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あなたはどんな人になりたいですか


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:浦部光俊(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「どうしてそんな簡単なことができないの」
 
思うように進まない仕事、
部下たちに対する僕の口調は次第に強くなっていた。
詰問され委縮する部下たち。
ますます強くなる僕の口調。
 
今日はそれくらいにしておけ、
部長にたしなめられ、会社を出た。
 
確かに強く言い過ぎたかもしれない、
でも、仕事が終わっていない以上、
仕方ないじゃないか、
自分は間違っていない、
 
自分を納得させようとするが、
本当はわかっていた。
あんな言い方をすべきではない。
 
ショックだった。
自分はそんな風にならないと信じていた。
 
きつい言葉で怒鳴りつけたり、
人格を否定したり、
馬鹿にしたように笑ったり、
 
今までそんな人たちを何人も見てきた。
自分自身もそんな目にあってきた。
 
仕事が大切なのはわかる、
でも、何かが間違っている、
人として、もっと大切なものがあるんじゃないか。
 
そう信じてやってきたはずだった。
はずたったのに……
 
結局、自分も同じなのか。
 
仕事を進めるためには、
優しさなんていらない。
丁寧さなんていらない。
「人として」 なんてナイーブな考えは職場にはいらない。
結局、そういうことなのか。
 
自分が空っぽになった気がした。
いったい何を信じればいいのかわからなくなった。
 
答えを求め、飛び込んだ書店で出会った本、
それがThink Civility(シンク・シビリティ) だった。
 
「礼儀正しさ」 こそ最強の生存戦略である、
表紙の言葉を見たときのことだ。
「これかもしれない」
感覚的にそう思った。
 
仕事であろうと、プライベートであろうと、
みんなが気持ちよく過ごせるように、
人と人が関わるうえで守るべき最低限のマナー。
それが「礼儀正しさ」
 
職場での無礼な態度に嫌悪感を持ち続け、
そして、今日、自分の無礼な態度に幻滅した。
そんな僕が求めてきたものはこれだったんだ、
気持ちを言葉にしてもらった気がした。
 
ただ、なにをいまさら、そう冷めた自分がいるのも確かだった。
礼儀正しさの大切さなんて、幼いころからずっと教えられている。
みんな、わかっているはずなのに守られないのが現実じゃないか。
 
大事なのはわかるけれど、
目に見える成果が感じられない。
手で触れるようなリアリティがない。
だから、今は忙しいから、仕事を終わらせるのが最優先だからと、
後回しにされてしまう。
 
どうせ、この本だって同じかもしれない。
道徳の教科書のみたいなもの。
読んでいる分には楽しいし、納得もするけれど、
試験とは関係がない。
だから成長するにつれて、
現実に直面するにつれて、
忘れられていく、
どうせ、そんなもんでしょう。
 
半信半疑な気持ちを抱え、
僕はレジカウンターに向かっていた。
たとえ、きれいごとでもいい、
何かの救いを求めていたのかもしれない。
 
さあ、どんな素敵な言葉で僕を元気づけてくれるのか、
ページを開いてすぐに気づいた、
この本はそんな本じゃない。
 
涙を誘うような感動的なストーリーもなければ、
勇気をもらえるような言葉をかけてくれることもない。
 
そこにあるのは事実だった。
実験と考察を繰り返し、導き出された結論、
それが淡々と記載されている。
それは礼儀正しさに関する科学だった。
 
この本によると、
職場で誰かから無礼な態度を取られた時、
約半数の人が仕事にかける時間や手間を減らしている。
 
また、能力の高い人ほど、
無礼さを理由に職場を去る傾向が強い。
(普通の人に比べて、なんと13倍)
 
そして、従業員のストレス管理や、
新たな従業員の採用といったコストは、
アメリカ全体で年間約5千億ドル、
日本のGDPの約10%にものぼる。
 
今まで僕が感じてきた違和感はこういうことだったんだ。
数字を突き付けられて、腑に落ちた。
やっぱり無礼さというのは、
会社にとって実際に損害なのだ。
そして、今日の自分の態度を思った時、苦しくなった。
精神論じゃない、
僕は実際に会社に損害を与えていたのだ……
 
でも、一体どうしたらいいのだろう。
無礼さが損害なのは痛いほどよくわかった。
でも、僕たちは、目の前の忙しさや、
結果が最優先といった雰囲気に、
すぐに飲み込まれてしまう。
 
礼儀正しく生きるにはどうしたらいいのだろうか。
結局、行きつく先は、
道徳の教科書的な精神論になってしまうのか、
僕のそんな心配は無用だった。
 
紹介される手法は、
笑顔を絶やさない、成果を共有するといった、
どこかで聞いたことがあるようなもの。
ただ、それを薦める理由がすべて研究・調査に基づいているのだ。
 
例えば、ある調査によると、
人間が重視するのは有能さよりも「温かさ」
しかも、一度、「温かくない」と判定すると、
簡単にはその人を許さない。
 
そして、温かいかどうかの判定は、
その人の礼儀正しさと深く結びついている……
 
こう言われると、不機嫌な態度をとることが、
どれだけ自分にとって損なのか、よくわかる。
 
笑顔だって、成果の共有だって、
それが大切だとは、なんとなくわかっている。
そんな僕たちの「なんとなく」 を、
実際に調査して、重要性を証明する。
やはり、この本は最後の最後まで科学の本なんだな、
そう思いながら、たどり着いた最終章、
僕の考えはもう一度、ひっくり返された。
 
最終章、そのタイトルは、
「あなたはどんな人間になりたいですか」
 
たとえ何歳でも、
どんな環境にいたとしても
僕たちは礼儀正しさを高めるため、
努力することができる。
 
ただ、その道を選ぶのも選ばないのも僕次第。
どんな人間になりたいのか、
それを決めるのは僕の気持ち、
やっぱり、最後に大事なのは僕の心なのだ。
 
よし、もう一度、やってみよう、
礼儀正しい人間を目指してみよう、
そんな気持ちになった。
 
僕にだってきっとできる、
恐れる必要なんてない。
だって、僕にはThink Civilityがある。
科学的に証明された最強の武器がついている。
勇気をもらった。
 
Think Civility
精神論じゃない、
科学だけじゃない、
精神と科学の融合、
そんな最先端の本かもしれない、
なんて、決して言い過ぎではないはずだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-04-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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