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20年越しの謎解き:つまらないなんて、もう誰にもいわせない


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事: 浦部光俊(超ライティングゼミ)
 
 
「経理とか会計って地味だし、つまらないですね」
経理部内の若手の一人がボソッとつぶやいた。
どうやら、隣の先輩にグチっている様子だ。
 
「世間ではビジネスパーソンの必須ツールとか言われますけど、
正直言うと、よくわからないんですよね」
 
さあ、先輩君、
経理部5年の経験から君はどうこたえる?
耳をそばだてていると、
「経営者や投資家が経営状態を……」
教科書そのままの回答、こちらもあまり自信がなさそうだ。
 
中途半端に会話を終え、仕事に戻る彼ら、
傍目に見ながら考えた。
自分だったら、どう答えたんだろうか。
 
経理・会計の仕事に携わり20年近くがたつ。
「知識」 が足りていないと困ることは、ほとんどない。
実際の仕事面だって、
毎日の経理処理の判断から、
年に数回の決算発表の資料作りまで、
そつなくこなしている自負はある。
ただ……
経理・会計の意義とはなんだろうか。
仕事を面白いと感じたことは、かぞえきれない。
でもそれをきちんと言葉にできない。
ショックだった。
 
なにかヒントはないものか、
仕事帰りに立ち寄った書店。
会計コーナーに向かうとたくさんの本、
きっと多くの人が会計の問題に悩んでいるんだろうな、
自分だけじゃないと慰められたような、
抜け出せない泥沼に足を取られたような、
複雑な思いで歩いていた時、目にとまった本、
それが「会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方」
 
パラパラとページをめくると、
シンプルな図表が使われていてわかりやすそう。
登場するキャラ達の会話で話が進むから、とっつきやすいそう、
初学者向けとしてはいい感じだ。
 
にしても、世界一楽しいって大げさだ。
決算書なんて、面白く読めるものなのかと思いつつも、
「本当に決算書を『読める』 人の読み方がわかる」
帯のその言葉がどうにも気になる。
自分は本当に決算書を「読む」 ことができているのだろうか?
 
僕が経理・会計の意義を伝えられないのは、
その楽しさ・魅力を言葉にできないのは、
決算書を読む能力が足りないことと関係しているんじゃないか?
 
20年もこの仕事をやってきて、いまさら初学者用の本もないんじゃないか、
そんな気持ちがないかと言えば嘘になる。
ただ、どこかで感じていた。
このまま終わってしまっていいのだろうか。
人生の半分近くの時間を費やしてきた仕事の意義、面白さを伝えられない、
こんな自分で終わりたくない。
 
自分の中で宙に浮いたままになっている「会計」
もう一度、初心に戻ってみたら何かを見つけられるかも。
そんな気持ちで読み始めた僕はすぐに気が付いた。
決算書の謎にとらわれ、さらに宙づりにされている自分に……
 
始まりは至って普通だった。
よくある初学者向けの本と同じ、決算書の概要説明だ。
 
「貸借対照表とは、会社が調達したお金で何を買ったのかを表す財産目録」
 
投資家に出資してもらったお金で、工場を建設した場合は……
銀行からお金を借りて、原材料を買った場合は……
 
シンプルな取引が、貸借対照表でどのように表されるのか、
イラストと共に登場キャラたちに向けて説明される。
 
わかりやすい、けど、よくある展開、
特に目新しいものはない、と、思ったのは一瞬のことだった。
 
突然、現れたのは2つの異なる貸借対照表。
そして、登場キャラ達にぶつけられる質問。
「どちらがメルカリの貸借対照表か、当てることができるかな」
 
そうだ、忘れていた。
この本は単なる説明書じゃない。
決算書の「謎解き」の本だった。
 
貸借対照表はある時点での会社の財産記録、
現金がいくら、ソフトウェアがいくら、という記録があるだけだ。
それだけで推理なんて本当にできるのか。
 
自分でも考えてみようと頭をひねるが、これがなかなか難しい。
 
登場キャラたちの謎解き会話は新鮮だ。
営業部所属、銀行勤務、それから学生、
様々な立場からの視点は、
経理部では思い付かないものばかり。
 
そんな彼らにヒントをもらいながら、
メルカリなら、
あのビジネスモデルなら、
こんな形で財産が残っているに違いない、
と、貸借対照表の謎を読み解くと見えてきたのは……
 
残されているものだけで推理するなんて、
犯行現場に残された証拠検分する探偵みたいだ。
次こそは自力で推理してやる、
意気込みながら先に進む。
すると、登場したのは新たな決算書の謎。
 
並べられたのは、3つの損益計算書。
「セブンイレブン、ブックオフ、キャンドゥ、どれがどの会社のものか、わかるかな」
 
損益計算書とは文字通り、
会社が儲かったのかどうかを表したもの。
一年間、どんな収入があって、
どんなことにお金を使ってきたのか、
言ってみれば、会社の行動が記録されている。
 
「この取引に、これだけのお金を使うということは……」
「見ろ、こんな取引先からお金が振り込まれているぞ……」
 
またしても登場キャラたちの会話に引き込まれる。
自分もその場にいるかのようだ。
一緒に会社の行動記録を読み解いていくのは、
犯人の足取り調査といったところか、
そろそろ探偵姿が板についてきた気がする。
 
そして、最後には現れたのは貸借対照表と損益計算書の統合問題。
2つの決算書、複雑に絡みあった糸、それを解きほぐしたとき見えてきたのは、
会社の「戦略」だった。
 
おもしろい……
悔しいけど、認めるしかなかった。
 
会社がどんな意図をもってお金を使っているのか、
売上、利益を上げるためにどんな工夫をしているのか、
そんな戦略が決算書には隠れている。
それが読み解けたとき、決算書は確かに最高におもしろい。
 
そして痛感させられた。
自分が今まで仕事を通じて楽しいと感じていたものの正体、
それは「戦略」 なのだ。
 
経理・会計という仕事にいれば否応なく目にする数字
それは自社の戦略の成果だ。
それを自分たちの力で読み解き、単なる数字に意味を与えていく。
 
この売上になったのは、会社としての戦略がうまくいったから。
この経費が増えているのは戦略がうまくいっていないサインかもしれない。
 
探偵にでもなったつもりで、数字という残された証拠から戦略との関係をあぶりだす。
そして、それがズバリ当たっていた時……
 
上司に、いや、社長にだってほめられるかもしれない。
経理部みたいな管理部門でも会社の利益に貢献できるかもしれない。
 
でもなによりも、この爽快感がたまらない。
それはまるで推理小説の犯人を当てたときのよう。
作者が張った伏線をすべて読み切り、
「犯人は、こいつだ」 と言ってやった時の気持ち良さ、もうやめられない。
 
経理・会計の仕事のおもしろさがわからない?
そんなことをいうやつにはこう言ってやる。
 
経理部は会社の名探偵。
俺たちの「読み」が会社の命運を握っているんだ。
そう思ったら、最高にゾクゾクしてこないかって。
 
 
 
 
***

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2021-05-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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