしまう文章。それは一体どんなものなんだろう? むくむくと膨らむ好奇心を胸に、週末に早速本屋に向かった。
SNSでその本の写真を見たときから、美しそうな本だと思っていた。帯で表紙全体は見えていなかったけど、白地の背景に配置された幻想的な写真に心惹かれていた。実際に本を手に取ってみると、その期待が間違っていなかったことを確信した。窓の陰がうっすらと重ねられた、空が大きく切り取られた写真。しかしその空は雲とも光ともつかない白さでぼやけ、それこそ「ここじゃない世界」感を醸し出していた。また著者の塩谷さんが私とほぼ同年代だったことも、私がレジに向かう背中を押してくれた理由の1つだった。職場の女性の絶対数が少なく、同年代の女性と触れる機会が圧倒的に少ないため、同年代がどんなことを考えているかも気になったし、海外で生活する人ならではの興味深い視点もあるのではないかと、期待を込めた部分もある。
 
正直に白状するとまだ全て読み終わっていないので、本の感想を述べることは避けたい。読み終わっていないのには、ちゃんとした理由がある。本の一節で書かれていたある言葉が、喉に刺さった小骨のように引っかかっているからだ。
 
「あぁ、本音をインターネットにちゃんと置いておいて、本当に良かった! もし、そうした目印がなにもなければ、私たちは出会っているのに、社会的な顔が邪魔をして本来の顔まで辿り着けない……というもどかしい状態で止まっていたに違いない」
 
本の序盤で出てくる塩谷さんがニューヨークで出会ったという友人について記載されたパートで目にした文章だ。最初はとっつきにくかったけど、SNSをきっかけに交流が始まり、今は多くのことを共有できるようになったという
 
「自分の本音って、インターネットに置いておくものなのか…?」
 
この文章を読んで、そんな小さな疑問が私の頭の中に湧き上がってきた。
SNSにアップされるポジティブなオーラに包まれた写真や、ポップなデコレーションやキャッチーなナレーションで編集された賑やかな動画達。そういったところで皆が公開しているのはいわば「余所行きの自分」なのだと、私は勝手に思い込んでいた。もっと言うのであれば、「SNSはあくまで『社会的な顔』を見せる場であって、本音はそこでは語ってはいけない」という考え方に無意識に囚われていたことに気づかされた。インターネットの世界では皆が不快にならないように、言葉や話題を選ぶなどの最低限のマナーや暗黙の了解がある。特にSNS上での誹謗中傷に対して注目が集まっている最近の事情を考えると、自分の言葉に細心の注意を払い、責任を持つことの重要性が増しているのは想像に難くない。しかし他人の目を意識し、SNS上でのルールを遵守していくと自分の意見が何となく小さくまとまってしまった気がしたり、発信が不完全燃焼で終わったりすることもある。そんなときにはルールが煩わしく感じてしまうときさえあった。
 
「そんなもどかしい思いをするくらいだったら、大事な本音は自分の中にだけ留めておこう」
 
いつからかそんな諦めにも似た呪縛にがんじがらめにされ、私の場合は自分の思考や意見は誰にも見られないように日記に書くことが大半を占めていた。SNSもアカウントは持っているけれど、個人として発信することはなく、グループの中での活動に徹する。だからだろう。力強く「インターネットに本音を置いた」と断言している塩谷さんをとても眩しく、羨ましく感じてしまった。そのあまりの眩さに、ページを捲る手が止まってしまっているというのが正直な気持ちだ。
 
ただそんなに悲観的にならなくても良いのでは、とふと我に返った。だってまさに今、こうやって文章が書けるように練習しているではないか!? 確かにまだまだ拙い文章だし、書くのにも相当時間がかかってしまっている。けれどどんな言葉だとより自分の気持ちを乗せられるかを推敲したり、読者に気持ち良く読んでもらえるには何が必要かを考えたり、過去に文章を書いていたときから意識は明らかに変わっている。覚えなければいけないことはまだたくさんあるし、練習もまだ必要だ。今はチャンスがあれば、貪欲に食らいついていくのみだ。
 
いつか自分の言葉で、人に自分の本音を語れる日は来るのだろうか? そのときには自信を持って言えるようになっていたい。本やスマホを差し出しながら、「私の本音はここにありますよ」と。
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 


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2021-04-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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