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落合博満が絶対に負けられない理由


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記事:篁五郎(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
三度の三冠王(ホームラン、打率、打点をリーグトップになること)を獲得した落合博満のトレードマークといえば坊主頭だ。しかし、現役時代は坊主ではなく短髪で少しパーマを当てた昔ながらのプロ野球選手らしい髪型だった。中日ドラゴンズの監督に就任した当初も現役時代と髪型は同じ。初めて坊主頭にしたのは2007年にシーズンが2位で終わり、本拠地最終戦でのことだった。
 
どうして急に坊主頭に? 選手もコーチもみんな驚いたが、実は一人息子である福嗣さんとの約束だった。それは2007年シーズン開幕前に「優勝できなかったら丸坊主になる」と約束しており、息子との約束を守って坊主頭にしたのだ。
 
「何があっても親子の約束は破ったらいかん。勝ちゃあ、この頭にする必要はなかった。髪の毛は伸びてくるが今年のシーズンは戻ってこないんだよ」と落合は語った。
 
もう負けられない。日本一になるしかない。
 
坊主頭になった落合は心ひそかに固い決意をしていた。それは、もう一つ息子との約束があったからだ。
 
それは「ガンダム禁止令」である。実は落合は大のガンダムファンである。和歌山県にある落合記念館には落合と福嗣さんが作ったガンプラ(ガンダムのプラスティックモデル)が何十体も飾られており、シーズン中も遠征先でガンダムが載っているアニメ雑誌を購入するくらいのファンだ。
 
当時放映されていた「機動戦士ガンダム00(ダブルオー)」を見るのが楽しみで毎回福嗣さんに録画をお願いしていた。福嗣さんがガンダム00の放送日にドラゴンズを応援するため球場に行こうとすると「お前は来なくていい。お前にはガンダムを録画するという重要な任務がある。ガンダムが録画できなかったらどうするんだ」とストップをかけるほど。
 
奥さんの信子さんもガンダムが好きで,落合家では一時期ガンダム00のキャラクターのセリフを使って会話をすることが流行していた。当時・落合の愛車だったアストンマーチンのエンジンを掛ける際には「トランザム!」と発声し(注・トランザムとは「ガンダム00」に登場するモビルスーツのスペックを大幅に向上させるシステムのこと)、信子夫人から「買い物に行ってきてね」と頼まれると「望むところだと言わせてもらおう」と主人公のライバル役であるグラハム・エーカーのセリフをまねして答えていたくらい大好き。
 
携帯電話の着信音も「ガンダム00(ダブルオー)」の主題歌にしているくらいガンダムにはまっていた。そんな落合は優勝できなければガンダム禁止というペナルティーは想定外だった。福嗣さんが決めた日本一を逃した罰は次の三つ。
 
(1)ガンダムのテレビ放映、DVD、OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)の視聴禁止
(2)落合監督の部屋にあるガンダムグッズの没収
(3)自宅にあるすべてのガンダムグッズへの接触禁止
 
「落合博満という人からガンダムを取ったら一体何が残るんですか!」(福嗣さん)というほど、ガンダムを愛している落合にこんな罰則をするなんて無慈悲としかいえない。しかし、福嗣さんがガンダム禁止にしたのはどうしても日本一になってほしいという願いからだった。
 
父・博満はそんな息子の思いをわかっていたのかどうかはわからない。しかし、大好きなガンダムを取り上げられるのだけは勘弁してほしいと日本一へ向けて決意を固めて中日ドラゴンズの指揮を執った。
 
選手達は落合家の事情を知らず、「あの頭を見て申し訳ない気持ちになりました。連覇を逃して相当悔しかったんでしょうね」「これでクライマックスシリーズも敗退したらボクらも(丸刈りに)なるぐらいの気持ちで必死でやらないといけない」と日本一へ向けて一致団結。クライマックスシリーズ第一ステージで3位の阪神タイガースに連勝、第二ステージでもリーグ優勝の読売ジャイアンツに3連勝し、無敗で日本シリーズ出場を決めた。
 
そしてパリーグ代表の北海道日本ハムファイターズを4勝1敗で下し、53年ぶりの日本一を達成。
 
落合はガンダム禁止を無事回避。クライマックスシリーズの最中でも、試合が終わって帰宅すると「勝ったぞ」ではなく「ガンダム録画したか?」とガンダム愛を炸裂させていた。録画していたガンダムを見ながら「あー、勝った後のガンダムは最高だな」とつぶやいていたという。
 
翌年、日本一達成のお祝いになんとガンダムのプラスティックモデルを作っているバンダイから「バンダイホビーセンター」に信子夫人、長男の福嗣さんともども招待された。その時も取材に訪れた記者相手にガンダムのビームライフルを持つ姿を撮影させるなど上機嫌。
 
報道陣から「中日ドラゴンズにガンダムはいますか?」とトンチンカンな質問をされても機嫌良く「いない。強いて言えば俺だけ」と答えていた。野球に関してトンチンカンな質問をすると「勉強してこい」と記者を叱責する姿とは正反対であった。
 
そんなガンダム大好きな落合家に2021年、嬉しい出来事が起きる。
 
2007年当時学生だった福嗣さんは大学を卒業後、声優学校へ入学して声優の道へと進んだ。人気のアニメやTV番組のナレーションをレギュラーとしていくつも務めるほど人気である。その福嗣さんが、現在公開中の「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」に声優として出演したのだ。
 
福嗣さんは、ガンダムが大好きな父に「閃光のハサウェイ」の台本に日付と自分のサイン、そして『落合博満様へ』と書いてプレゼント。父・博満は「お、ありがとう。(映画を見るのが)楽しみ」と答えたという。きっと親子そろって映画館に向かっただろう。落合家のガンダム愛は不滅である。
 
 
 
 
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2021-06-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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