「ライティング・ゼミ」
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:晴 (ライティング・ゼミ平日コース)
毎週月曜日、23時59分
これは、天狼院書店の「ライティング・ゼミ」の課題提出の締切りである。
私は、今年の2月からこのゼミで学んでおり、課題の提出は強制ではないが、締め切りまでに提出した課題は、ひとつひとつ講評が受けられる。うまくなりたいなら、課題を提出するのは必須だし、当然そのつもりで始めた。それに私は、何よりも書きたくて「ライティング・ゼミ」に申し込んだのだ。
私は「盛りだくさんな家」で育った。
私が生まれた昭和41年は、「いざなぎ景気」と呼ばれる好景気の始まったころで、世間は人手不足で、仕事はいくらでもあった。父は、三交代勤務の「サラリーマン」、3町歩の「米農家」、母が経営する工場の「手伝い」、そして時には工事現場で「土方」と四足のわらじを履いていた。母のわらじは数えきれない。糸より工場の「経営者」、一家の「主婦」、父が機械作業をする田んぼの「手伝い」、私と姉の「育児」、姑の「介護」…。
1980年代後半に、「24時間働けますか?」という栄養ドリンクのコマーシャルのキャチコピーがあった。確かにこの時期のサラリーマンもよく働いたのだろう。だが、実際に身体を使って労働をしたという意味において、父と母ほどそれに費やした人間の組合せを、私は知らない。
そんな寝る暇もない合間を縫って、父は酒乱の要素を発揮し、何か月かに一回、晩御飯をちゃぶ台ごとひっくり返していたし、母は、些細なことで私や姉を怒鳴り散らして、時には手をあげていた。
更に、私が高校2年生の頃に亡くなった祖母は、亡くなる前5~6年間、認知症を患った。当時は、「ぼけ」という言葉が知られる前で、「年金を盗られた」とか「食べさせて貰えない」と近所に触れ回る祖母に、几帳面な母は、真っ向から反論し、烈火のごとく怒っていた。ある時、母に懇願された父が、祖母の部屋を探してみると、畳の下から一枚一枚丁寧に並べられた千円札を数枚発見するという漫画みたいなこともあった。
「家庭内暴力」、「児童虐待」、「過労」、「アルコール依存」、「DV(ドメスティック・バイオレンス)」、「嫁姑問題」、「認知症」、「体罰」、現在なら、どれか一つの要素でもYahooニュースに売り込めるかもしれない。この「盛りだくさんな家」に育ったことを私は書きたかった。ずっとずっと書いてみたいと思っていた。父のこと、母のこと、祖母のこと、姉のこと、ご近所のこと。書かないのがもったいないとすら思っていた。
なのに、筆が進まない。
実際に書いてみると、父がただの酒乱になり、母がただのヒステリーになってしまう。父が「父に似て非なるもの」、母が「母に似て非なるもの」になってしまうのだ。父は酒乱でありながら子煩悩な人でもあった。会社から帰ってきた父のあぐらの上を、私と姉で取り合った。父のあぐらの上は、父が勤める工場の「バリ」のにおいがした。「バリ」とは、製品を加工したときにできる不要な部分のことで、父は工場でバリを削る仕事をしていた。
作業着姿の父が、私をあぐらの上に乗せて、膝を右に左に揺らす冬の夕方。
母が作るお好み焼きができあがるのを待つ平穏な日々。
人間は非常に多面的だ。
「ライティング・ゼミ」に話を戻す。
ゼミでは、毎月第一と第三水曜日に1時間半の講義があり、毎回ステップアップしていくようにテーマが組まれている。今までの講義の中で、私がどうしても習得したいと思ったのは、マーケティングライティングだ。「文章で人を売り込む」、「文章で何かを宣伝する」。
私にはその発想そのものがなかったので、目から鱗だった。
毎週の課題は、天狼院書店の公式Facebookグループページに投稿するのだが、水曜日くらいになると、他の受講者からの提出が始まる。締切り間際にギリギリ滑り込んでいる私は、Facebookから「お知らせ」が来るとかなり焦る。これまで、9回の締め切りのうち、なんとか8回提出した。(一度は、23時59分目前に力尽きてしまった)
更に、提出した課題が合格すると、「WEB天狼院書店」に掲載されるという特典もある。
講義で「書く」ことの新たな側面や可能性を発見し、Facebookの「お知らせ」にお尻を叩かれ、WEBに載ることを夢見ながら、2か月半なんとか課題を提出し続けた。
私は、「書く」ことを通して、自分の記憶の断片を、もう一度脳の奥深くより取り出し、色んな角度から眺め、磨き、光を当てた。そのことによって、記憶は、ぼんやりしたひとかたまりの雲からひとつひとつの雨粒になり、今までとは違う色彩を帯びた。憎悪や恐怖の感情としか結びついていなかった記憶には、愛も慈しみも尊敬も感謝もすべてが内包されており、自分の感情が豊かで深いことに気づかされた。
「書き続ける」ことで更に気づいた。
当然、父も母も私の記憶の断片で構成されたものでしかない。
たくさんある記憶からどの断片を組み合わせるかで、見えてくる父の像、母の像が変わる。
「父は、父に似て非なるもの」、「母は、母に似て非なるもの」。
元々、そういうものだったしそれでよかったのだ。
人は自分に関しても、自分の記憶の断片の寄せ集めでしかない。
そういう意味において、私自身も「私に似て非なるもの」であった。
私は、これからも記憶の色彩がどう変化するかを見続けたい。
私にとってそれは、「書く」ことによって達成される。
毎週月曜日、23時59分。
締切りを目指して今日も書く。
***
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