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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Atsu(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
じゃあ、よろしく。
はあ。
生徒は20名くらいだから。
はぁ。
カッコいい社会人の先輩の話をみんな楽しみにしているよ。
先生はそう言うと、ハッハッハと高笑いし、そのまま立ち去ってしまった。また厄介なことに巻き込まれたものだ。
 
新型コロナウイルスが小休止を見せた昨年秋頃、先生から大学のゼミで30分ほどの講義してほしいと持ちかけられた。テーマは自分のキャリアについて。例年よりも就職活動に係る業界研究やOBOG訪問の機会が少なかった学生への計らいである。
確かに今の大学生は我々の時代と比べ、かなり抑圧された環境下にいる。授業が全てWEB受講に変わったり、予定していた留学が取りやめになったり、第一希望の企業が新卒採用の募集を中止してしまったり。
サークル活動など友人との楽しい思い出を作れないばかりか、将来の夢や希望をあきらめざるを得ないといった話を耳にすると心が痛む。でも、先生。よりによって私じゃなくても。
 
ゼミには卒業後もOBOG会などにちょくちょく顔を出していた。先生とも個人的にメールでやり取りをするし、古参のOBとなりつつある。今回は学生の中に私の業界への志望者が多いということで白羽の矢が立ったらしい。
 
「何でこんな仕事やらなきゃいけないんだよ」
「あー、もう早く帰りたい」
社会人9年目の私はネガティヴワードを連発していた。採用面接で大見得きった理想とはかけ離れた発言。その度に口から何か大切なものが漏れていく気がする。
公の為の仕事。と言ったら格好がつくのかもしれない。だが現実は随分と生々しい。売り上げや実績至上主義ではないからこそ、人それぞれに正解が異なる。話す上司が変われば方針も変わり、その度に資料を作り直す毎日。そして、さらに上の上司が心変わりすれば、全てやり直しだ。非効率な業務の進め方に舌打ちをする毎日だ。
 
講義にはパワーポイントの作成を求められた。お題は以下のとおりだ。
・自己紹介
・自身のキャリアについて
・今の仕事を選んでよかったこと
・就職活動のアドバイス
 
相手は所詮学生だ。社会人らしい言葉を並べ立てれば良いのではないか。成長とか気づきとか。やっつけ仕事でパワポを終わらせていくと、最後の項目で手が止まった。
 
小説でもライティングゼミでも同様であるが、一度書き始めたものを放置するのは良くない。時が経つほどに課題が心に荷重となってのしかかり、画面を立ち上げることもままならなくなる。今回の講義のパワポもそうだった。気が付けば発表は明後日。先生の『かっこいい社会人の先輩の話を楽しみにしているよ』の声がちらつく。
 
一体、どのようなアドバイスができるのだろう。自分が就活の時ってどんなだったっけ? リーマンショックの影響があって、苦労している人もいたような。公務員に鞍替えした人もけっこういたような。当時の状況を何となく思い出すが、肝心な何故あそこまで現在の仕事にこだわっていたのか思い出せないまま本番の日を迎えた。
 
用意された教室は存外大きい。100名は入りそうな教室の前方に生徒が20名程度着席している。パワーポイントの投影準備をしていると学生からの視線を感じた。ピンマイクを持つ手が震える。発表の場に慣れていないことよりも内容に自信がないからだ。せめて声だけでも伝わるように大きく口を動かした。
 
発表後、懇親会兼質問の場が設けられた。着席し、面と向かって相対すると学生といえども二十歳を過ぎた大人だ。彼らの方が面接慣れしているせいか堂々と話してくる。
「公の仕事以外にも社会に貢献している仕事はたくさんあると思うんですが、なぜ今の仕事を選ばれたんですか? 」
「5年前に被災地に派遣されていますけど、なぜ行こうと思われたんですか? 」
率直な質問が次々に飛んでくる。最初はどぎまぎとしながら答えていたが、話しながら徐々に気持ちが乗ってくる。
「確かにどんな仕事でも社会の役に立つから存在しているとは思う。でも、本当に困っている人、不遇な人にもサービスができるって他にない仕事だと思ったから」
 
講義を終えて、2週間後、先生から生徒の書いた感想文が送られてきた。よく教育された生徒達は私の講義をほめそやしてくれていた。
「色々な制限がある中の就職活動で、モチベーションが低下していた時に今日のお話を聞けて良かったです。私も何を大切にして働きたいか、もう一度よく考えてみようと思います」
手紙を握りしめてもう一度考えてみる。何が大事って。
そういえば、自分が就職活動していた時に東日本大震災が起きた。あの時必死になって住民を守った町の職員の話を聞いて、民間就活をやめて公務員にしたのだった。
 
人は物を教えることで深く理解できるという。今回の就職活動のアドバイスとして講義をさせてもらい、欠落していた学生の頃のモチベーションを取り戻すきっかけになった。教える側が教えてもらった気がする。
 
 
 
 
***

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2021-04-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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