72歳両親のiPhoneデビューで考える、私と新しいテクノロジーのこと
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記事:ebikawa(ライティング・ゼミ日曜コース)
御年72歳の両親が、そろってiPhoneデビューした。
買ったはいいものの使い方がわからないということで、iPhoneユーザーである私は週末に実家を訪ね、4時間にわたって「ハイ、それでは電話をかけてみましょう~」などと一通りの基本を教えてきた。
もちろん、それだけで使い方をマスターできたとは思えないため、あとは自分たちでいろいろ試して、わからないことがあったら聞いてもらうしかないのだが。
ちなみに、両親は2人とも、電話とLINEとカメラが使えれば十分だ。なので、とてもiPhoneの持つスペックが必要とは思えない。
しかし、それでも数あるスマホの中からiPhoneを選んだ。その理由は、かっこいいからとか、CMで見たからとか、そういうのとは全く別のところにある。
母は長年「らくらくホン」を使っていたが、この機にiPhoneに買い換えた。
シニアになるほどらくらくホンの方が適しているのでは、とも思ったが、母のらくらくホン卒業の意志は固かった。
なぜかと言うと、らくらくホンは画面や設定が独特なので、これまで使い方に困ったときも、娘である私が急には答えられなかったためである。そのせいで、母はらくらくホンを買った直後から「同じiPhoneにすればよかった」と不満を口にし続けてきた。
これは母の同年代の友人にもよくある流れのようで、「結局、シニア向け機種より、娘や息子と同じ機種が一番よ」となるそうだ。
父がiPhoneにしたのも、似たような理由だ。
ただ、父はこれまでガラケー保守派で、今回が初めてのスマホだった。買う前は「iPhoneなんて大層なものはいらない、激安スマホでいい」などと言っていた父だが、私が「Android使ったことないから、使い方聞かれても答えられないからね」と忠告したら、あっさりとiPhone派に屈した。
そう、両親がiPhoneを選んだ理由は「娘が同じものを使っていて、聞けば教えてもらえるから」である。ブランドイメージやレンズの質、処理の速さは何も関係ない。気楽に質問できる、肉親サポートセンターの威力はデカいのだ。
さて、私だって今は偉そうにiPhoneの使い方を教えたりしているが、この天下はいつまでも続きはしない。これからも、どんどん新しいテクノロジーは生まれるだろうが、新しいものについていくというのは、好奇心・理解力・柔軟性・適応力など様々な要素が必要となる。個人差はあれ、どれも年齢と共に失われていくことが多いものだ。
私はパソコンやスマホをはじめ新しいテクノロジーが好きなので、できるだけ時代に追いついていきたいし、生活を楽にするものの恩恵は得たいと思っている。
両親のiPhoneの例を見ると、シニア世代になっても新しいものについていくには「自分より若い人に教えてもらう」ことがひとつのカギかもしれない。ただ、私には現時点で娘も息子もいないので、両親のように安易に若い世代に頼るのは難しい。
そうなると、私の場合には、高齢になってもウザがられずに若い人と話ができる「社会性」と「謙虚さ」を持ち続けることがきっと重要になるだろう。それらであれば、理解力などよりは、年齢を重ねても自分の心構えで維持しやすそうなスキルである。(と、信じたい。)
さらに、どうにか若い人の助けを得てとっかかりができたとしても、新しいテクノロジーを使いこなせるかどうかはまた別の話だ。
ちなみに父は、さっそくLINEの設定を自ら変えようとして、誤って電話帳に登録されていた全員にフレンド申請してしまったそうだ。スマホデビューした人がよく起こす事故である。退職前の取引相手なども登録されていたらしく「どうにか消せないのか」と大慌てで電話がかかってきた。
私も、もし「社会性」と「謙虚さ」を保ち、新しいテクノロジーが使えるようになったとしても、やはり使いこなすには難儀するだろうし、慣れずに失敗も重ねるだろう。
たとえば、数十年後に、頭の中に思い浮かんだだけで料理が勝手に出来上がる「思念ホットクック」みたいな商品が発売されたとしよう。そうしたら、きっと年老いた私は、父のフレンド申請のように、思念ホットクックに送るべき思念を、間違えて思念メッセージアプリにつなげてしまって、登録された連絡先へ「サンマの塩焼き食べたい」を一斉に誤送信してしまうに違いない。
そして、それを若い世代に
「ま~たサンマの塩焼きって誤送信されてきた」
「うちのおじいちゃんもすぐそれやる~」
「思い浮かべるだけなのにどうやったら間違えるんだろ、謎すぎ」
「てか、サンマってとっくに絶滅して実物いないから思念ホットクックでしか再現できないんだよね、年寄りが使いたがるはずだわ」
とか、思念SNS上でネタにされるのだ。簡単に想像がつく。あーあ。
でも、恥をかくのはもう諦めるしかない。思念ホットクックを使ってみたいと思うなら、そこは通らねばならぬ道だ。できるだけ生活は便利になってほしいし、生きている限り未来のテクノロジーのワクワク感は味わいたい。あとサンマは絶滅しないでほしいけど、絶滅したとしても再現でいいから食べたい。そのためには羞恥心など捨てるべきだ。
ひょっとしたら、私のこんな懸念など、すべて杞憂に終わるかもしれない。未来には若い人に頼る代わりに、なんでも丁寧に根気強く教えてくれて、なんでも代わりにやってくれるお手伝いロボットが発売されるかもしれない。そうなったら万々歳だ。
ただ、お手伝いロボットだって月額5万円するかもしれないので、念のため今のうちから社会性と謙虚さは持ち続けて、恥をかく練習はしておこうと思うのである。
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