死を恐れたおじいさんが最後に見たもの
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記事:yokoyan(ライティング・ゼミ日曜コース)
あるドラマのワンシーン。
女の人が「あなたは私と結婚する気がないの?」と言った。
男の人は「別に今のままでも楽しいし、結婚するメリットがわからない」と答えた。
「なるほど」と私は思う。
メリットがわからないというのは言い過ぎにしても、私は男の人に共感していた。
特に結婚したいという意思のない私は、「結婚したい」とか「子供がほしい」とか言っている人の気持ちが全然わからなかった。
人生をゲームに例えるとするなら、結婚というのは「ゲームクリアの王道パターン」のようなものだと思っていた。
人生というゲームをプレイする上で、だいたいの人はその道を選ぶ。
その道に乗っかることができればほぼ勝ったようなもの、と多くの人は思う。
そして、その道を選ぶことが一般的には普通だと思われている。
実際、結婚適齢期である私は、親族から期待の言葉を度々かけられる。
「いつごろ結婚できそうか?」
「死ぬまでには結婚式が見たいなあ」
「楽しみにしてるよ」
ああ、いやだなあ。
それが当たり前であるかのように言わないでくれ。
そんなに意思がないのだ。私には。
私は一人でいてもそれほど寂しいと思わないし、むしろひとりが楽。
家庭を築きたいという欲求は全くないし、そもそも子供があまり好きではない。
普通でない生き方を選択したって、いいじゃないか。
でも、これは世間の常識に逆らう生き方なのか。
先日、「コンビニ人間」という本を読んだとき、「日本はムラ社会だから、正常でない人間は異物として社会から排除される」なんて話が出てきた。
人間はパートナーを見つけて子孫を残していくように本能が組み込まれているみたいだけど、その道に逆らおうとしている私は社会にとって異物なのかな。
事実、ある会社では35歳以上で一回も結婚したことのない男性は中途採用をしない、という話を聞いたことがある。恐ろしい。
ここまでくると、結婚しないということはなんだか社会のマナー違反をしているみたいだ。
とはいえ、王道以外の道を選んでもルール違反なわけではない。
王道でない分、その道特有の困難さはあるかもしれないけれど、本人にその覚悟があるのならそれでいいはず。
ひとりでだって、したたかに生きてやる。
そんなことを考えていた私だったが、最近、人生がゲームなら結婚は「ゲームのやりがい」や「ゲームを続けるモチベーション」になるのでは、とも考えるようになった。
きっかけは、とある新聞記事。
病気で入院しているおじいさんの話。
おじいさんは病気が治る見込みもなく、余命もあとわずかという状況だった。
おじいさんは死にたくなかった。まだ生きていたかった。
医師や看護師さんの前でも「死にたくない、死にたくない」と言って、必死に抵抗した。
しかし、抵抗の甲斐もなく、まもなく命が尽きるという頃、おじいさんの子供たちや孫たちがそろってお見舞いに来た。
皆に取り囲まれる中、おじいさんは自分の子供と孫の顔を見てこう言った。
「ま、いっか」
そして、まもなくおじいさんは亡くなった。
この話は、私にとって軽く衝撃だった。
あんなに死にたくなかったおじいさんが、最後には自分の死を受け入れた。
子供や孫の存在が、自分の人生に納得感を与えたのか。
子供がいる人にとっては当たり前の感覚かもしれないが、私にはそんな発想まったくなかった。
この話を自分の祖父母にもした。
祖父は、「それは本当に幸せな死に方だ」と言っていた。
祖母は、「この年になると何のために生きているのかわからなくなるけど、それでも子供や孫のことを思うと、生きていてよかったと思うことがある」と言っていた。
子孫繁栄なんて、ただの人間の本能だという程度にしか思っていなかった。
それが、苦しくても生きていける「生きがい」にもなるし、それどころか、最後に安心して死ぬことができる「死にがい」にもなるということを初めて知った。
結婚はメリットがどうとか、そんな理屈で考えるものではないのかもしれない。
それが普通だから、昔から皆そうしてきたから、くらいのものだと思っていたけど、それだけではないのかもしれない。
実際に結婚をして、家庭を持った人にしかわからない世界があるのだろう。
ほんの少し、その世界を見てみたいな、という気持ちが芽生えた。
「結局、自分はどうしたいのか?」ということはまだまだこれから考えていくけれど、このおじいさんの話で、結婚に対する見方が少し変わったのは確か。
それが今後生きていくための活力にもなるのなら、少し考えてみてもいいのかもしれない。
***
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