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メディアグランプリ

変化のための養成ギブス


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ごろ子(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「働き方改革」が推進され始めて、はや数年、私の勤める小さなデザイン会社にもその波がやってきた。残業、休日出勤には全て上司の事前許可が必要となり、深夜残業は基本禁止である。多くのクリエイティブ系職業の職場がそうであるように、私の会社もまた、もともとの働き方が長時間労働の傾向にあり、それを変えていくのはかなり難しいとしていたのだが、とうとう今年、国の定めに即した多くの社内規定を設けて、働き方改革を進めるための運営を実施することになったのだ。
 
年齢が若いスタッフほど仕事と私生活のバランスを重視し、働き方改革については大いにウェルカムのようである。一方、現在45歳である私くらいから上の年齢は、時代に合わせ仕方なしにその流れに移行するが、内心やや批判的であり、困惑気味な意見が多い。というのも、これまでより格段に少ない時間の中で同じ売り上げを上げねばならないというのに、その具体的な解決方法が見えないまま、働き方だけを変えねばならないという問題に直面しているのである。もう一つ、部下の育成についても不安が及ぶ。自分たちが若い時に、何度も繰り返しトライアンドエラーし、時間をかけて習得してきたスキルをそのような時間制限付きの働き方で体得できるのか、ということである。
 
私の会社に関わらず、長時間労働に慣れていた日本企業からは急に労働時間を減らすことで、たちまち生産力が低下してしまう事を危惧する声も多く出るようである。短時間で効率的に働くことが長年文化として根付いている欧米諸国とは違い、まだその為のノウハウは何も手にしていないのに、ということである。
 
一方で私が思うのは、日本のように長時間労働が常態であった国だからこそ、「労働生産性向上養成ギプス」を強制的に装着しなければ、変わることは難しいのではないかという事である。そう実感を持って言える。というのも、私は過去にそのギプスを装着し、強制的に働き方を変えた経験があるからである。
 
冒頭で書いたように、私の会社も少し前までは昼夜関係なく常に人が働く不夜城であった。その中で過去の私もかなり無茶苦茶な働き方を長くしてきた。納得がいかなければ気のすむまで毎晩、納期ぎりぎりまで作業をする。気付けば働き出して10年、そのやり方しかしてこなかったので、今思えば、半ばそうしなければ不安にもなっていたのかもしれない。こんなやり方は年をとれば続かない、仕事の仕方を変えなければいけないと思いつつも、別の方法を構築して自分を変えていく作業が億劫で変えられなかった。
 
ところが、体力が衰える前に別の転換期が来てしまった。もっと急激で強制的な変化。子供ができたのである。育休期間が明けた時、私の仕事を取り巻く環境は一変した。何せ今までより圧倒的に働ける時間は短く、保育園のお迎えの時間には何が何でも業務を終えなければならないのだ。たとえそれが納期の前日でも。これまでは「今日は徹夜だぁ~」などと、うなだれつつも余裕をかましていたが、もうそんな事も言えないのである。とりあえず、帰ってご飯を作って食べさせ、お風呂に入れて、布おむつを洗わねば! なのである。
 
その中で同じ量、同じクオリティーのアウトプットを出すために、私は自然と自分の持ち時間を細かく分割していった。リサーチの時間、アイデアを出す時間、具体化する時間……。ゴールは同じ、辿る時間を全く変えなければいけない。以前の私は、特にアイデア出しなどは良いと思うものが出るまで、いつまでもやっていた。時間では切れない作業だと思っていたからである。その作業すら時間を切ってやるのである。最初の方は勿論うまくいかずに、各予定が超過して家に持ち帰り、子供を寝かしつけてから朝までやるという事もあった。しかし、そのうち、何とか効率化を図るための新たなプロセスや手法を見つけ出すようになる。そしてだんだんその自分の道具を使いこなし、極力少ないトライアンドエラーで納得のいくものにたどり着くようになった。
 
ある時ふと、あんなに変えられなかった自分の仕事の仕方がすっかり変化していたことに気づいた。時間を取り上げられたことで。今まで何冊も読んだ仕事効率化の本より、何度か受けたビジネスセミナーより明らかに私の仕事の仕方に変化をもたらしたのである。
 
という事で、最初は少なからず良くない結果も生むだろうが、労働時間の規制は新たな仕事のやり方を身に着けた自分に生まれ変わるための養成ギプスなのである。時間が強制的に取り上げられることによって、それを補うプロセスや手法はある程度自然に編み出され、おのずと効率化された働きになっていくと思う。最終的には時間の短縮がすなわちクオリティーの低下という事ではないという事である。
 
ただ効率化にも限界はある。どんなに時間が減ってもどこまでも効率化でカバーできるわけではない。なので、仕事を成功させるには到達すべきレベルと、効率化された仕事の結果、そのレベルに達しているかどうかを見極める能力が今後ますます重要となるのではないだろうか。
 
 
 
 
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2021-05-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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