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メディアグランプリ

しつこくてすいません。私、絶対に去りませんから


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:浦部光俊(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「例の件、非常に困っています。どこから始めたものか、全くわかりません。
なにかいいアイデアないでしょうか」
 
メールを読んだ瞬間に頭に血が上った。
まるで他人事じゃないか、怒りが収まらない。
それを考えるのがお前の仕事だろ、
次々と噴き出してくる激しい感情に自分自身も飲み込まれそうだ。
 
待て、待て、こんな時こそ、慌てずに。
感情的に反応してもなにもいいことはない。
 
ふー、まずは一息ついて、心を落ち着かせる。
そして、ぼくは、いつものルーティンに入る。
 
こんな時、あの人だったら、どうするだろうか、想像してみる。
そう、ぼくの心の「先生」 ユイさんだったら……
 
ユイさんは前職で出会った女性。ぼくの後輩だ。
とにかく、明るくて物おじしない。
初対面でも、お偉いさんでも、臆することなく、ガンガン自分から入っていく。
「おい、なにか面白いことやれよ」
おじさんたちの無茶ぶりにも、自虐ネタでしっかり笑いを取ってくる。
ちょっとガサツで、正確性に欠けるところもあったが、
それがまた魅力だったりした。
 
ある日、ユイさんと人事部主催の研修で同じグループになった。
テーマは、コミュニケーションエラーの防止。
コミュニケーションで自分が大切に思っていることをグループでシェアしてください、
研修講師の指示で話し始めたユイさんの言葉にぼくは衝撃を受けた。
 
「私が大事にしているのは、絶対自分からは関係を去らないことです」
 
当時、ユイさんは上司からの評価が低く悩んでいた。
ユイさんの上司は、頭の良さや仕事の正確性を重要視するいわゆる頭の切れるタイプ。
明るさとノリ、ユーモアを交えながら仕事を進めるユイさんとは正反対だ。
明と暗、太陽と北風といった感じで、2人のやり取りはまったくかみ合わない。
ユイさんに対する上司の冷たい言葉は見ていて痛々しいほどだった。
異動を希望したほうがいいんじゃないか、
周囲からそんなアドバイスを受けるユイさんの姿を何度も見かけていた。
 
そんな彼女から出た言葉が「自分からは絶対に関係を去らない」
その表情は悲壮感など全く感じさせないカラッとした笑顔だった。
 
コミュニケーションで悩んでいます、
そんな弱音を期待していた自分が恥ずかしくなった。
ぼくの基準で彼女を判断していたのだ。
彼女に申し訳なく思った。
 
彼女はキッとした表情で続けた。
「人にはいろんな価値観がある
だから、ぶつかることは避けられない。
でも、私はぶつかった先に、きっとなにかが見つかると信じている。
だから、自分からは絶対に関係を去らない、そう決めているんです」
しつこくて嫌われちゃいますかね、
そういった彼女はいつもの明るいユイさんに戻っていた。
 
ユイさんがすごく大きく見えた。
どんなものでも、かかってこい、笑顔で受け止めてやるぞ、
そんな覚悟が見えた。
 
そして自分自身がすごく小さく思えた。
そつなくやるとか、うまくやり過ごす、とか、
そんなことばかり考えていた自分には思いもつかない言葉……
うつむき気味になったぼくに耳に飛び込んだのは
 
「でも私、感謝しているんです。
いつも私の話をきちんと聞いてくれて、
本当にありがとうございます」
ぼくの顔を正面からみつめながら、ユイさんはそう言ってくれたのだ。
 
ぼくは今でも憶えている、
その言葉を聞いた瞬間に感じた、なにか希望のようなものを。
 
ユイさんのように大きな存在にはなれないかもしれない。
でも、少しずつ始めてみよう。
求められたら、その場にとどまってみよう。
自分の基準で判断しないで、相手の気持ちになってみよう。
 
話を聞くだけだっていい。
ぼくの考えを伝えるだけだっていい。
気に入られなくなっていいじゃないか。
そこから学べるものだってあるはすだ。
 
ふと我に返り、メールをもう一度、読み返す。
きっと本当にアイデアないんだろうな……
わらにもすがる思いで、こちらにメールを送ってきたに違いない。
よし、自分からは関係を去らないぞ、
そう思ったぼくは、返信メールを書き始めた。
 
「ご相談の件ですが、こちらとしましては、XXXから始めるのがいいかと思いますが、いかがでしょうか。社長への話も通しやすいかと思いますが……」
送信ボタンを押してわずか1時間後、
ぼくが受け取ったメールは感謝の言葉でいっぱいだった。
 
とどまった先には、一歩先の関係か。
人と人との関係ってそうやって深まっていくんだろうな……
また一つ勉強になった。
 
またまだユイさんには遠く及ばないかもしれないけれど、
ぼくも少しは人に希望を与えられる存在になれたかも、
そんな自信をもらえた。
 
ユイ先生、ありがとうございます。
本当に感謝しています。
 
 
 
 
***

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2021-06-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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