回り道と思いきや、近道
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:いしはるま(ライティング・ゼミ 日曜コース)
「今日もあかんかった……」
布団に倒れこみ、敗北感とともに眠りの世界へ。文字通り、バタンキューというやつ。
かつての私の1日。
朝4時起床。ヨガをして、勉強や読書タイム。
その後、朝・昼・晩の3食を作り、子ども達の身支度を手伝い、ごはんを食べさせる。
自分は5分で半ば流し込むように朝ご飯を食べ、子どもを保育所へ連れて行く。
会社では、定時退社を目指し、時間と仕事に追われながら猛烈に働き、保育所の閉所時間ギリギリに滑り込み、一路我が家へ。
帰宅してからも、もうひと踏ん張り。
子ども達のお風呂に夕食、その後に後片付けや洗濯。
絵本を読んで寝かしつけ、ようやく母親の仕事も終了。
次の日に供え、重いからだを引きずりながらお風呂に入り、布団に倒れ込む。
倒れ込んで眠りにつくまでによぎる、自分へのダメ出しや未完了タスク。
敗北感につつまれ、眉間にしわを寄せたまま、眠りの世界へ。
当時の私の心はカラッカラに乾いていた。
周囲の人から見たら、家庭でも仕事でも頑張って両立していて、充実しているように見えていたようだけど。
実際はやってもやっても終わらないタスクに追われ、ヘトヘトだった。
その上、思い通りにいかない育児にイライラ。
「早くしなさい」や「何度言ったら分かるん⁉」と子ども達にガミガミと注意し、指令を出す鬼ババア化した自分に、日々幻滅。
ゆったりと子ども達の話を聞いてあげる、いつもやさしくて笑顔の母親になりたいのに。
私はヘトヘトなうえに、どうしていいか分からず、途方に暮れていた。
そんな時、ヨガの先生からかけられた言葉が、大きな転機となった。
「人を大切にするには、まずは自分を大切にすることよ」
まずは自分?
ものすごく回り道じゃない?
戸惑いつつ、でも「なんだか本当な気がする」という強烈な予感があり、私はそのアドバイスを実行することにした。
先ずは、自分の疲れを少しでも癒したいと、睡眠時間を1時間半増やしてみた。
これが効果てきめん!
頭がすっきりし、力がみなぎり、そしてイライラしにくくなった。
うれしい副産物は、体重が減ったこと。
イライラしにくくなったからか、夜のドカ食いが激減し、何もしていないのに2年間で6kg痩せた。
実は、産後太りは私の大きなストレスの原因のひとつだった。
ウォーキングやヨガ、食事制限など、色々なものにトライしていたが、中々体重は減らず、そんな自分が嫌で嫌で仕方がなかった。
細身のデニムも再びはけるようになり、鏡に映る自分の姿を見るのがうれしくなった。
気を良くした私は、さらに睡眠の質を上げるために、布団一式とパジャマも自分好みのものへ新調。
すると、寝るのが楽しみになり、寝室がパワースポットとなった。
さらに調子にのった私は、自分を大切にするには、好きなことをやるのが一番と、好きなことをリストアップ。
読書、ヨガ、料理、お風呂、ミルクティー、肌触りや香りの良いもの、新たなチャレンジ……。
自分を喜ばせることを意識しながらこれらをやることにした。
喜びにつながらないと思った時は、無理をせず、さっさと寝るようにした。
しかし、自分を大切にするプロジェクトを開始して3ヶ月が経過した頃、私は大きな壁にぶち当たった。
「罪悪感」だ。
家族のために使っていた時間を削って自分のために使うのって、やっぱり自分勝手じゃない?という気持ちがムクムクと湧いてきたのだ。
そこで思い切って夫に相談してみた。
夫の答えは、
「料理の品数が減ったり、家が少々汚くても、オレはお前が笑っているほうがいい」。
少々感動。
いや、かなり感動。そして、感謝(「早よ言うてよ!」という気持ちも少々あったが)。
私はプロジェクトをさらに進めるべく、家事を断捨離し、夫の家事分担を増やし、子ども達もゴミ出しや食後の後片付けをするようにした。
自分が家族を支えているという自負と我慢が、お互いに支え合うという思いやりと感謝へと変化していった。
せっせと自分を大切にし、自分に喜びを与える日々。
だんだんと世界がクリアに、明るく、潤いの満ちたものへと変わっていった。
そしてある日、鬼ババア化する回数が激減していることに気づいた。
彼らのやりたいことやペースを大切にし、ゆったりと温かく見守ることが少しずつできるようになっていたのだ。
子ども達ものびのびとし出し、自立心が少しずつ育っていった。
毎朝起こしていた息子が、自分で目覚ましの時間を工夫し、ひとりで起きてくるようになったり、娘もお出かけの準備が自分でスムーズにできるようになったり。
一番の驚きは、子ども達が私を大切にしてくれるようになったことだ。
私のやりたいことを応援してくれたり、たまの息抜きの外出を「楽しんできてね」と快く送り出してくれるようになった。
私の強烈な予感は当たっていた。
人を大切にするには、まずは自分を大切にすることなのだ。
しかも、人を大切にすると、自分も大切にされる。
回り道だなんて、とんでもない!
超絶、近道。
仕事、育児、介護や人間関係に疲れ、世界が薄暗くて、冷たく、乾いているように感じる時。
まずは、いつもより多目に寝たり、ゆったりとお茶やコーヒーを楽しむなど、自分を大切にしてみてはどうだろう。
リア充とか他人を意識するのではなく、とことん自分の心に従って。
うまく行かなくても、何も失わないし、誰も傷つかない。
一度、お試しあれ。
***
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