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だから落語が好き


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:光賀祥恵(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
「趣味は落語です」
自己紹介をするときにこう言うと、割と相手の反応が良いことが多い。若い人には、落語が趣味という人が少ないため興味を持ってもらいやすい。一方年配の方や経営者の方には、同じ趣味として受け入れてもらいやすい。しかし、決してウケを狙ってわざと選んだ趣味ではない。本当に好きすぎて聴くだけでは飽き足らず、お稽古事として習っていたのだ。あと10年早くハマっていたら、勢いで噺家に弟子入りしていたに違いない。
 
では、なぜそんなに落語が好きになってしまったのか。よくよく考えてみたら3つほど思い当たるところがあった。
 
まず1つ目は、噺の主人公に共感できる点だ。映画やドラマに出てくるような、ヒーローやヒロインは滅多に出てこない。おっちょこちょいな人、ケチで情けない人、ずる賢い人、威勢が良い兄貴分、真面目な職人、貧乏だけど明るく過ごす家族など、どこにでもいる人たちが主役で、自分に当てはまる部分も少なくない。噺の中では、そんな普通の人たちが、思い通りにならない泣き笑いの人生を懸命に生きている。そこに自身の姿を重ねると、良いときもそうじゃないときもあるよな、と気持ちが軽くなる。
 
2つ目は噺家の魅力だろう。初めて落語会へ行って驚いたことは、半ばおじいさんのはずの噺家の溢れんばかりの色気だった。普通の女性が束になってもかなわない。あの色気の正体は何だろうと観察して気付いたことは、徹底した清潔感と所作の美しさだ。どんな噺家も着物をきりっと着ている。多少着崩していても様になるように。襟や袖にシワや汚れは見受けられない。そして一つ一つの所作が見事に美しい。自然と揃えられた指先や流れるような目線、首の動かし方にしても、一朝一夕では身に付くものではない。日舞を嗜む師匠方が多いのも頷ける。
 
また、同じ噺でも演じる噺家が異なると、違う風景が見える味わい深さがある。古典落語なら大筋は同じだが、教わった師匠や本人の解釈などが混ざってきて、少しずつ違うオリジナル版が生まれていく。例えば『死神』という噺があるが、これに至ってはラストシーンが変わることがある。命の残量を表す蝋燭が消えると主人公が死んでしまうのだが、蝋燭の消し方が色々あるのだ。さらには死なないラストも一度だけ聴いた。なので、同じ噺を色々な噺家で聴き比べる楽しみが奥深い。
 
3つ目は、落語を習ってみたら楽しすぎたからだ。仲間ができて、苦手なことを少し克服できた。恥ずかしながら、私は人前で話しをすることが苦手だった。今でもさほど得意ではないが、多少はマシになったはず。落語を好きになって、自分でもやってみようと思ったことが突破口となったのだ。
 
寄席や落語会に通うようになり、仲間が欲しいなと思うようになった。しかし残念ながら身近に同じ趣味の人はいない。寄席などで、見ず知らずの人に話しかける勇気も無い。考えあぐねていたとき、贔屓の師匠が素人相手に落語塾をやっていることを知った。「それだ!」とひらめいた。そこに集まる人はみんな落語が好きなはずだから、きっと面白さを分かち合えるはず。誰一人知り合いのいない場所へ飛び込むのにビビっていたが、ありったけの勇気を振り絞った当時の自分を褒めてあげたい。
 
習い始めてみたら年配の方が確かに多いが、同い年や年下の人も結構いて嬉しかった。男女比も半々くらいでちょうどいい。そして塾生同士は仲が良く、割と遠慮がない。あるおじいちゃんから「まだ結婚しないの?」、「彼氏いないの?」と、会社ではまず聞かれない直球の質問をされたことに笑ってしまった。彼らから見たら当時の自分は孫くらいの年齢で、純粋な質問に悪意はこれっぽっちも感じなかったからだ。このご時世、そう聞かれることが新鮮で、気にかけてくれているところがむしろ有難かった。
 
そして日々楽しくお稽古をしているとやってくるのは発表会だ。普段の塾生に聴いてもらうお稽古ですらしどろもどろで冷汗が止まらないというのに、100人くらいのお客さんがくる発表会に出ることになった。師匠から、「お稽古でできないことが本番でできることはない」と言われ、仕事以外の隙間時間は全部お稽古に費やした。電車移動の間だけでなく、帰り道2つ手前で降りてブツブツしながら歩いたり、寝る前にも復習した。
 
それでも、当日は緊張した。手汗が止まらなかった。仲間から「大丈夫、口が覚えているよ」と励まされ、舞台に飛び出た。終わってみると舞台での記憶がほとんど無い。2回目、3回目の発表会になってから、やっと観客席を眺める余裕が出てきた。とはいえ、緊張する癖は直らない。なので、緊張するのは仕方ないと割り切ることにした。その代わり、これだけ準備したから大丈夫と自信をもてるくらい、入念な準備(稽古)を欠かさない。すると、前より人前で話すことが怖くなくなった。これは大きな進歩だ。
 
さて、私に多くの仲間や楽しみをもたらしてくれた落語だが、先日の緊急事態宣言を受けて寄席も休業……しないことになった! 「寄席は社会生活の維持に必要なもの」として都内4か所の定席は開けるという。様々な意見があると思うが、私は英断だと思う。行き詰ってしんどくなったら、万全の対策をして落語の世界に身をゆだねてみてほしい。
 
 
 
 
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2021-05-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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