負けず嫌いは空を飛ぶ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:まけきら子(ライティング・ゼミ 日曜コース)
何でこんな事になったんだっけか……
後悔と焦りの中、どうしようもない状況から逃避するかのように、たばこを吸いこみながらふと自分の40年間の人生を振り返ってみる。
あれはまだ私が勝ち負けなどあまりよくわかっていない幼稚園児だった頃。
私は友達と園内のブランコで遊んでいた。まだ幼くブランコの上に立つのが怖く、座って申し訳程度に揺れている私の横で、友達はブランコに立ち勢いよく漕いでいた。
グイグイと高く舞い上がっていく友達を、ただユラユラ揺れているだけの私は「空を飛んでいるみたいだな」なんて考えながら見ていた。
しばらく高く舞い上がり楽しそうにしている友達を見つめていた時、それは突然湧いてきた。
モヤモヤとした、それでいて燃えるような何かが自分の中に……
その瞬間、私はおもむろにブランコに立ち上がり漕ぎ始めた。グイグイグイグイと。
何かに取り憑かれたかのように、前だけを見つめ、ただひたすらブランコを漕ぎ続けた。
先ほどまであった怖いという感情はそこにはなかった。「友達より高く飛びたい!」
あるのはそれだけだった。
そして、ただただブランコをグイグイと漕ぎ続けた私は、ついに友達よりも高く舞い上がったのだ。今まで感じたことのないスピード感、頬に当たる風、近づく空。
まるで、空を飛んでいるような気分だった。隣からは、友達からの「すごい!」という賛辞の声。
「私、一番だ!」
そう思った瞬間、私は本当に空を飛んでいた。
次に覚えているのは痛む身体、頭からポタポタと流れる赤い血、先ほどまで私を賛辞していた友達の泣き声、先生達の慌てふためく声や怒鳴り声。
結果、そのまま病院へと運ばれ頭を縫う大怪我をした。もちろん、親からはこっぴどく怒られたのだった。しかし、私はひどく満足していた。「勝った!私は友達よりも高く舞い上がったんだ」と……
思えばその時から始まっていたのだ。私の「負けず嫌い」は。
そこからは、ありとあらゆる面で私は負けず嫌いを発揮してきた。だからといって、学力がNO.1になったとか何かで賞をとったとかそういうことはない。
大抵のところ、私の負けず嫌いは自分の興味がある所でしか発動しない。
「その負けず嫌いな性格をこういう所にいかせればね……」などという言葉をどれだけ聞いてきたことか。
もちろん、負けず嫌いが発動したからと言って全ての勝負に勝つわけでもない。
ただ自分がひたすら満足できるところまでやれば気が済む。
さらに、質が悪いことに負けず嫌いが発動した瞬間、後先のことは何も考えていないのだ。
だから、挑んだことを後悔することも少なくはない。
そして今だってそうだ。
空を飛んだあの日から数十年を経て、大人になった私へ、勤める会社の社長から届いた一通のメール
「天狼院書店のライティングゼミを受けてみないか?」
私は、事務員でありながら広報という仕事にとても興味があった。今までも広報の仕事をしています。と自信をもって言うには恥ずかしい程度ではあるがSNSの投稿やチラシ作りなど行ってきていた。
そんな中、広報経験者が入社してきた。趣味程度の経験や独学の私が敵うわけがない。でも、今までの頑張りを奪われたくもない。私は焦っていた。
そんな時に、送られてきたこのメールに飛びつかない訳がない。負けない為の武器を身に着けられるチャンスだ。
「もちろん受けます! 受けたいです」すぐさまメールを社長へと送り返した。
そう、発動したのだ。あいつが。私の中の負けず嫌いが。
社長からは「月に二回日曜の夜だし、課題提出もあるよ。それでもいい?」
再度確認のメールが送られてきた。しかし、負けず嫌いモードの私はそんなことおかまいなしだった。
「やれる! もちろんやります!」と……
日曜の夜、2時間程度の時間ならば空けられるし、課題もなんとかなるだろうと考えていたのだ。もしも、今タイムマシーンがあるならば、間違いなくあの時の私にビンタしにいくだろう。そしてこう言うだろう。
「天狼院書店のライティングゼミをまずググれ!」と。
言うまでもない、その後天狼院ライティングゼミをネット上で検索してまず目に飛び込んできたものは2000文字の課題を毎週提出するということ。さらには、受講者にはプロや小説家の人もいるということ。
2000文字の文章なんて、短大生の頃のレポートで書いて以来書いていない。
過去にブログを始めてみたこともあったが3日坊主で終わった。今や、SNS上でせいぜい200文字程度のものを書いているだけである。そんな私が、毎週2000文字の、さらには人が読めるような記事が書けるのだろうか? 大丈夫なのか? とんでもないことに挑んでない?
そんなことを思っても後の祭りだった。ふと、部屋のクローゼットの中に青いネコ型ロボットが潜んでいたりしないかと覗いてみたが、もちろんいない。タイムマシーンなんて存在しない。ましてや、あの時の私にビンタしたところで聞きはしなかっただろう。
私は自分のやっかいな性格を恨んだ。
案の定、今現在私は、差し迫る締め切りに焦り、PCと向き合っている。
ここまで来たらやるしかない。書ききるしかないのだ。タイムマシーンを作り出しあの頃の私を止めるという方法よりは遥かに現実的だ! やってやろうじゃないか。
それに私は見たのだ、「人生を変える」天狼院ライティングゼミという文字を……
「人生を変える」その言葉に惹かれたのだ。
変えてやろうじゃないか。人生。
そして、私はあの時高く舞がる為に、前だけを見てグイグイとブランコを漕いでいたように、この先にある未来にだけ目を向けコツコツと文章を書き続ける。
もう一度、空を飛ぶために……
***
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