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家族構成の変化が、熟年夫婦にもたらしたもの


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記事:今村真緒(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
娘が4月に巣立ち、我が家は夫と私(それにワンコ1匹)という家族構成になった。
子どもが成長して家を出てしまったのは、正直寂しい。けれどもその反面、今までどれだけ子どものことに、心と時間を費やしていたかということに気づかされた。
まず、遅刻しないように朝起こさなくてもいい。
毎日必須だったお弁当を作らなくてもいい。
電車に間に合うように、駅までの送迎をしなくてもいい。
娘が、つつがなく生活できるよう、常に心を砕かなくてもいい。
少々過保護であったことは否めないが、そういったことを考えなくても済むようになると、途端に時間がゆったりと流れ始めた。
長年の肩の荷がおりたというか、憑き物が落ちたような気がする。
 
現在、私は40代後半だ。
人生100年時代というならば、そろそろ折り返し地点だ。娘が生まれてからというもの、仕事や家事、育児に奔走してきた。そして、あっという間に18年間が過ぎ去った。
長いようで短かったその期間は、私の人生において代えがたい時間であったとともに、がむしゃらにならざるを得ないものでもあった。
 
あとの半分の生涯を、いかに過ごしていくか。それが、今後の私が見つけていくテーマでもある。
子どもに手がかからなくなり、2年前から、働き方もパートにシフトチェンジした。自分と向き合う時間が、いやがおうでも増えてきた。
 
ようやく、人生の第2章の始まりだ。
しかし、余りにも子ども中心の生活を送ってきた弊害が、このところ目に付くようになった。
それは、夫との距離感である。
 
子どもが巣立ったことを知れば、周りの人たちは茶化して「新婚生活に逆戻りだね」なんてことを言うけれど、結婚して約20年が過ぎた今、「そうだね。ラブラブで過ごせるね」なんて、とても言えるものではない。
 
私と同じく、娘中心の生活だった夫だ。
喜々として、娘の塾の送迎を率先して行い、娘が好きなお菓子やアイスを、定期的に補充していたのも夫だ。娘の喜ぶ顔が何よりの癒しだった夫は、私と同じように、心に寂しいものを抱えているのは確かだ。
 
娘が旅立つときに、私たち夫婦に手紙をくれた。
一人娘の宿命で、重すぎる愛情に雁字搦めになったような思いをしたこともあるだろう。
けれど、自分が家から離れることで、私たち夫婦に及ぼす影響というのはよく分かっていたようだ。
「私がいなくても、二人が健康で、楽しく暮らすこと」
それが、巣立っていく娘の願いだった。
 
今までは、常に娘が私たち二人の間にいた。娘の存在で、私たちの会話が成り立っていた。今はそれが、ワンコに取って代わったけれど、娘の穴を埋めるのは容易ではない。
 
娘は、歌やダンスが大好きだ。家にいるときは、何か歌を口ずさみ、アーティストのダンスを真似して踊ったりしていた。
しかも、勉強するとき以外はずっと居間にいたから、しょっちゅう私と会話をしていた。
だから娘がいなくなった後、この音が消えた家の中で、どう生活してよいものか戸惑った。
 
夫は、元々口数が少ない。面白いもの、楽しいことは大好きだが、自分からじゃんじゃん話す方ではない。
テレビを点けていないと、活気がない。ユーチューブで音楽を流していないと、静かすぎる。
しーんとした部屋の中で、冷蔵庫が稼働している超音波のような音が響くのみだ。
 
改めて、夫と話す内容が少ないことに驚いた。
お互い口を開けば、娘が東京でどうしているかということや、ワンコの話のみだ。
共通の趣味もないから、一緒に盛り上がることもできない。
 
しかし、面と向かっては言えないが、私は夫のことを尊敬している。ちょっと頑固なところはあるけれど、いつも娘や私のことを考えて行動してくれる姿勢には頭が下がる。
今までも、夫がいたから安心できたことは多かった。
心を病んだ時も、長い年月の不妊治療が結局は実らなかったときも、難病が発覚したときも、ガンになったときも、そして今回娘が巣立った時も、多くは語らないが、いつも傍らにいてくれた。
好みもあまり一致することはないけれど、病気ばかりする私の体調を、常に気遣ってくれているのは分かっている。
 
これから、あと何年一緒に過ごすことができるのかと考えたら、娘が願うように、できるだけ楽しく暮らすべきだと思った。
 
先日から、夫の帰りが早いときや休日には、今まで一人で行っていたワンコの散歩をできるだけ一緒に行くようにした。そうすると、散歩中に一緒に見たものや、起こった出来事も共通のものになり話題が増える。
 
以前から家族で観ていた韓国ドラマも、面白そうなDVDをレンタルして観ている。特に、歴史ドラマは長いものが多く、今からどんな展開になるのか、どういう結末になるのかということを話しながら観るもの楽しいものだ。私が薦めるものを観ることが多いが、たまには一緒にレンタルショップに行って、次に一緒に観たいものをチェックしたりもする。
 
こんなご時世だから、あまり外出はできないが、家で楽しめることをお互いに考えるようになり、今までは何となく流していたことを、より相手と結び付けて考えるようになったように思う。
 
家族構成の変化は、私たち夫婦の関係を再構築する機会となった。今までの枠組みを取り払い、その時に応じた関係性を作っていく。20年以上連れ添ってはいるけれど、その中でお互いに知らなかったことも、まだまだありそうだ。
 
とりあえず、今度娘が帰省してきたときには、両親が楽しく暮らしている姿を見てもらおうと密かに決めている。
 
 
 
 
***
 
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2021-05-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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