私のアイドルは途上国の貧困層
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:大東亜 綾乃(ライティング・ゼミ平日コース)
一人暮らしの私の家には、テレビがない。
特に見たい番組もなく、好きなアイドルもいない私は、不便を感じたことがない。
友人にテレビがないことを話すと信じられないという顔が返ってくる。○○くんが出てたドラマも観てなかったの? この前の○○ちゃんが出てたテレビも面白かったのに……。
確かに偶に、職場でのドラマトーク(特に昨年の恋つづが流行ったとき)や、コロナ下での出演者のソーシャルディスタンスの取り方に気づくのが遅くなったというマイナス面はあった。でもそれらは大きな損失ではないと思っている。
好きなアイドルも、応援しているお笑いタレントもいない。
学生の頃、自分が芸能人に興味を持てない理由が知りたくなったこともある。何故周りの友人たちはあんなに夢中になれるのに、私の中にはその情熱がないのだろう……。
人を応援するという素直な気持ちが自分から抜け落ちているようにも感じられた。
最近この心配を払拭する私なりの答えを途上国支援にみつけた。
私は社会人2年目くらいから月に3千円程度の寄付をしている。
3千円あれば、月に1度は豪華なランチを食べて舌鼓できるだろうし、友人と遊ぶ資金にもなるだろう。しかし、それを我慢して寄付を続けている。
そこにはきっと「頑張る人を応援したい」というアイドルを応援する気持ちに近い感情があるように感じている。
私の毎月寄付するNPO団体は、その事務所が京都にあり、活動拠点はラオス、ブルンジ、カンボジア、コンゴ、ウガンダ、そして日本の岩手県大槌町にある。
大学の頃のイベントでその団体の活動について知り、代表の方の講演会を聴講したり、そこで働く従業員やインターンの方とも何度か交流する機会を持つことができた。
その団体を知る度に感じたのは「人の良さ」だった。一人一人がその団体の大きな目標の中で夫々の想いと目的を持って活動していた。目がキラキラと輝いている方ばかりだった。
日本のNGOやNPOの地位は欧米の団体と比べ、その活動規模が小さく、影響力が限られてしまう傾向がある。寄付文化が根付かない日本では資金調達も難しい側面があり、現地に寄り添った国際支援で成果を上げているにも拘わらず、継続が困難になることもしばしばある。そんな中でも現地のニーズに耳を傾け、現地住民の生活に伴走する日本団体の姿勢は、受益者から一定の評価を受け、その信頼を糧に資金を調達し、何とか活動を継続している団体が多い。
学生の頃にインターンでお世話になったNPO団体の活動には、お手伝いができるときに単発でボランティアとして活動に参加している。
一方、私が毎月寄付する団体には、自分の時間やスキルを提供するよりも資金の方が合っているように感じた。
支援方法でも、応援したい対象別に分けて自分の身の丈に合った方法と金額で行うことは、アイドルを応援するときと似ているように感じる。
先日、寄付先団体の20年周年活動報告会が実施された。これまでの団体の軌跡の振返りと、各活動拠点をリアルタイムで繋ぎ、現地スタッフから支援者へメッセージを述べるプログラムが企画されていた。
夫々の活動拠点から発信されるメッセージは様々で、活動している地域の民族や文化を支援者へ伝えようとするスタッフや、現地でのプロジェクトの成果を細かく説明しようとするスタッフ、今後のプロジェクトの展望を自分の夢として語るスタッフが画面越しに思い思いの言葉を述べていた。
活動拠点ごとに十人十色の個性を出しながら伝えられる感謝の言葉からは、現地で現地のニーズに寄り添って一生懸命に活動している姿が伝わってきた。
代表理事の考えだけでその団体の活動内容を全て固めるのではなく、大きな枠組と方向性を提供して、その中で自分達の目標と夢を持ちながら夫々に活動してもらう。きっとこの自由さと個々の主体性があるからこそ、団体は大きく育ち、応援したいと思われる対象に成り得たのだろう。
毎月寄付をすると報告書が届く。報告書の中では、寄付を基にした活動のお陰で生き生きと暮らせるようになった人々が紹介されている。私にとっては訪れたこともない土地の見ず知らずの人々だが、どこか親近感を感じてしまう。他にもSNSでは、その週の活動内容について短めの報告コメントも上がっている。これらを時間があるときに眺めて、自分の寄付が確かに現場に届いて、現地の人々の希望に繋がっていることを感じ、元気ともう一頑張りしようという気合をもらう。
一生懸命頑張る人を陰ながら応援する。
自分の応援で頑張っている人の努力が少しでも長く続くように、その人が少しでも前向きに日々を過ごせるようにと願う。
人が誰かを応援するときの気持ちは、その対象がアイドルでも、途上国の貧困層でも、後輩でも、自分の子供でも同じだと思う。
自分が褒められることも嬉しいが、それと同じくらい誰かの役に立つことは人が生きる原動力になるのだろう。
あなたも次の推し選びに迷ったときは、途上国で輝く笑顔を応援することを選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。
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