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落合博満の人材育成方法


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名前:篁五郎(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
21世紀の日本プロ野球においてトップクラスの結果を残した落合博満。中日ドラゴンズの監督として8年間で優勝4回、残りはすべてAクラスという成績を残した。
 
落合と言えば、現役時代にも3度の三冠王(打率・打点・ホームランがすべてリーグトップの成績)を獲得し、史上最高の右打者といった呼び声があるほど(王貞治とイチローは左打ち)。
 
その一方で、落合は扱いにくい人間と思われていた。シーズンが始まれば、マスコミに状態の仕上がりを聞かれても「まだまだ」と素っ気ない一言だけで終わり。練習している姿を一切見せない記者泣かせの選手だった。
 
しかもチームメイトにも全体練習で身体を動かしている姿を見せない。そんな落合はいつの間にか「練習しない選手」というレッテルが貼られるようになった。現・中日ドラゴンズの監督である与田剛も中日に入団した年に先輩選手から「落合は練習しないから」と聞かされていたという。与田もそうなのかと信じていた。
 
トレーナー室でマッサージを受けている落合の足を見たときに驚愕したという。
 
「この足は練習していない人の足じゃない。相当な練習をしているはずだ」
 
実際に与田は落合が監督のときにその話をしたら落合はこう返事を返した。
 
「そりゃあ、練習しないと上手くならないもん。見えないところでやっていただけ」
 
当たり前の話である。練習しないで3度の三冠王を取れるほどプロの世界は甘くない。落合はたゆまぬ努力を積み重ねて結果を残したのである。
 
その落合が、2003年に中日の監督としてドラゴンズに復帰をしたときに言った一言は選手のモチベーションをアップさせた。
 
「1年間、補強は一切しません。今いる選手だけで優勝できます」
 
その年、中日は2位でシーズンを終えたものの優勝した阪神とは14ゲームも引き離されて完敗の状態であった。監督だった山田久志はシーズン途中で解任とチームの内部は崩壊していた。そんな中でやってきた落合の一言を選手は信じられなかった。
 
先発投手の一角を担っていた山本昌は「落合さん、本当なの?」と疑問符を持っていたという。
 
しかし、次に出てきた言葉で選手の目の色は変わった。
 
「前の監督と俺の野球観は違う。どうせダメなら俺に見せてくれよ。見せて欲しいから誰もクビにはしない。だから安心して1年間は野球をやれ」
 
なんと、選手をドラフトで新たに指名した選手以外にまったく補強をしなかったのだ。通常であれば自軍が優勝するために足りない部分を外国人やフリーエージェントで補って優勝を狙う。それが一番手っ取り早い。常に優勝を義務づけられている読売ジャイアンツがその典型例だ。
 
しかし、落合は野球界の常識の真逆をやったのだ。その代わりに練習は徹底してやらせた。キャンプに入れば、朝8時半から夕方17時半までが全体の練習時間。それから個人の練習時間がスタートする。
 
選手のいいところを10%伸ばして優勝する。
 
その言葉を実現させるために練習だけではサボらせずにやらせた。
 
「得意なところだけ伸ばせば一軍の残れるのか。だったら足を磨こう」
 
そう思って練習に取り組んだのが荒木雅博である。荒木は昨シーズンの終盤、2塁のレギュラーを獲得したが、打撃が悪くて今シーズンもレギュラーで出場できるか微妙な立場にいた。
 
しかし、落合の長所を伸ばせという言葉を信じて愚直に練習に励んだ。1時間でも2時間でもノックを受け続けて守備と足、そして自分の身体を鍛え抜く。落合のノックは現役時代からばっとコントロールが巧みだったため非常に上手い。捕れるか捕れないかギリギリのラインに向かって打って選手の身体をとことんまで動かしていた。あまりのきつさに逃げ出す選手ばかりだったが、荒木と井端弘和、森野将彦の3人は値を上げずに最後までついていった。
 
そして、その3名が落合中日の中心選手として活躍をする。荒木と井端は「アライバ」と呼ばれて二塁とショートのレギュラーとして鉄壁の守備を誇り、6年連続ゴールデングラブ賞を獲得。森野は3塁、レフト、センターとめまぐるしくポジションが変えても打線の中軸として結果を残し続けた。
 
そうして常勝チームを作った落合が監督を退任後に部下の育て方について語っている。
 
「レギュラー取っている練習は、若手を押しのけても練習をするの。暗くなって周りが見えなくなるまで自分が練習する。人に練習時間やりたくないんだ。なんでか? 人に練習時間やったら自分のレギュラーの地位が危うくなるから。これだけ苦労して自分の地位を築いてきたのに「なんでこいつらにレギュラー取られなきゃいけないの」という欲が出てくる。
 
役職にしても何にしても、そういう人達が自分で考えて「俺はここから絶対に落ちてはいけないんだ」と思って、だから今、何をすべきかを考える。やっとそこに到達してから物事を考えられる。だって皆さん落としたくないでしょ? 今の地位を。そう思ったら寝る間も惜しんで勉強するでしょう。それで成長していく」
 
中日ドラゴンズの監督時代は選手が練習しやすいように一度に13人投げられるようにキャンプ場のブルペンを改造し、二つの野球場と陸上競技場を借りた。キャンプの前には部門ごとのコーチを全員集めてひとりひとりの選手の育成方針を一本化して選手が混乱しないように努めた。そして居残りしている選手がいたら必ずコーチが最後まで見ているように命じた。
 
育てる環境を用意してキャンプに臨んでいたのだ。それに付いてこられない選手には容赦なくユニフォームを脱がせた。
 
選手の落合評は「優しいけど厳しい」であった。その言葉は最後までとことん付き合ってくれるけど諦めた人には容赦なかったという意味である。
 
 
 
 
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2021-05-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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