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メディアグランプリ

どんなにつまらない仕事が来ても大丈夫という自信


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:中安 さつき(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
年下の従妹から、「いい大学を出たのにね」と言われてしまった。
 
これは、私が新卒で秘書室に配属された時のことだ。
 
会社によって秘書に求められる役割は異なるのだろうが、当時勤めていた会社では、スケジュール調整、書類の返却(役員から指示があれば伝える)、お客様の対応(お迎えやお茶出し)といった業務が中心だった。
 
書いてしまえば、つまらない業務だ。
営業、財務、研究開発などの仕事をしている同期たちを見ながら、これが仕事なのだろうか、と疑問に思っていた。
 
メモに書いた一文が真っすぐでなければ書き直し、書類の端が完璧に揃っていなければホチキス止め直し、ストッキングは必須、但し柄物や分厚いタイツはNG、などなど、業務上も生活上も、他部署ではまったく気にもされていないようなことが禁止されていた。
 
また、できて当たり前で褒められることもなく、できなければ叱られる。減点法の世界でもあった。
 
仕事に疑問を感じた。とはいえ、自分はまだ新入社員だ。
ペン一本、どこのキャビネットにあるのか、右も左も分からないところからのスタートだ。それなのに、「仕事とはこういうものだ」などと、勝手な思い込みをして、目の前の仕事を否定してはいけない。だから、真面目にやった。
 
そんな中、ある日大きなミスをしでかした。社長が秘書部長を呼び出すような事件だ。
 
お茶を出す順番を間違えてしまったのだ。
 
幸い、間違えたのはお客様へのお茶出しの順序ではなく、社内の順序だった。お客様にお茶を出した後、会長より先に、社長の前にお茶を置いてしまった。
机にお茶を置いた瞬間に、背筋が凍った。「しまった!」
しかし、一度置いたお茶を、またトレイに戻すのはおかしい。ましてや、バーテンダーよろしく、机の上でお茶をすべらせて、会長の前まで送るわけにもいかない。
 
秘書室に戻ってから、会長担当と社長担当の先輩にミスを謝った。
「もぅ、いりちゃん(当時の私のあだ名)ったら、指導のしようがないミスをしないでよ」と、軽く言ってくれた。
 
その後、社長室から戻った秘書部長に叱られながら、「後に出されてしまった会長よりも、先に出されてしまった社長の方が気にするものなのだ」と、呑気なことを思っていた。
 
正直に言おう。
はっきりいって、くだらない、と思った。
お客様側ではなく、社内での間違いだ。
自分のミスを棚に上げて、そう思った。
 
当時の私と同じように、そんなことで叱られるのか、と思われる方も多いかもしれない。
 
しかし、叱られたのは事実だ。つまり、実際にそれを気にする人がいるのだ。
しかも、気にしているのは、先に出されるはずの会長ではなく、間違って先に出されてしまった社長だ。だから社長は自分自身のことではなく、会長のことを気にかけていたのだと思う。
 
会長が実際にどう思っていたのかは分からない。
断っておくが、会長も社長も、偉そうな態度を取ったりするような方ではなかった。だから、会長も、気にしてもいなかったかもしれない。
 
しかし、社長は会長のことを気遣っているのだ、と考えたときに反省した。
 
お茶を出す順番も、メモを真っすぐ書くことも、書類の端を完璧にそろえてホチキス止めすることも、無地のストッキングでなければいけないことも、人によっては「そんなこと、どうでもいいよ」と思うことかもしれない。そもそも考えたこともない、という人もいるかもしれない。
しかし、気にする人がいるのだ。不快に思う人もいるのだ。それが事実だ。
 
これらのことは、やろうと思えば、誰にでもできることだ。自分のお茶出し事件のように、間違えてしまうことはあるかもしれないけれど、難しいことではない。
それなら、少しでも気分よく、少なくとも気分を悪くすることなく、仕事をしてもらえる方がよいに決まっている。
 
急にスイッチが入った。
「見てろ!」
誰に向かってかは分からないが、そう思った。
 
そこからは目を皿にして、重箱の隅をつつくように、やれることを探した。
人が「くだらない」と思うようなことほど、「こんなことまで気付けた!」とテンションが上がった。
 
入社数か月間は「早く異動したい」と思っていたのだが、スイッチオン以降は、そんなことを考えることもなくなった。
 
秘書室にいた4年間に、秘書室の業務内容が変わったわけではない。冒頭に書いたように、スケジュール調整、書類の返却、お客様の対応といった業務だ。
しかし、やることは変わらないのに、自分の意識が変わった瞬間に、世界は全く異なるものになった。日常は変わらないのに、楽しくなった。やりがいも持てた。モチベーションも上がった。
 
自分のせいで部長が社長に怒られてしまう、という経験をしたという方もいるかもしれないが、その理由がお茶出しの順番ということは、なかなか珍しいのではないだろうか。
 
今思い出しても、やっぱり「くだらない」とは思う。しかし、あまりにくだらないと思ったからこそ、そんなことを気にする人もいるのだ、という衝撃を受け、なぜ気にするのか、を考えることにもなった。それが自分のスイッチを入れるきっかけになった。
 
この経験を、新入社員当時にできたことは、非常に大きかった。
 
その後、つまらないとか、楽しくないとか、嫌だなと思うような仕事に当たってしまった時にも、「自分の視点の問題かもしれない」と考えられるようになったのだ。「どこかにやりがいがあるのではないか」と思って探していると、何かしら見つかるものだ。
 
だから、この先、どんなにつまらない業務に当たっても大丈夫、という自信がある。おかしな自信かもしれないが、持っているにこしたことはない自信ではないだろうか。
 
だから、もし今、自分の仕事が「くだらない」と思っている方がいたら、チャンスかもしれない。「どこかにやりがいがあるのではないか」。一度その視点を持ってみてほしい。もし、小さなものでも見つけることができたなら、この先、どんなにつまらない業務が来ても、大丈夫、かもしれない。
 
 
 
 
***

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2021-05-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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