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どこの映画館で見ても、「4D」を感じられる作品


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山田THX将治(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
不思議な映画を観た。
その映画は、ドキュメンタリー作品だ。
その映画は、ニューヨークの街並みは映すものの、取り立てて際立ったロケーションで撮られてはいない作品だ。
その映画は、なうての演技自慢の俳優等、出てはいない作品だ。
その映画は、名匠といわれる監督が演出した訳では無い作品だ。
その映画は、際立った物語が展開する訳では無い作品だ。
 
それでもその映画は、映画フリークの私にとって、忘れることが無いと思われる今年の公開作品だ。
何故なら、試写で観たにもかかわらず、思わず「4D映画か?」と感じたからだ。
 
その作品の名は『ブックセラーズ』。
世界最大規模の本の祭典“ニューヨーク・ブックフェア”に集結する、ブックディーラーや書店主、そして希少本を収集するブックコレクター達の日常行動を淡々と描き切り取っている。
 
先ずこの映画で勉強に為ったのは、ブックフェア等に集まるそうした面々を、ブックセラーズと称することだ。直に和訳すると‘本売り’と為るが、登場人物の殆どが御目当ての本を購入するばかりで、積極的に売ろうとはしていない。
日本語にするなら、‘本の愛好家’とでもした方が良いだろう。間違っても、単なる古書店とは一味違うからだ。
そればかりか‘本の愛好家’は、御気に入りの本を自分の手元に置き、それで満足しているようにも思えるのだ。多分、大好きな本に囲まれて暮らすことが、何より幸せそうに見受けられた。
 
もう一つ、勉強に為ったことが有る。
それは、『ブックセラーズ』の中で一回だけ字幕で現れた“稀覯本(きこうぼん)”という文字だ。意味としては、希少本と同じだが“稀覯本”と記すと本の貴重さが増す感じがする。
私の語彙が、『ブックセラーズ』によって一つ増えた。
 
映画が大好きな私だが、本も比較的読む方だと思う。学生の頃等、週に一回は神保町の古書店街を歩き回っていた程だ。
『ブックセラーズ』の登場する書店は、神保町に在る古書店とは一味違う。ただ違うのではなく、神保町の有名古書店の2階や3階に上がった感じといえば、お解かり頂けるかも知れない。
神保町の上階には、必ずと言っていい程、日本の“稀覯本”が陳列されているからだ。
 
そんな古書店に伺うと、必ず、独特の匂いがするものだ。
決して、良い香りではない。しかし、どこか懐かしく昔を感じさせる匂いだ。
その原因のほとんどは、古い本から発せられるカビ臭だ。一部では、埃っぽい匂いも混ざっていることが有る。
私は、『ブックセラーズ』を観ている最中、何度か、そんな神保町的匂いを感じたのだ。
それはまるで、“4D映画”を観ている様だった。
 
“4D映画”とは、新設のシネコン(シネマコンプレックス)とうに設置された、最新鋭の映画上映システムだ。画面が立体的に観える“3D”より進んで、座席が揺れて振動を感じることが出来たり、館内の空調を利して風を感じることも出来たりする。
同時に、香りや臭いも館内に流されることだってあるのだ。
もうこうなると、映画館というよりテーマパークのアトラクションに近いと言った方が良いだろう。
“4D映画”は主に、コンピュータ・グラフィックス(CG)を駆使した、大きな予算の映画を上映すると効果的だ。
 
勿論、『ブックセラーズ』は4Dで製作された映画ではない。
そもそも、ドキュメンタリー映画に、そんな予算が掛けられる訳が無い。
そして、4Dが似合う作品でもない。“稀覯本”を見せるのに、そんな手が込んだことをする必要は無いからだ。
しかも、私が『ブックセラーズ』の試写を観たのは、ちゃんとした映画館ですらなかったのだ。観賞したのは、天狼院の店舗だった。
“4D”の上映システム等、在ろう筈も無いのだ。
椅子だって、普段はゼミや講義を受ける時に使う可動式の物なのだ。
 
それでも確かに私は、『ブックセラーズ』を観ながら古書独特の匂いを感じたのだ。
そればかりではない。時には、古い稀覯な皮装本が画面に出ると、思わず皮の感覚が掌に甦ったのだ。
“4D映画”でも無いのに。
 
それは多分、『ブックセラーズ』に登場する稀覯本愛好家達の言葉の一つ一つが、本を愛する本心から吐露されていたからだろう。
その本音が、稀覯本が置かれた環境を再現していて、私に古本独特の匂いや皮の感触を伝えたのだろう。
 
東京では、多くのシネコンが閉まっている現在、単館係のミニシアターだけは開いている。
『ブックセラーズ』は、そうした小さな映画館で観賞するにはピッタリな作品だ。
 
貴方が本好きのなら、稀覯な本の数々を是非、観て頂きたい。そして、本を大切にするニューヨークの方々を知って頂きたい。
紙の本のアナログ感を、再確認してみて下さい。
紙の質量を感じられる筈です。
 
貴方がもし映画好きなら、チラッと映っている(であろう)、ウディ・アレン監督を探してみて下さい。
 
もしかしたら、本当に映り込んでいるかもしれませんから。
 
 
 
 
***

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2021-05-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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