メディアグランプリ

「好きなことを仕事にする」は、取り扱い注意な言葉である


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記事:えんどうみき(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「クッキー屋さんになりたいです!」
保育園の年長さん。5歳の私。
 
「大きくなったら、何になりたいですか?」
 
保育園にやってきた町の有線放送局のお姉さんにそう聞かれた私は、大きな声で答えた。
 
なぜかというと母が家のキッチンで焼いてくれる、手作りクッキーを食べることが大好きだったからである。アーモンドがたっぷり入ったサクサクのクッキー。オーブンで焼くと、家全体にクッキーの甘い匂いが広がる。その甘い匂いを思いっきり鼻から吸い込むのも、熱々のクッキーを口いっぱいに頬張るのも大好きであった。何度食べても飽きは来る気配は見えない。食べた分だけ心もお腹も満たされ、幸せになれる。
 
だからこそ、5歳の私は「クッキー屋さん」になれば、幸せになれると信じていた。大きな声で自信を持って、「クッキー屋さん!」と答えていた。
 
しかし、歳を重ね、年に数回バレンタインやクリスマスなどのイベント時に、クッキーを作りながら毎回思った。
「あれ? クッキーを焼くのは、楽しくないぞ?」
 
そんな私は、大学生になると「うどん屋」でアルバイトをするようになった。
 
「うどんが大好き」という理由からである。当時、「1日3食うどんでもいい」と思えるくらいにうどん好きであった。美味しいうどん屋のうどんは、店内で製麺をしていることが多く、麺にコシがある。とても食べ応えがある。そしてその麺に合うつゆを、お店独自に研究されている。
 
うどん屋でアルバイトをすれば、この研究されたうどんを、まかないで食べることが出来る。その魅力に惹かれ、うどん屋で働くことにした。
 
「うどん屋」でアルバイトをすれば、自分は満たされ、幸せになれると信じていた。
 
しかし、アルバイトを始めてこう思った。
「あれ? うどんは美味しいけれど、うどんを食べられるのは働いている間の数十分だけじゃん。あとの時間は、気乗りしない接客をしている……。なんか残念」
 
社会人になり、私は会社で新卒採用の1次面接官をするようになった。
 
採用グループに「面接官をやってみない?」と話をもらったことがキッカケだった。そして私自身、人の話を聞くことが好きなため、自分に向いていると思い、引き受けることにした。
 
1回の集団面接で4.5人の学生さんの話を聞く。話を聞いて引き出すこと、そして評価することがメインの仕事。学生さんひとりひとりの個性に合わせて、質問をしていく。
 
面接官をすれば、自分は幸せに近づくと期待して面接官になった。
 
そして、月に数十人の学生さんの話を聞く中で、こう思った。
 
「楽しい! 人の話を聞いて、引き出すプロセスが面白い!」
 
人の話を聞くということに対して、さらなる探究心がわいてきたのである。もっと知りたい、もっと聞きたい、引き出せる人になりたい。「面接官の業務が楽しい!」と思った。
 

クッキー屋さんの件や、うどん屋でのアルバイト、そして面接官業務。どれも、「好き」を起点に始めた。しかし面接官業務だけ、嬉しい結果となった。残りの2つは、楽しくない気持ちや、残念さを感じた。
 
一体、どんな違いがあったのか?
気になり、ひとつひとつを丁寧に見つめていくと、何が違っていたかに気づくことが出来た。
 
違いは、ただひとつであった。
それは、好きな「作業」がメインで出来ているかどうか、の違いであった。
 
例えば、私はクッキーを食べることは好きであった。
飽きないくらいに大好きな作業(行為)である。
しかし、クッキーを焼くことは、好きではなかった。
 
だからこそ、食べるとは関係ない、クッキーの生地を作り、焼くことがメインになると「楽しくない」という気持ちになってしまったのである。
 
また、私はうどんを食べることは好きであった。
1日3回食べても飽きないくらいである。
しかし、うどん屋で接客をすることは、好きではなかった。
 
だからこそ、接客メインのアルバイトは「なんか残念」と思ってしまったのである。
 
好きでない「作業」の時間が多いと、「楽しくない」「したいことではない」と持ちたくない感情や思いを持つ結果になってしまうという考えに至った。
 
逆に、面接官業務に関しては、私自身、人の話を聞くことが好きで、それがメインとなる時間配分であった。学生さんの話を聞き、回答された言葉を元に、さらに引き出していく。「聞く」という作業が好きな自分には、嬉しくなる時間で溢れていたのである。
 
だからこそ、「面白い」という気持ちがわいたのかもしれない。
 

「好きなことを仕事にする」という言葉が一時期、世の中で流行った。
幸せに生きるためのキャッチコピーである。
 
素敵な言葉だけれども、取扱い注意な言葉に、今の私は思う。
 
なぜならば、仕事は小さな「作業」の積み重ねだからである。
好きな「作業」がメインとなる、「こと」を選ばないと苦しくなるかもしれない。
 
そのことは、頭の片隅に置いておく必要がある。
 
最後にあなたに問いかけたい。
あなたの頭に今浮かぶことは、自分が好きな「作業」がメインの仕事だろうか?
 
作業といっても、作る、話す、聞く、書く、描く……。様々なものがある。
 
好きな作業を選べているだろうか?
 
一度、動き出す前に自分で自分に確認してみてほしい。
 
「好きな作業を仕事にする」
 
そのほうが幸せになれると私は信じているから。
 
 
 
 
***

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2021-05-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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