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ミュージカル「レ・ミゼラブル」のチケットを無駄にしないためにやっておきたいこと


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やすだともこ(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
2021年5月7日、東京都下の緊急事態宣言の5月いっぱいまでの延長が決定した。この日、私たち、ミュージカル「レ・ミゼラブル」ファンがいちばん気にしていたのは、12日以降、劇場は開くのか。それとも11日まで命じられていた休業、もしくは無観客公演のままなのか。5月21日からは東京日比谷・帝国劇場で、2年ぶりの公演が予定されている。手持ちのチケットはただの紙屑となってしまうのか? ファンは公演期間中に何回も劇場に足を運ぶ。いつから観られるようになるのだろうか?
 
結局、都からの要請は「人数上限5,000人かつ収容率50%での施設使用」。ということで、無事公演開幕が決定した。主催の東宝からのお知らせを見たときは、家で思わず飛び上がって喜んでしまった。よかった。本当によかった。
 
とはいえ、収容率50%以上チケットが売れている公演は、それ以上のチケット販売はできない、ということになる。乃木坂46の生田絵梨花さんが出演したり、2020年の朝の連続ドラマ小説「エール」でミュージカル俳優の知名度が上がったりしたことで、「レ・ミゼラブル」のチケットは非常に入手困難になっている。ならば、一ファンとして、貴重な公演1回1回を余すことなく楽しみたい。もちろん今回初めて「レ・ミゼラブル」を観るという方々までみんなに楽しんで、この名作ミュージカルを味わってもらいたい。
 
ただ、「レ・ミゼラブル」は実に難解な作品だ。一度観て理解できるほどやさしい作品ではない。20年以上にわたり、100回近くこの作品を観劇している私ですら毎回発見がある。
 
19世紀初頭のフランス。パンひとつ盗んで19年牢獄暮らしを余儀なくされた男ジャン・バルジャンが主人公ではあるが、取り巻く人たちがみんなストーリーを持っている。端役と思われる人たちまでも、隅から隅までみんなである。そして、それぞれの人生が絡まり合って壮大なドラマとなって、それぞれの結末を迎える。実にダイナミックで実に複雑なのだ。
 
ならば、ぜひおすすめしたいのが予習だ。でも、いきなりビクトル・ユゴーの原作を読んではいけない。文庫本5冊。挫折すること間違いない。
 
おすすめの予習法は2つある。
 
ひとつ目は、映画。「レ・ミゼラブル」は何度となく映画化されているが、予習として観るべきは、2012年公開のバージョン。ヒュー・ジャックマンがジャン・バルジャンを演じ、その敵役をラッセル・クロウが演じたもので、アカデミー賞に7部門ノミネートされ、日本でもロングラン上映された。
 
この映画は、ミュージカルをもとに映画化されている。原作というより、舞台の映画化である。一部ストーリーの順番が入れ替わっている、映画にしかない楽曲があるといった違いはあるが、映画ゆえに細部まで詳しく描かれている。冒頭のジャン・バルジャンが港でびしょ濡れになりながら苦役につく場面など、いきなり迫力満点だ。舞台ではできない、“登場人物の画面いっぱいのアップ”もあるので、登場人物のキャラクターや役割も頭に入りやすい。
 
また、ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイといったスクリーンでお馴染みの俳優たちがミュージカルの楽曲を実際に歌っているのを聞くことができるというのも、とても魅力的だ。
 
さて、映画で予習は十分かもしれないが、やはりフランス文学の傑作である原作に触れておきたいという方におすすめなのが、予習法2つ目、『レ・ミゼラブル百六景』(文春文庫)を読む、である。
 
表紙は、ミュージカルのポスターにも描かれている女の子、コゼットの挿絵。それだけでミュージカルと原作がリンクして高揚してくる(のは私だけか!?)。
 
フランス文学者、鹿島茂さんの処女作である本書は、1987年、日本の「レ・ミゼラブル」初演の年に出版された。19世紀後半に刊行されたバージョンの原作から、180枚の挿絵を選び、左ページが挿絵、右ページが解説という構成になっている。あとがきによると、
 
“これ(挿絵)に内容の要約を添えたうえで、挿絵とストーリーの結合から生まれるなにかを通して、ワーテルローの戦いから七月王政に至る十九世紀前半のフランス社会を読み取ろうとした”
 
という1冊である。
 
物語の終盤、ジャン・バルジャンはある青年を助けようとパリの下水道に侵入し、逃げる場面がある。ジャン・バルジャンはなぜそんなきれいとは言えない下水道に逃げ込んだのか。
 
現代の日本人からしたら不思議な場面も、この本を読んでいるといちいち納得がいく。あとがきを逆手に読むと、「レ・ミゼラブル」で描かれる場面場面の意味が、当時のフランス社会の解説を通してより説得力をもって迫ってくるのだ。
 
しかも、この1冊を読めば、ほぼ「レ・ミゼラブル」全編の登場人物を挿絵とともに視覚的に把握できるだけでなく、ストーリーもコンパクトにまとめられている。非常に“美味しい”1冊なのだ。
 
これを書いている5月10日時点、幸運にも東京の公演は上演が決定している。8月以降は福岡、大阪、長野での公演が予定されている。しかしこのコロナ禍、いつまで上演が可能なのか、本当に上演されるのかは、まったくもってわからない。
 
私自身、現在2公演分のチケットを無事入手できているものの、本当に2回観られるのかはそのときにならないと確実にはわからないのだ。だからこそ初心に戻って、映画を観て、本を読んで、当日は“レ・ミゼラブルモード全開”で臨みたいと思っている。
 
 
 
 
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2021-05-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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