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円周率が3.05以上であることを証明せよ

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山岡達也(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
タイトルにあるのは、東京大学の入試で実際に出題された問題だ。その問題はあまりにもシンプルで、受験生がこの問題をみて面食らっている姿が容易に想像できるほどだ。いったい、どうやって解答すればいいのか、頭の中が真っ白になってしまった人も少なからずいたはずだ。大学はなぜこんな問題を入試に出題したのだろうか。筆者自身は東大の受験者でもなく、数学教育にも携わったこともなく、ましては入試の出題者になったことは一切ないが、この問題の回答例をネット上で見ていくうちに、出題者の意図を考察した結果、大学入試にはこのような問題が必要だという見解に行き着いた。そこで、かつての大学受験の経験者として、今回の記事で自分の考えを取りまとめて紹介してみたい。
 
大学が入試を通じて受験生の何を評価しているのか。
世間で広く言われている理由には色々とあるが、入試の前後という時間軸で分ければうまく整理することができる。つまり、入試で評価しているのは、受験生が入試までに積み上げてきた学習成果と、大学に入ってから学問に向き合っていけるのかという適応力の二つであると考えられる。別の言葉で言えば、受験生が今まで学習してきたをどれだけ正しく理解しているかということと、未知のものに対して手持ちの能力でどのようにして立ち向かうかを、大学側は入試を通じて評価しようとしている。
つまり、理想的な入試とは、これまで見たことのないような問題を目にして、自分の手持ちの知識を動員して、いかにして正解への道筋を見つけ出し、その道筋を出題者に正しく説明する能力を問うものである。
もっと簡単に言えば、解けそうで解けなくて、解けなさそうで解ける問題が、入試では良問とされる。
 
京都大学の森毅教授(当時)は、自著のなかで入試というものに触れており、受験生の過去の努力がなるべく無駄になるような問題づくりを目指しているが、現実にはなかなかそうなっていないと述べている。森氏の意図は、事前に十分勉強しただけでは解けないけれど、たとえ事前の準備が不十分であっても、試験当日に頭脳をフルに発揮すれば解くことができる可能性がある問題づくりを目指しているということだ。筆者は高校生の時に森氏の意見を目にして、面白いと思ったものの十分な理解には至らなかった。しかし、今になってみれば、入試という制約の中で、受験生の学力をどのように評価するか真剣に向き合っている大学教員の姿が、森氏の記述の中から伺うことができる。
 
ものすごく前振りが長くなったが、円周率が3.05以上であることを証明する問題が、なぜ大学入試に必要かということを論考したい。
 
この問題には、一言で言えばとりつく島が一見すると見当たらないのだ。
とりつく島がないと嘆いてもどうしようもないので、自分でとりつく島を創り出さないといけない。そこで、問題で問われている条件を変えてみよう。
仮に、この問題が、円周率が3以上であることを証明しようとすれば、どうだろうか。
これなら、中学生レベルの問題である。円の中に内接する正六角形を描いて説明すれば、簡単に証明できる。
それでは、円に内接する正多角形を、正八角形、正十二角形という具合に増やしていけば、円周率が3.05以上であることを証明できるのではないかという、推測が成り立つ。
実際のところ、この問題では円に内接する正八角形の辺の長さを計算すれば、円周率が3.05以上であることを証明できる。これならば、高校数学の知識を動員すれば、辺の長さの概算値は計算機を使わずとも計算可能である。
実はこの方法は、円周率の近似値を計算するのに使われてきた方法の一部である。そういう意味では、過去の数学者が行った円周率の計算の一部を追体験しているとも言える。
 
そしてこの問題には、円に内接する正多角形を使う方法以外にも、高校数学の範囲で別解が存在する。詳しい解法はネットの情報に譲るが、とにかく、この問題にとりつく島は、一つだけではなかったのだ。ということは、この問題の正解者の中には、違った視点から物事を捉える人達が存在することになる。大学には多様性が必要ということが世間では強調されているが、それを入試に当てはめてみれば、違った解き方で正解にたどり着けるような問題を出題することが、今後の入試には望まれる。
 
東大の問題としては、この問題は比較的簡単で、ゆとり教育を反映したものという批評もある。しかし、この問題が、仮に円周率が3.12以上であることを証明せよという内容であればどうだろうか。確かに、優秀な受験生ならば回答できるかも知れないが、解法は限られたものになるだろう。さらに言えば、いたずらに問題を難しくしても、白紙や明らかな誤答が続出したら、受験生の能力を果たして大学が正しく評価できるのだろうか。
私としては、単に問題の解法という技術的な観点からだけではなく、そこに隠れている大学側の狙いという視点から、円周率が3.05以上であることを証明せよという問題は良問であると評価したい。
 
大学教員の皆さんの負担を考えると大きな声では言いづらいが、入試に良問が増えていくことを、元受験生であった筆者は陰ながら応援していきたい。
 
 
 
 
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2021-06-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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