コロナ禍の結婚式準備は秋の空のようで
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記事:松島小百合(ライティング・ゼミ日曜コース)
このコロナ禍の真っ只中、私は結婚式を5日後に控えている。本当ならば昨年秋に式を予定していたが、熟考の末に延期を決定したのだ。きっと春なら、5月なら、今よりもコロナは落ち着いているだろう、そう希望を込めての延期だった。しかし状況はどうだ。私の住む愛知県では結婚式の1週間前にして、突然の緊急事態宣言が発令された。蔓延防止等重点措置が延長されるのでは、と身構えていた身にとっては、更なる大きな措置はまさに寝耳に水のことであった。
愛知県に緊急事態宣言が出されると知った時に、やはり私の頭にはまず結婚式のことが浮かんだ。そりゃそうだろう、自分の式まで残り1週間しかないからだ。宣言が出ることは明らかになったものの、その詳細は同時には発表されなった。もともと宣言が出ていた地域では、イベント開催は無観客で行う、などの要請もあったようだから結婚式はさせてもらえないんじゃないだろうか。そんなことが頭をよぎった。
先に緊急事態宣言がでていた東京などの地域では、結婚式自体は開催できるものの、いくつかの制約がついていたようだ。まずは披露宴の時間を90分以内に収めること。そしてアルコールの提供ができないことだ。結婚式で行われる三々九度については、宗教行事であることから実施は可能であるらしい。
しかし、だ。緊急事態宣言の下で結婚式を行うことが物理的には可能であったとしても、本当に決行してもいいんだろうか。そんな迷いが強くなる。匿名性の高いSNSであるTwitterではやはり結婚式反対派の声も多く見られた。「招待はされているが本当は行きたくない」という招待客の声や、「夫には今参列してほしくない」という妊娠中の妻の意見。また直接結婚式に関りはない人からの、「今開催するのは非常識だ」という声。きっとすべての立場の意見が正しいのだろうと思われて、私の心に鋭く突き刺さった。
それらの反対意見と同時に、私と同じ立場になってしまった多くの花嫁の困惑も読み取れた。人生で一番祝福されるはずの日を堂々と迎えられない。そして祝われるどころか見ず知らずの人にさえ非難されてしまう辛さを、多くの人が抱えているようだった。私も本心はその人たちと同じ思いだ。たとえ緊急事態宣言が出ていなかったとしても、私は今コロナ患者が急増している中で自分が結婚式を行うことを、後ろめたく感じていた。普段多くの人に向けて公開しているInstagramでも結婚式の準備のことは公開していない。親しい友人に向けてさえも、結婚式を今行うことに対してどう思われるかが怖くてほとんど言うことができなかった。そんな後ろ向きな感情に決定打を打ったのが、今回突然に出された愛知県での緊急非常事態宣言だったのだ。
今結婚式を挙げようとしている人の多くが、昨年の春以降に式を延期した人たちだ。一度ならず二度延期したカップルも少なくないと聞く。しかし結婚式の延期には決して少なくない負担がのしかかってくる。式場によっては30万円~70万円ほどの延期料がかかるところもあるらしく、キャンセル料として184万円の請求を受けた人の声もSNSでは聞かれた。その際も国や自治体からの援助を受けることはできない。若いカップルにとっては経済的にも辛い選択をせまられてしまうのだ。また私の場合は出席者数の引菓子を注文した日に、緊急事態宣言が出ることを知った。万が一延期にした場合、このお菓子はどうしたらいいのかと途方に暮れてしまい、また日付入りのウェルカムボードやリングピローなどは見るのも辛くなってしまった。
一般的に女性は、結婚式に向けてどんどん美しくなっていくという。でもコロナ禍の花嫁にとっては、その常識は通用しない。どんどん移り変わっていく秋の空のように、新型コロナウイルスをとりまく社会情勢は勢いよく変化していくのである。思い返せば3月の花嫁は、全国的にコロナが落ち着いていて幸運だった。けれどその人達も、式準備のさなかに緊急事態宣言を迎えており、不安でたまらなかったかもしれない。
緊急事態宣言が出たことを受けて私は、再度出席者のみなさんに連絡をとった。式は屋外で行い、披露宴では窓を開けて換気をすること。テーブルの上にはアクリル板を設置し、当日アルコールの提供はできないこと。その上で、もちろん欠席でもいい旨を伝えた。ありがたいことに、逆にこちらを気遣ってくれるメッセージを何通もいただいた。また、当日を楽しみにしてくれている様子をたくさんの人から教えてもらい、固くこわばった心がほぐされていくようだった。私たちの結婚式は、親族と親しい友人だけを招いて行い、決して盛大なものではない。コロナ禍以前のような様式では行えないかもしれないが、ひっそりと静かに穏やかに一生に一度の結婚式を迎えたいと思う。
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