メディアグランプリ

私は漫画が読めない


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記事:松尾英理子(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「こんな読みやすくて面白い漫画が読めないなら、もう、漫画読むのは無理なんじゃないの」
 
3か月前、漫画全20巻を友人から借りた。なのに、3か月たっても、私はまだ全20巻の4巻しか読めていなかった。オンライン飲み会で仲間たちに、4巻しか読めていないことを伝えたら、総じてこんな反応だった。
 
「えー、あり得ない。20巻なんて面白いと思えたら、1日で読めるのに」
 
みんな、私にあきれているように思えた。でもね、そういわれても。1巻読むのに2時間くらいかかってしまうんだな、私。なんだか、自分が烙印を押された欠陥人間のような気分に陥る。
 
その漫画は、スラムダンク。バスケを題材にした大ヒット漫画だ。漫画を読まない私だって知っている超メジャーな漫画だ。
 
今年2月、参加していたオープンラボの授業で、2010年に行われた「スラムダンク1億冊感謝キャンペンーン」の話を聞いた。このキャンペーンに込めた作者の気持ちとそれを受け止めた読者の反応がものすごく感動で、私は初めて自分から、漫画を読んでみたいと思った。それで、友人にお願いして全巻借りて読んでみることにしたのだ。
 
私は小さい頃から、自分でも不思議なくらい、漫画に興味が持てなかった。読みたいと思えなかった。小学生のころ、友人に勧められて漫画雑誌をぺらぺらとめくったものの、ページが一向に進まない。友人たちには「これが面白くないっておかしいんじゃないの」と言われ続けてきたけれど、私は架空の世界である漫画よりも、実物の生身のアイドルのほうが断然魅力的だった。中学生になるとアイドルにはまり、漫画とは、どんどん縁遠くなった。
 
そんな私がこの年になって初めて、自分から漫画を読んでみたいと思えた。
 
それは、スラムダンクの連載後の物語を聞いたからだ。スラムダンクは連載が終わってからも、単行本がじわじわと売れ続け、連載から10年以上を経て累計1億冊に到達したのだそうだ。そこで作者が「読者のみなさんに、ありがとうの気持ちを伝えたい」と考え、個人広告を思い立つ。その心意気に賛同したメンバーが加わり、「読者たちが一番喜ぶこと、笑顔になることはなにか」を考えつくし、「スラムダンクを愛している人たちだけがわかること、集まれる場」を作ることを決めた。
 
その試みは、まずは作品の主要な登場人物、ひとりずつの新聞広告から始まった。その広告には控えめにホームページのURLがついていた。恐らくこの広告を凝視するようなファンだけと思えるくらい小さく。そのURLは、入っていくとメッセージが書き込めて、書き込むとバスケの観客席にまるで座っているような疑似体験ができるサイトになっていた。そして最後には「ファンが実際に集う場」が予告され、それは廃校になった高校の黒板を使ったイベントだった。
 
前述したオープンラボの授業の中で、このイベントのメイキングビデオを見た。廃校になった高校の各教室の黒板に、作者が漫画連載後の主人公たちを描いていく。描き終えた翌日、ファンたちがその校舎にどんどん集まってくる。涙を流して、じっとその黒板を見入っているファンたちの姿。その姿を陰で見て感激している作者の姿。
 
そこまで皆を魅了する、その黒板に描かれた主人公たちの舞台を読んでみたい。
 
その話を聞いた時は本気でそう思った。
 
でも、漫画を読んでみると、読むのにとても時間がかかって、次の巻も読みたい! という気持ちになれなかった。
 
何が違うのだろう。あの校舎で、涙を流していた読者たちと私の違いは、何なのだろう。
 
確実に言えるのは、私は学生時代にバスケが得意じゃなかったこと。そして、この作品を青春時代に読んでいないことだ。あのイベントで感動していた読者たちは恐らく、漫画を読んでいた頃の、自分たちの青春時代の思い出とのオーバーラップがあったはず。
 
私は、スラムダンクの世界とあまりにも縁遠い。
それが、読み進められなかった理由?
 
 
うーん。本当にそうなんだろうか。
バスケ得意な人しか読んでなかったら、そもそも1億冊も売れないんじゃないか。
 
今回、こんなにも読んでみようと思ったのに、結局読めなかったのは、もっとシンプルなはず。読めないことが自分でもあまりにも謎だったので、その理由を考えた結果、それは、私が漫画に感じる2つの「難しさ」からきているんじゃないかと思えた。
 
漫画のコマは横に行ったり下に行ったりするので、視点をジグザグさせるのが難しい。
漫画の文字(セリフ)と絵を両方追うのが難しい。
 
きっと、これだ。究極の不器用なんだ。
 
話は変わるが、私は免許を持っているけど、運転が不得意だ。というか、できない。
20歳の時、運転免許取るのに、仮免に2回も落ち、結局50万円もかかってしまった。
 
教官に、「あなたみたいな人は、できるだけ運転しないほうが良いかもね」と言われるくらいだった。皆当たり前のように運転しているけど、私には運転しながら、横を見たり、後方を確認したり、そんな器用なことはできない。
 
多分、漫画が読めないのも、運転できないのも同じ理由な気がしてきた。
一度にいろんなことができない。これに尽きるのかもしれない。
 
漫画が普通に読めたら、楽しいだろうな。
運転も普通にできたら、便利だろうな。
 
そうは思うけど、できなくたって、人に迷惑をかけるわけじゃないから、いいよね。
漫画が読めない理由と、車が運転できない理由が重なり、自分なりに腹落ちしてスッキリした。
 
不得意なことを受け入れて、得意なことに生きよう。
漫画が読めないなら、本や映画を見ればいいよ。運転できないなら、電車やタクシーを利用すればいいよ。
 
そして、スラムダンクは来年映画化されるらしいので、映画を見ることにしよう。
友人たちが感動した、あの物語を見て、私も涙したい。
 
 
 
 
***

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2021-05-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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