世にも恐ろしい「すいすいスイカ事件」
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:喜多村敬子 (ライティングゼミ超通信講座)
JR東のスイカなどの交通系ICカードは、切符を買う煩わしさがなく、
その便利さを知らない人はいないだろう。
しかし、その便利さゆえの失敗を、知人の外国語講師から聞いた。
彼女は社内研修などに派遣されて教えることが多い。
ある日、彼女は自宅から、講師としてある会社に行くことになっていた。
バスと電車を乗り継いで、先方の会社の最寄り駅に着いた。
授業まではまだ時間があったので、駅前の店で遅めの朝食で一休み、
授業内容の確認などをした。
ところが、会計の時、財布が見つからない。
どこを探しても見つからない。
家からここまで、すべてスイカですいすいやって来た。
どこでも自動改札でピッと通過して、現金を使う場面がなかった。
だから、財布を家に忘れてきたことに気づかなかったのだ。
その店ではスイカでの支払いができなかった。
スイカには残高がしっかりあるのに、である。
授業の時間は迫るし、このままでは無銭飲食の上に遅刻になると焦った。
家族に電話して、財布を持ってきてもらっても、間に合わない。
プロの派遣講師として、遅刻は絶対に許されない。
信用問題は言うまでもなく、雇用契約打ち切りもあり得るという。
話を聞いているだけで、こちらも冷や汗が出てくるような気がした。
彼女は事情を説明し、ありったけの身元証明になるものを見せた。
「これを預けるので、後で払いに来るという事ではダメでしょうか」
と必死で頼んだ。
すると、それが通った。
店長が、後から払いに来てもらえば良いからと彼女を許してくれた。
店から出た所で、ばったりと研修先の講師仲間に会い、お金を借りられた。
そのまま、支払いに店に戻って、一件落着した。
遅刻もしなかった。
以後、彼女はスイカ入れに1万円札をしまっていると言う。
私はこれを「すいすいスイカ事件」と勝手に呼んでいる。
無事に切り抜けたにしても、なんて怖い話だと思った。
TVやネットに「世にも奇妙な物語」など怖い話はいくらでもあるが、
実際に起こるとは思わない。
しかし、「すいすいスイカ」は自分も実際にやってしまいそうで、怖い。
私も、スイカとお札1枚をセットにして、持ち歩くようになった。
この話を一緒に聞いていた男性は、
「女性だったから、店も許してくれたのだろう」と言った。
無銭飲食の確信犯だと思われ、店が許してくれなかったら、
普通の人にとっては「世にも恐ろしい物語」になる。
警察を呼ばれて…なんてことになったら、
本当に恐ろしい。
家の娘もスイカでピンチになったことがある。
これは、警官の好意で助かった。
娘が中学生だった時のことだ。
学校が登下校時に店に寄る事を禁止していたので、
娘は使うことがないからと、お金を持たずに通学していた。
ある朝、登校時に駅で、スイカ定期が期限切れだと気付いた。
チャージ分もなく、家に連絡しても遅刻すると焦った。
そこで、駅前の交番に駆け込み、
行きの電車賃150円を貸してもらった。
「これは僕のポケットマネーだからね、特別だからね」
と警官に言われた。
娘は遅刻もせず、帰りの分は学校で借りて帰ってきた。
私は娘に、厳重注意の上、定期代と返すお金の他に、
1,000円札1枚を予備に持つように渡した。
翌日、交番に150円を返しに行った娘は、
警官に驚かれて驚いたと帰ってきた。
「返しに来たの? 返って来るとは思わなかった。
なかなか戻ってこないんだよ。よく返しに来たね」
と驚いて、褒めてくれたと言う。
返さないという選択肢があるとは思っていなかった娘は、
それで逆に驚いたのだった。
それまで、交番で交通費ぐらいなら借りることができるとか、
貸してくれなくて困ったとか聞いたことがあった。
いったい、どうなっているのかと思っていたのだが、
これを機会に調べてみた。
警察に「公衆接遇弁償費」という制度があることが分かった。
この制度では、一定の条件の下、
1,000円以内で交番などでお金を貸してもらえる。
お財布を落とした、盗まれたなどで、
帰る交通費がない場合などに使える。
もちろん、返すべきお金である。
返済率の低さからこの制度を廃止した都道府県が多く、
私の所は対象外だ。
交番で交通費を貸してもらえるかは、
「公衆接遇弁償費」の対象になるか/警官の善意にすがれるか、
で決まることだった。
警官の自腹の場合、寸借詐欺の常習犯かもしれないし、
返ってくる保証もないとなれば、貸し渋りも当然だろう。
警官が娘に貸してくれたのは、
相手が近隣の中学の制服の女子中学生で、
お金も150円と少額だったからだろう。
もしも、警察でお金を貸してもらったら、
面倒臭がらず、忘れずに返すことが大事。
警官の善意や公衆接遇弁償費の制度が続くかは、
借りた人たち次第だ。
娘の「スイカ切れ」も、知人の「すいすいスイカ事件」も、
誰でもやってしまいそうなことだ。
こんな風に相手のおかげで、切り抜けられるとは限らない。
迷惑もかけたくない。
だから、予備のお札1枚をスイカに添えて持つことを、
ぜひお薦めします。
***
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