私の好きな梅仕事
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:仲本 ひと美(ライティング・ゼミ超通信コース)
「ふわっ」と、甘酸っぱい香りが広がる。
箱を開けた瞬間、この香りを感じることが、初夏の楽しみの一つだ。
お気に入りの農家さんに、4月になると青梅を注文する。
かれこれ10年ほど梅仕事を続けている。最初は「面倒くさいな」という思いとともに始めた梅仕事。でも、何がきっかけになるか、わからない。
私は、梅仕事から、好きなことがたくさん広がった。
きっかけは、梅の木があるお隣さんから、青梅をいただいたこと。
当時は、料理が大の苦手、得意料理はインスタントラーメン。そんな私は、たくさんの梅をどうしようかと困ってしまった。ネットで、梅仕事を色々調べ、簡単にできそうな梅酒をつけることに。梅をつける瓶やお酒、氷砂糖を、近所のスーパーで調達した。調べたレシピ通りに作ったら、簡単にできた。
完成した梅酒は、お店で買うものと、また違った美味しさだった。
梅を漬け込める瓶をたくさん買っていた。1年で終わらせるのはもったいない。2年目からは、自分で梅の実を用意した。
梅仕事を始めたころは、難しそうだなと思っていた梅干しを、数年前からは作っている。
まだ、青々としている梅は、黄色く熟すのを待ち、追熟させる。
一粒、一粒、傷がつかないように丁寧に洗い、竹串でヘタを取る。
準備は大変だ。
梅と塩、そして、酢と氷砂糖を加える。以前、料理番組で知ったレシピ。
酢を入れることでカビが生えにくく、そして、氷砂糖を加えることで、少し甘い梅干しができる。
初心者でも失敗しにくいとのこと。挑戦しやすかった。
梅雨が明けると、天気予報が気になる。漬けていた梅干しを瓶から出し、笊に並べ、三日ほど日干しをする。外に干せる場所がないため、風通しの良い、日当たりの良い窓辺に、梅干しの笊を置く。部屋中が梅干しの匂いでいっぱいになる。
日干しして、すぐの梅干しは、味が馴染んでおらず、酸っぱさを強く感じる。
冷蔵庫でしばらく寝かせて、秋頃に、酸味が柔らかくなるのを待ってから食べる。
梅干し作りは、手間がかかる。でも、やめられない。
年数を重ね、梅仕事に慣れてくると、完成した梅干しに、少し自信がつき、お裾分けをした。「美味しい梅干しだったよ。お酒の肴にちょうど良かった」と、お世辞かもしれないけれど、褒め言葉をかけてくれる人、梅干しを毎年楽しみにしている家族もいる。喜んでくれる人がいると思うと、手間も楽しさに変わり、気がついたら10年続けていた。
楽しさは、興味を広げた。他のことにも挑戦したくなった。
手仕事は楽しい。梅仕事以外のレシピを検索することが、好きになった。
ある日、シフォンケーキのレシピを見つけた。
必要な調理器具の準備から、丁寧に詳しく書かれているレシピ。
「私にも、できそう!」その様に思い、自宅にない調理器具をそろえ、初めてのお菓子作り。レシピをしっかり確認して作った。時間はかかったが、きちんと膨らんで焼きあがったときは嬉しかった。
最初は、シンプルなシフォンケーキを何度も作り、慣れてきたら、自分で漬けていた梅酒を入れてシフォンケーキを焼いた。とてもおいしかった。
シフォンケーキ作りに慣れてきたら、料理にも挑戦したくなった。
友人が料理教室に通い始め、いきいきとした様子で「楽しい」と話してくれた。
私も、その言葉に魅せられて、月1回通うことに。
包丁の持ち方と使い方、大さじ1杯の意味とは。そんな、超基礎から習い始めた。少しずつできることが増えると楽しさも増す。5年ほど料理教室にも通っている。
いまだに、包丁は超苦手。綺麗に形をそろえて切ることができない。
見た目は不細工かもしれないが、作れるレシピが増えた。
できるレシピが増えてくると、使ったことのない調理器具、日本ならではのレシピなど習いたいことが、どんどん増えてきた。
伝統的なお節料理を習った。毎年お節料理を少しの品数だが作るようになった。
年末は、親族が集まる。はっきりと美味しい、美味しくないと言ってくれる。
何が気に入って、どこがダメだったか、こんな会話を皆でするのも楽しい。
リクエストを聞き、皆が好きなものを作るようになった。筑前煮風肉巻き、栗きんとん、淡雪寒天など……。
「今年は、どんな料理をお重に入れたら喜んでくれるかな」そんなことを考える時間も楽しくなった。
何がきっかけで、好きなことが広がるか、わからない。
梅仕事は、今では私の趣味と言えるものとなった。
スタートは、自分の意志ではなく、お隣さんからの青梅のお裾分け。
やったことがないから、面倒だからと、やらずにいたら、今、感じている、たくさんの楽しさを得ることはなかった。
きっかけは何であれ、できそうなら、ちょっとやってみる。これが好きなことを増やす秘訣かもしれない。
お隣の梅の花が咲くころに、梅仕事の準備を始める。
6月になれば、今年も青梅が届く。どんな梅が届くだろうか。
箱を開けた瞬間、台所中に広がる梅の香りが、今から楽しみだ。
***
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