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好きなものを「好き」と言う勇気


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:田辺なつほ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私には好きなものがたくさんある。小説を読むこと、ドラマを見ること、漫画を読むこと、音楽フェスに行くこと。美味しいものを食べること、友達とくだらない話をすること、などなど。
 
私にとって好きなものは、私を支える柱だ。辛いことがあっても同じ境遇のドラマを見れば元気になるし、次に友達と会う時の話のネタだ! と思えばそれだけで乗り越えられたりする。書店に行って、まだまだ読みたい本がたくさんあるだけで私は明日も生きていける。私は今日も好きなものに支えられて生きている。好きなものを抱いて生きている。
 
だけど、私には昔から一つ悩みがある。
それは、自分の好きなものを「好き」と言うのがかなり苦手なことだ。
 
冒頭で好きなものを挙げたのに、苦手? と思われるかもしれないけど、かなり苦手。
どういうことかというと、「好き=なんでも網羅していなければいけない、深く知っていなければいけない」ように感じていて、怯んでしまうのが原因だ。
つまりは、自分が持ってる「好き」の定義が「専門家でなければいけない」になってしまっているせいだ。これには、私の完璧主義でありたい、という性格が影響している。完璧主義でありたいがゆえに、「好き」に対してもストイックになってしまっている。完全に自分のせいだ。
 
例えば、私の好きな「小説を読むこと」についても好きな作家さんがいたらその人の作品を隅から隅まで読んでいたほうが「好き」に見合っているし、話題になった本を読破していたら「好き」の定義を満たしている。なんでも知っている、聞いたときにすぐに答えが返ってくる状態が「好き」な状態なんだ、と私は思っている。思ってしまっている。
 
そうすると、私が冒頭で挙げた「小説を読むことが好き」、というのは私の定義を満たしていない。
私の小説の選び方はかなり雑で、作家さんというよりは、タイトルが気になった本を読む。表紙が私の好きな青色だと読む。ミーハーらしく帯に「〇〇大賞受賞」とあっても読む。
加えて、小説の読み方もかなり雑で、最初からちゃんと読むこともあれば、途中で辞めて違う小説に手を出すこともある。気になったときは先にラスト一行を読んで満足することもある。最悪、ネットのネタバレを読むこともある。
 
私は「小説が好き」と言える専門家じゃない。私、全然、ちゃんと読んでないです、すみません、という気持ちに勝手になってしまう。さらには、雑な選び方や読み方をしている自分に、勝手に悲しくなってしまう。こんなやり方の私が「小説読むことが好き」とか言っちゃっていいのかな、と勝手な罪悪感を作り上げてしまうのだ。自分の「好き」の深度が浅いような気がして、びくびくしてしまう。
 
だから、私は私のせいで「好き」と言うことが苦手だ。なんとも自分勝手な理由で苦手になっている。自分が持つ定義を満たしていないから、胸を張って「好き」と言うことができない。専門家だけが「好き」と言うことを許されている、と私はずっと思っていた。
 
だけど、先日あるテレビ番組を見て、この定義はわたし自身を苦しめていることに気がついた。そのテレビ番組は、アメトーーク! だ。
普段、“笑わせること”を仕事にしている芸人さんたちが、仕事を超えて自分の好きなものを語り合う。ただただ「これが好きなんです!」と、同じものを好きな6、7人がプレゼンし合うトーク番組。
 
私が見ていたのは漫画大好き芸人の回だった。番組の中で、私も読んでいる漫画の面白さを芸人さんたちが話していれば、いつものように「わかる!」と思わずテレビ前で声に出しながら見ていた。
そして、「今一番おすすめしたい漫画」をそれぞれ一人一作品紹介するコーナーが始まった。
紹介される漫画たちは、ジャンルもバラバラ、完結している漫画もあれば、まだ1巻が出たばかりの漫画、賞を受賞した漫画と様々だった。芸人さんたちが自分の「好き」を全力でみんなに紹介していた。そのときに「実はこの漫画を紹介するのは、勇気がいりました。みんなが好きな王道ものとは違うので。さらに作者のことも、作品のこともまだ全然知らなくて」というトークをしていた。
 
その時に私は、「そりゃそうだよなあ」と妙に納得したのだ。
「この漫画を紹介するのは、勇気がいりました」という言葉は、「好き」と言うのが苦手な私の気持ちそのものだった。私に必要なのは、専門家でなくても好きなものを「好き」だと言う勇気が足りなかったんだなあ、と思った。
みんなが知っているものとは違う、王道のやり方とは違う。測ることもできない深度を勝手に測って、私の好きは多分浅いだろうなあ、と思っていた。怖がっていた。専門的でないといけないと思っていた。
 
だけど、そんなこと全くない。好きなものをどれだけ好きかとか、好きなものをどれだけ知っているか、なんて誰も知ったこっちゃないのだ。自分が抱えられる「好き」の範囲を持っていればそれでいいのだ。あとはそれを「好き」という言葉にする勇気が必要なのだ。
 
好きなものを「好き」と言うことは、お弁当のおかずを交換することに似ている。
小学生の遠足で、パカッと開けた私のお弁当箱には唐揚げ、卵焼き、ちくわチーズが入っている。私が好きなお弁当のおかずたち。
目の前でパカッと開けた友達のお弁当箱には卵焼き、焼鮭、ウインナーが入っている。友達が好きなお弁当のおかずたち。
私は、「卵焼き交換しようよ!私の家の卵焼き美味しいから食べてみてよ!」と言っていた。
 
交換するけれど、私の家の卵焼きを友達が好きになってくれる可能性は未知数だ。
だけど、私たちは卵焼きを交換する。なぜなら、私は友達の卵焼きを味わいたいし、友達に私の卵焼きを味わってほしいから。そうして結局、「美味しいね」と私たちは笑いあった。
 
交換した卵焼き。友達の家の卵焼きはだしがきいて、巻く回数が多いのか厚かった。私の家の卵焼きは甘くて、薄かった。
好きなものが同じであったとしても、それぞれ味が違う。卵焼きの味がそうであるように、同じものでも好きなポイントが違う。さらには、巻き加減が違うように、好きの深度だって同じなわけじゃない。そして、お弁当の他のおかずのように、他に好きなものも違う。
 
「好き」と言うことは、私の好きな味を知ってもらうことで、相手の「好き」を聞くことは、相手の好きな味を知ることだ。そこにどれだけ知っているかなんて知識量はいらない。
好きなものはバラバラでいいし、だから人の「好き」を知ったときに、こんな味もあったのか、私この味好きだな、と知ることができる。私は勝手に、「好き」と言うハードルを高くしていた。お弁当の卵焼きはあんなに簡単に交換できたのに。
 
だから、好きなものは「好きだ」とちゃんと言おう。王道じゃなくても、ミーハーだったとしてもそれは私の好きなもので、その味を知っているのは私しかいないから。
勇気を出して「好き」と言っていれば、いつか、同じ味に巡り合って、アメトーーク! で感じる「わかる!」をテレビ越しじゃなくて、目の前にいるあなたと分かち合えるかもしれない。
 
 
 
 
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2021-05-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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