草役も輝く劇団四季の世界
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記事:村人F(ライティング・ゼミ 超通信コース)
「ここまですごいとは思っていなかった」
劇団四季のライオンキングを最後列で見た僕はその迫力に圧倒されていた。
本物かと思うレベルに精密な動作をする人形たちや、象など巨大な動物たちの圧倒感。
そういった光景に一瞬で心を奪われた。
劇団四季という名前は前から聞いたことがあったので、いつか行こうと思っていたわけだが、もっと前から行っていればよかったと激しく後悔してしまった。
こんな劇場が自宅からチャリで行ける距離にあるなんて、名古屋はつくづく不思議な街である。
しかし年をとると、このような演劇を見たときの着目点もニッチなところに向くものだなと思う。
子どもの頃だったら、「動物たちみんなカッコよかった!」や、「キャラが名古屋弁でしゃべっていたよ!」などと言っていただろう。
ただ、僕が見ながら思ったのは次のようなことだった。
「草役の人、意外とやることがあるなぁ」
草役。文字通り、その辺に生えている草の役の人である。
ギャグ漫画の発表会では、ハズレ役として定番のものになっている。
ただ立っているだけで終わる、それ人がやる意味があんのと言いたくなる、あの草役だ。
だが、劇団四季を見ていると、草役が決してそんなハズレ役じゃないことに気付く。
メチャクチャ動くのだ。
主人公のライオン、シンバが走っているときは20人くらいの草が一緒に揺れたり走ったりして疾走感を演出している。
キャラが倒れかかったら、支えて「グッ!」って親指立てるボケもかます。
ただ突っ立っているだけで終わるなんてことは全然ない。
すごく動いている役だったのである。
こういう光景を見ていると、一流の演劇とはこういうものなのかと、しみじみとわかってくる。
そう、劇団四季がすごいのは、草役という超絶地味な役ですら輝くことにあるのだ。
なぜそういえるのか。
それは、草役含め、全ての役回りに必然性があるからだ。
ライオンキングに出てくる草は、全て人がやっているわけではない。
もちろん、場面によっては物としての草も出てくるのである。
普通の劇団だったらそういう装置だけ作って済ますところだろう。
それを演じる役を作るとなると、その分役者を用意しなければいけないからだ。
しかし、劇団四季では、そこにわざわざ人を雇っているのである。
それは、演出家の人たちが、人であるべき草、物であるべき草をハッキリと使い分けているからできることだ。
物である草は、動きが基本的に止まっている。
一応レール上に置いてあげれば、縦横の動きはできるが、どうしても機械的なものになってしまう。
だが、人が演じる草はそうではない。
そよ風に揺れる微細な動きや、野原を駆けるダイナミックな動き、場面に応じて柔軟な色を描くことができるのである。
そして大人数で草を演じるから生まれる迫力もある。
そういった、人であるべき必然性が草役にも徹底して存在していることが、劇団四季が日本トップクラスの劇団である象徴なのだと感じた。
そして、この徹底ぶりは草役だけにとどまらない。
劇団四季は、専用の劇場を持っている。
それゆえ、劇場全てを「ライオンキング」のためだけにフルチューニングしているのだ。
公演を2階席から見ていたわけだが、ステージの床には独特の切れ目が無数に入っていた。
最初はサバンナらしい感じを、その模様で表現しているのかと思っていた。しかし、それらは草や自動で動く人形など、そういった物体が通るためのレールだったのである。
それ以外にも、場面によって斜めに盛り上がるなど、普通のホールじゃできない演出が大量にあったのである。
床でもこの調子なのだから、ほかも言わずもがなである。
音響は生演奏をしている打楽器の僅かな音ですらクリアに拾ってくれるし、照明もニッチなところを特殊な明かりで照らしてくれる。幕の種類も多いし、降りるスピードも変幻自在である。
この舞台装置、音響が1つの演劇をやるためだけに設計されているスケールに圧倒されてしまった。
そこまでこだわるから当然、草役も演劇を盛り上げるために最大限の仕事をしているわけだ。
そして、その豪華な脇役陣の支えを受けて、主役も最高の輝きを見せてくれる。
このように、全てが妥協なき必然性のもと存在していることこそ、劇団四季たる所以なのだと思った。
このような素晴らしい演劇が見られるというのは、なんと幸せなことか。
しかも劇場全体が感染対策を徹底しているため、コロナ禍でも楽しめる娯楽になっている。
本当に「ライオンキング」は日本全体を元気にしてくれる演目だと思った。
皆さまもコロナが落ち着いてきたら、ぜひ劇団四季を見に行って欲しい。
ここでは主人公のシンバだけでなく、草の役、生演奏の打楽器、裏方含め多くの一流スタッフが最高のサバンナを表現している。
それはあなたの心を、きっと魅了してくれることだろう。
***
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