メディアグランプリ

そうだ、クラゲをみにいこう


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記事:松尾英理子 (ライティング・ゼミ 超通信コース)

クラゲみにいこう。

そう思い立って、コティロリーザツベルクラータに会ってきた。

コティロリーザツベルクラータ。

それは数年前、旅先で訪れた山形県の水族館で出会ってひとめぼれしたクラゲの名前。クラゲとは思えない素敵な名前のイメージ通り、イタリアのアドリア海やギリシャのエーゲ海生まれのヨーロピアンなクラゲ。今まで見た他のどんなクラゲよりもきれいで優雅で、ずっと見ていたくなるような美しさに心を奪われた私は、久しぶりにこのクラゲに会いたくなって、3月に一人その水族館に出かけてきたというわけだ。

なぜ、このクラゲに会いたくなったのか。それは最近、ついてないことばかりだから。例えば、財布を忘れて出かけるとか、電車に飛び乗ったら反対方向だったとか、そういった類の失敗なら、ドジな私には日常茶飯事。笑ってすまされる範囲なのだけど、最近は、もう泣きたくなるような失敗ばかり。

買ってから1週間しか経ってなかったMacBookAirに、ペットボトルのお茶をドボっとこぼしてしまい、修理に出して5万円の出費。耳かきしすぎたら外耳炎になり、1週間以上、難聴と耳痛に悩まされたり。それ以外にも、失敗のほとんどが自分のまいた種で、もうこれでもかっていうくらい後悔と自己嫌悪に陥ることばかりの日々。

ああ、この状況から早く脱したい。

気分的に落ち着きたいと思える時。スマホに録画した、コティロリーザツベルクラータの泳ぐ姿の映像を、今まで何度となく繰り返し見てきた。別名フライドエッグジェリーとも呼ばれていて、傘の真ん中部分がこんもりと半熟の目玉焼きのような薄黄色に色づいている姿にも癒される。また、成長すると足の部分は紫色に色づいてくるのだけど、この紫がなんとも艶っぽくて見惚れてしまう。そして泳ぎ方も、他のクラゲたちよりも少しゆっくり。そのスピードは、深呼吸と同じくらいで、「焦らないで。大丈夫だからね」と優しく語りかけてくれているように見える。

そんなわけで、コティロリーザツベルクラータを見ると運気回復する気がして、時折、泳ぐ映像を見ることを繰り返してきたのだけど、さすがに今回、映像ではそのパワーが届かない気がして、これはもう、見に行くしかないよね。きっと、見たら運気変わるよね。うん、そう思う。と自分に言い聞かせて、会いに行ってきたというわけだ。

山形まで? と思われるかもしれないけれど、意外にも近くて、羽田から1時間で庄内空港へ。そこから車で20分で、鶴岡市の加茂水族館に到着。ここは日本だけでなく世界からも「クラゲの聖地」と呼ばれているほど有名な水族館。

私の住む首都圏近郊にも、クラゲがいる水族館がいくつかあるけれど、加茂水族館のクラゲが一番生き生きしているように見えるのはなぜなのだろう。生まれ故郷である海に隣接していることもあるけれど、クラゲに特化したこの水族館は、飼育スタッフもお客様も、クラゲファーストだから、クラゲたちも幸せそうに見えるのかもしれない。

私の大好きな、コティロリーザツベルクラータは、前訪れた時よりも立派になったように見えて。前よりももっと包容力が増していて、落ち込んだ私を癒してくれた。

やっぱり、ここまで来てよかった。

コティロリーザツベルクラータが一番好きだけれど、私は加茂水族館のクラゲたちがみんな好き。一体何を感じて、こんなに惹きつけられているのだろうと考えると、それはやっぱり、この水族館自体に強いパワーを感じるからなんだろう。実は、加茂水族館は一時は閉館寸前まで追い込まれた歴史がある。今のようにクラゲに特化したのは、おんぼろ水族館を立て直すための最後の賭け。その賭けが見事に成功して今に至っているわけだ。新しいものや変化を追いかけるだけではなくて、一つのものを突き詰めることが大切。磨き続ければ必ず素敵なものになることを、この水族館に来るたびに教えてもらっている。

そしてもう一つ感じるパワーは、クラゲに特化すると決めたこの水族館で働く人たちの情熱。ただ、ぷよぷよと楽に浮いているように見えるクラゲたち、実は育てるのがとても難しいらしい。スタッフたちが水族館近くの海に行ってクラゲを捕り、失敗を重ねながらも飼育方法を研究し続けた結果、今では世界中の研究者がクラゲの飼育方法を聞きに集まってくるようになったとか。神秘的で優美なクラゲたちの姿を見ることができるのも、ここでクラゲたちを飼育する人たちの、並々ならぬ努力と情熱、そして何と言っても、クラゲに対する愛情があるからこそなんだろうな、と思える。

やっぱり来てよかった。ありがとう、コティロリーザツベルクラータ。また会いに来るね。

***

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2021-04-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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