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リスペクトは恋に勝る


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記事: 莉都子 (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「恋に落ちる」というが、落ちようと思って落ちるものではない。気がついたら落ちてしまっているものである。反対にいつの間にかなくなっていたりもする。
 
恋が成就したとしても人は生物学的に、4年経つと相手への興味がなくなるそうだ。だから基本いつか終わる。
 
ところで皆さんは、リスペクトが止まない対象を何かお持ちだろうか。
私には思い当たるものがある。
 
伝説のバンドBOOWYである。好きなアーティストは私自身たくさんいるのだが、BOOWYに対するこの感情は「リスペクトだ」と最近になり自分で気が付いた。もちろん昔から熱狂的なファンであったが。
 
ファンになったそのときも、恋と同じく気が付いたら深みに落ちてハマっていた。
きっかけも鮮明に覚えている。
 
当時は新しい音楽といえばラジオからの情報が多かった。
ある日、ラジオをつけると素敵な曲が流れていた。
この声は西城秀樹? いやもっと艶のある声で曲も全然違う。ラジオの曲紹介は歌の終わりがけにかぶせてDJが言うことが多い。それを聴き逃さないようラジオに耳を当て暗記したものだ。
 
当時はコレ! というアーティストをラジオで知ってからレンタルレコード店に行って探し当てるなど少しの行動が必要だった。それで好きになると、まるで自分が発掘したんだぞ! という気持ちにもさせてもらえる楽しさがあった。捕りに行った感覚で、それは私のものなのだ。
 
曲紹介では「ボーイのわがままジュリエットでした」と言った。
あ、これかー! ボーイという響きは初めてではなかった。
 
実はその2カ月ほど前に、山下久美子さん結婚! とワイドショーで話題になったとき「お相手はBOOWYの布袋寅泰さん」とテロップに出ていて誰ですか? と思っていたのだ。山下久美子は「赤道小町ドキッ」がカネボウ化粧品のCM曲にもなって、当時売れっ子だった。
 
見たことのないノッポなお婿さんが泣いて泣いて、もう嗚咽してるんじゃないかというレベルに感激していて大丈夫か? と目を引き、頭を離れなかったのだ。そのうちBOOWYの正体を突き止めようと意識して覚えていた。
だって超有名な山下久美子と結婚するならきっとすごい人に違いない。
 
あ、このバンドの人なのね。この歌声があのお兄さんか? 何しろレンタルレコード店へダッシュで行ってみた。わがままジュリエットの入ったLPはまだ置いてなかったので、ひとつ前のアルバム「BOOWY」を借りた。あ~、この声、この声。それは布袋寅泰でなく氷室京介の声だった。とっかかりはヒムロックのファンになったということだ。ジャケットを見てイケメンなのでビックリした。
 
もちろん半月後に出た新しいアルバムも買った。「わがままジュリエット」も入っていた。来る日も来る日もBOOWY漬けになった。そのアルバムの全国ツアーにも行った。コンサート会場内の熱狂がハンパなく、湯気が立ち上っていた。チケットが取れたことが奇跡だった。
 
メンバーを乗せたらしきワゴン車が出てきたぞ! という声に猛ダッシュで追いすがったりもした。そんなこと後にも先にもその時だけだ。まさかの反射的行動である。
 
その後は更に不動の絶頂期を迎えていたBOOWY。バンド男子たちはこぞってBOOWYの曲を練習した。
 
それなのに。
 
別れは突然やってきた。ラジオでの出会いから1年10カ月後のクリスマスイブ。
 
NHKが速報で伝えた。BOOWY解散。
 
なんで??????
 
絶頂期に意味がわからない。惜しまれて引退とか、そんなレベルじゃない。
今日はエイプリルフールじゃないよ、クリスマスイブだよ?
 
それから私はまるで、大恋愛の真っ最中に、突然捨てられた女のように心にぽっかり穴があいてズタボロだった。毎日夢のなかを彷徨っているようにすさんで生きていた。
愛憎は裏腹だ。好きだったのと同じふり幅で憎しみになる。私はずっと腹が立っていた。何なんだよ! やり場のない怒りで精神状態の起伏が激しかった。
それは恋患いを通り越し、憤怒と憔悴の波間を漂っているようだった。
まだリスペクトではなく恋のような症状だ。
 
彼らの選んだ道を尊重できていなかった。
 
手軽に情報を得る手段もなく、しかも氷室京介がマスコミ嫌いでますます報道されることも少なく私はすり減っていった。
 
時が経ち、氷室は引退。布袋のライブには今でも行っている。会場に行くとこんなに嬉しいライブはない。その場のほぼ全員が自分と同じような気持ちの人ばかりなのだ。皆、長年のファンを通り越してリスペクトの人が多いのではと思う。実際に布袋はギターの世界では大御所である。
 
一時は腹を立てていた対象であるBOOWYへの気持ちがリスペクトなのでは、と思い始めたのは最近のことである。
 
ネイルで布袋のギターの柄を描いて欲しくて10歳下のネイリストさんに柄の写真を見せたが、知らないという。えーーー! と思ってしまったし、BOOWY絡みの会話を少しお付き合いしてくれたのだが、途中、吉川晃司もBOOWY ですか? という質問をしてきて、軽くイラッとした。世界的に有名な日本のギタリストにMIYAVIというイケメンがいるのだが、布袋は世界レベルで活躍していると言ったら「MIYAVIよりも?」と言われ、またイラッとくる。
 
歌番組でBOOWY特集をやっていて、色んな男性アーティストがメドレーでBOOWYの曲をカバーして歌っていた。途中までは楽しく聴いていたのだが、途中、あるアーティストが自分流に完全にアレンジして歌っていたのを見て、リスペクトのなさにガッカリした。
そのアーティストも元々好きだったのに、ちょっと嫌いになってしまった。本当に全くBOOWYに影響を受けていない人なんだろうなと思った。別にいいけど私にとっては良くない出来事だった。
 
布袋はよくMIYAVIとテレビに出たり、ライブでゲストに呼んでセッションをすることがあるが、MIYAVIは必ず去り際、布袋に対し「リスペクト!」と拍手を送って立ち去るのでその姿勢をリスペクトする。えらい!!
 
リスペクトは恋と違って4年で終わらない。そして、色んな場面で人生に絡んでくる。
 
傍目には理解できないだろうけれど、そんなにリスペクトが止まない対象があることを幸せに思う。知ったその時から彼らにはいつもハートを委ねてきた。もはや人生の一部になっている。自分の人生の一部を否定することなどあり得ないのだ。
 
BOOWYは四人グループだった。他の二人を交え、解散後に色んな組み合わせでの共演はあったのだが、氷室の引退までに布袋と氷室という組み合わせのセッションだけが一度も実現されることはなかった。
 
悲しかったけれどファンにとってはそれも彼らの選択でありリスペクトのひとつだ。
誰より当事者の二人がお互いにリスペクトがあったからこそ、そういう成り行きであり結末になったのだと私は思っている。
 
恋と同じでリスペクトも意図的にするものではない。
しかし、恋と違ってそこに落ちると永久に人生が豊かになる素敵で不思議な感情なのである。
 
 
 
 
***
 
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2021-04-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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