メディアグランプリ

素晴らしき哉、喫茶店


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:横山恵(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「あれ?」
お店に出勤したらシフトを勘違いしたというスタッフと鉢合わせ。
「だったらシフト変わるよ。」
そう言って私は店を出た。
 
ぽっかり時間があいた。
今は朝の7時。
 
また家に帰って寝るのもなぁ。
だからといって、パソコンに向かうのもなんだかもったいない気がする。
やらないといけないことは頭に浮かんでいたが、無理矢理打ち消して外に出た。
 
こういう時は、うん、あそこだな。
目的地に向かって自転車を漕ぎ出した。
だいぶ太陽が昇るのが早くなった。
気だるい身体を照らす光に季節のうつろいを感じる。
 
千本通りの坂道を登る。
緩やかな坂だが、少し汗ばむほど長い。
坂を登り切って方向転換をすると、左大文字山が目の前に立っていた。
送り火がついていなくても「大」の字がはっきりと見える。
そうか、京都は盆地だった。
街にいる時には気づかないが、ちょっと北に行くだけでいつの間にか山を登っている。
これが夏だと、街にいても盆地特有の蒸し暑さに嫌でも思い知らされるのだが。
 
さて、今日の目的地はこちらだ。
はなふさ珈琲店 ノース店。
ノース店があるならサウス店もあるのでは?と思いきや、あるのはイースト店。
左京区の岡崎に存在する。
 
私には、常連というほどではないがお気に入りのお店がいくつかある。
その1つがこのお店だ。
他には出町柳のコーヒーハウスマキや岡崎のジャズスポットヤマトヤなど。
どれも私の隠れ家みたいなものだ。
 
一番奥のテーブル席につく。
全面ガラス張りで外の様子がよく見える。
私の他に2組の客がいた。みんな静かに煙草を吸っている。
しばらくすると男性の店員がメニューと水を持ってきた。
申し訳程度にメニューをぱらぱらとめくる。
 
この時間は店員が一人らしい。
今調理しているサンドイッチができあがってからオーダーすることにして、とりあえず外を眺めてみた。
思ったよりも車が通る。通勤だろうか。
この辺は電車が通っていないから移動手段はバスか車になるだろう。
自転車も使えるが、毎日千本通りの坂を登るのは、電動自転車でない限りちょっと遠慮したい。
京都市内のバスの混み具合はオーバーツーリズムを問題視する原因のひとつだが、この地域で自家用車を持っていない人は大変であろう。
ましてや近くには金閣寺がある。連休ともなればバスに乗れないことも多い。
まぁ、今はコロナの影響で観光客も少ないのだが。
 
一旦思考から離れ目線をカウンターに移す。
店員がカウンターから出てきた。
他の客にサンドイッチを出し、私のテーブルに近づく。
「ベーコントーストサンドとコロンビアブレンド」
いつもと同じ注文だ。
 
京都の喫茶店のサンドイッチには、生食パンよりもトーストしたものが多いことに気づいたのはつい最近のことだ。
はなふさ珈琲店ではどちらか選べるのだが、それも東京にはあまりない文化である。
ちなみに私はトーストしたものの方が好きだ。
 
店員はオーダーを聞きカウンターに戻っていった。
この店の店員は特別にサービスがいいわけではないが、それが丁度いい。
気持ちのいい距離感で接してくれる。
一人になりたいときに来ると、すごく落ち着くのだ。
 
店内に漂う煙草の匂いを吸い込む。
普段は煙草を吸わないしむしろ嫌いな方だが、この店内では平気なのが不思議だ。
 
サンドイッチとコーヒーが運ばれてきた。
トーストしたパンにレタス、トマト、きゅうり、ベーコンが挟まったサンドイッチ。
タバスコをたっぷりかけて、煙草の香りと一緒にかぶりつく。おいしい。
サイフォンで淹れたコーヒーは、はじめはブラックで飲む。
香りを楽しむためだ。
温度が下がってきたらミルクを入れる。
コーヒーの苦味をミルクのまろやかさで調整する。
これがこの店での私のルールだ。
 
全て食べ終わって一息つく。
 
思えば、スマホもパソコンも出さずこんなにゆっくりと喫茶店にいるのも久しぶりだ。
いつも仕事を片手に思考を巡らせながら食事をしていた。
空腹を補えられればなんでもよかったし、できるだけ早くお店を出てオフィスに戻りたかった。
自炊もできないのでだいたいは出来合いのものを食べていた。
 
仕事に埋もれている内に、どんどん自分の中が空っぽになっていたのかもしれない。
自宅と職場を往復するだけの日々。
すごく、すごく疲れていたことに気付く。
豊かな発想は豊かな時間からしか生まれない。
どれだけ働いても食事の時間くらいは楽しめばよかった。
 
今朝のスタッフの勘違いから、思わぬ休息を得た。
お土産にチーズケーキでも買って行こうか。
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 


人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2021-04-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事