メディアグランプリ

当事者から見る多様性受容社会


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記事:佐藤早織(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
事務処理ができない。同じミスを繰り返す。忘れ物をする。―――。一方で、営業成績は常に上位で、リピーター顧客から直接指名されることもしばしば。傍から見れば得意でやりたい仕事に本気を出し、やりたくない苦手な仕事はサボる怠け者。実際には、本人はいたって真面目で苦手なことを克服するために努力を重ねるものの、改善の兆しはない。私はかつて、そんな得意不得意の凹凸激しい職場のトラブルメーカーだった。
そんな私は昨年から、発達障害をオープンにして働き始めた。得意な仕事は人並み以上にこなし、苦手な仕事は断らないが、『時間をかけてゆっくり正確に』させてもらうことを会社に『お願い』し、受け入れられている。そこそこの収入があり、結婚もしている。読書とアニメと喫茶店を愛する余裕もある。
これは、発達障害者としてはかなり恵まれている方だ。私も過去には職場に受け入れられず、転職も貧困も経験したことがある。今、私は世の中で数少ない幸運を掴んでいるのだと、現状をとてもありがたく思っている。そして、この幸運が今後私だけでなく、世の中の『当たり前』になってほしいと切実に思っている。『障害者雇用=特別にかわいそうな人を助ける』では障害者雇用の目的の本質を理解していないと感じるからだ。実際雇われている身としては、『かわいそう』と思われることはまっぴらごめんである。得意なことなら誰よりも利益を上げられる私は、一人の社会人として会社の利益に貢献している自負もある。何なら、障害者雇用で働く私は永く持続可能な社会に貢献していて少し未来を生きている、くらいに思っている。私にとって多様性社会やダイバーシティマネジメントはクレバーでかっこいい価値観に基づいていて、今後、企業から個人まで当たり前に求められるものなのだ。
 
それは、マイノリティを受け入れる余裕のある社会は、誰もが生きやすい社会だからだ。私は、それはなんだかとても心躍る、悪くない未来を作っていけるものではないかと感じている。そして障がい者と健常者、誰もが生きやすい社会こそ、永く持続可能な社会ではないかと思う。例えば職場で誰かが病休や育休を取るとき、家族の看護や介護が必要なとき、配慮を申し出やすい職場の方が良い。そしてそんな職場には優秀な人材が集まるのは言うまでもない。当然、優秀な人材は企業を成長させ、継続させることができる。
 
そしてもうひとつ、肌で感じている理由がある。例えば、地球上でトラとウサギ、どちらが強い生き物かと聞かれたら多くの人はトラだと答えるだろうけれど、実はそうとも限らない。地球上で現存しているトラは亜種も含めて六種、一方でウサギは認められているものだけで四十九種、今日のコロナ禍のようなパンデミックに見舞われた際、多種多様なウサギの方が絶滅を免れる可能性は高い。同じように多様性を受容することは企業として、そして社会としての生存戦略であって、福祉とは別の領域のものだ。予測がつかない今日を生きている私たちにとって、同じ価値観の人間だけで集まって異邦人を排除するような社会はとてもリスキーなのだ。誰かの障害特性と言われていたものが、未来を救うアイデアになる。そんなパラダイムシフトが霧の中の一歩先にあってもおかしくない、私たちはそんな変化の時代を生きている。
 
とはいえ、多様性社会をダイバーシティマネジメントをクレバーでかっこいいものと言い切ってしまうには問題は山積みだ。協調性と同質性を重んじてきたこの国の社会ならなおさらだろう。SDGsが定着してきた今日、それをアピールに利用するばかりで形骸化を指摘する批判や目標雇用率を数値化することのへの批判も目にするようになった。だがしかし、当事者としてはひとりでも多くの理解者や雇用を増やすことが先決ではないかと、つい思ってしまう。自分の抱える生きづらさが理解されるなら、たとえアピールでもなんでも大いに結構だと思い詰めるくらいには、切実な毎日を生きている人たちがまだたくさんいる。施策の内容を充実させるに越したことはないけれど、残念ながら今日の社会はそのフェーズにないし、随分手を尽くして待ってはみたもののおそらくその日は来ない。だとしたら、目標雇用率等の数字を先に走らせてしまうのも、やむを得ないと思うのだ。
 
2019年から2021年にかけて、自身の軸にあった価値観が崩れるような想いをした人も多いのではないだろうか。従来の価値観では太刀打ちできなくなってきた今日、日ごろからしなやかに多様性を受容してきた人や組織と、何よりもひとつの価値観に重きを置いてきた人や組織にはどんな差があっただろうか。今後、さらなる変化の時を目の前にして、私自身は新たな価値観にシフトしていきたいと思う。
 
 
 
 
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2021-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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