「面白い話ができなくても生きていける」
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:青天目 起江(ライティング・ゼミ超通信コース)
「文章は書けるかもしれないけど、しゃべりは面白くないよな」
元職場の上司の私に対する言葉だ。
「そんなの自分が一番わかっています」と心でかみついて、「やっぱりそうだよなぁ」とげんなりしたのも事実だ。
「ですよね~」と笑って呑み込んだ。
〈話が面白くない劣等感〉が自分の中にずっとある。
指摘した上司は話が面白い人だった。話が面白い人というのは、頭が良いと言われ、上司もそうだった。
「話がつまらない」と言われると、頭が悪いと言われているようで、当たっているが、何だか自分の日常まで否定された気がして複雑なのだ。
「話が面白い」に目立って価値が出てくるのは何歳ごろだろうか。
「クラスの面白いヤツ」というのは、確かにいた。私は「バカやってるなあ」と見ていた。それがいけなかったと思う。子どものうちはいくらでも失敗はできる。たくさんバカをやって、どうすれば人が喜んでくれるか、身をもって覚えておけばよかった。
内気な私は逃げた。
「面白い話ができなくても生きていける」
そうだろうとも。
でも、同じ結論だからこそ、ジタバタした一周で、自分なりの「おもしろさ」に行きついた。
「あれ、私の話って面白くない…」
10代後半ごろから自分の話が周囲の人よりもウケてないことに気づいた。
尻すぼみに話が終わるように感じた。
就職してさらに、「話が面白くない」と、いかに生きづらいかを味わった。
自分で自分に蓋をしたのだから仕方がないとは思ったけれど、
それでも「面白い話ができない自分」を克服できないか、いろいろやってみた。
どんな風に話を始めるか。流れは? ボケやオチは? 落語を勉強した方がいいのだろうか。
自己啓発本を読んだり、朝、鏡の前で割り箸を噛んで口角を上げ、笑顔の練習をしたり。
「面白い話ができる人間になる」という当初の目的を超えて、自分の印象を変えることまで広がっていった。
ただ、悶々としたわりに、多くの実践してみたかというと、それほどやっていないというのが、正直なところだ。
試してみたが、やっぱり話は盛り上がらなくて、結局ダメなんだ、と落ち込んだ。
会話に対して臆病なのは今も変わっていない。
わかったのは、面白い話をするのがいかに難しいか。
それに私は、話をする方ではなくて聞く方なのだ、と思った。
良い話し手は、良い聞き手なのだ、と本にもあった。
面白い話はできなくても、文章を書くのと一緒で、「5W1H」を使って会話のキャッチボールをすれば、会話は膨らんでいくことがわかった。
そもそも「面白い話、発言」とは何だろうか。
自分が話して、他者から関心を寄せてもらったのも、
話の中心ではなくて、「でもそれって、こうだよね」と視点を変えた発言が多い気がする。
話を中心で動かすことは私にはできないけれど、自分なりの発言でいいのだ。あれこれ考えすぎていたと気づいた。
そう思うと、以前よりも会話が楽になった。
会話のスピードについていけなければ、無理に発言しなくていい。カードゲームではないが、必ず自分のターンだなと思える瞬間があって、その時に思ったことを口にすればいい。
ひとまず、「面白い話ができない劣等感」は無くならないにしても、小さな石にして心の片隅に置いておくことにした。
ある日、Tokyo FM の「スカイロケットカンパニー」をという番組を聴いていたら、「面白い話ができない」というリスナーからの悩みに、
MCのマンボウやしろ本部長が、
「別に面白い話ができなくてもいいんじゃないですか。みんながみんな、おもしろい話ができたら、怖い世界ですよ」と答えていた。
みんながみんな、面白い話ができる世界。
もしかして、それって価値観がみんな一緒ってことになる。価値観が一緒の世界ほど、怖い世界はない。
面白い話ができなくてもいいじゃないか。
「面白さ」も人によって違う。
転職活動の面接で、週一で東京の作家養成講座に通っていますと当時話をしたら、担当者が真剣に興味を持って聞いてくれて、
「採用関係のことより、そっちの方に聞き入ってしまいました」と言われた。
職場と関係ない話をし過ぎただろうか。不採用になるかもしれないと思ったが、
採用になった。
自分が好きでやっていることを他者もやっているとは限らない。ただ好きでやっていることが、他者にとっては、「おもしろい話」なのだ。
目の前の人の「おもしろい話」を聞いて、自分の「おもしろい話」をする。
それだけで会話は有意義なものになる。
自分と話をして損をしたと思ってほしくない。自分の話で笑顔になってもらいたい。
そう思って話していれば、「面白い話をしなくても生きていける」のではないだろうか。
***
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